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2012年01月28日
Beijing Building / Gosewisch Family
■北京市不動産企業の消失
2011年12月19日、北京市住宅建設委員会は、
不動産開発企業資質証書の延長手続きをしなかった不動産ディベロッパー473社の開発資格取り消しを発表した。同委員会は不動産ディベロッパーの減少は今後も続くと予測している。
現在、北京市で開発資格を持つ不動産ディベロッパーは約3000社。一方、今後の土地供給は年200件未満にとどまる見通し。5年スパンで考えてみても、供給される土地はわずか1000件。1社1件ずつ落札したとしても、2000社は土地を手に入れられない計算となる。
こうした傾向は北京市だけではない。湖北省武漢市は2010年10月末時点での不動産ディベロッパー 数を発表したが、1375社と前年同期比で200社以上の減少となった。
不動産企業の消失は昨年来の不動産価格抑制政策のあおりを受けたもの。資金繰りに苦しむ中小ディベロッパーの中には保有するプロジェクトを他社に売却したり、あるいは買収されるケースも少なくないという。また大手不動産企業でも北京市不動産業の先行きを悲観して、同市での開発資格を延長しなかったケースもあるようだ。
■困っているのは中小だけ?大手企業はまだまだ好調
金融引き締め緩和は近いとも伝えられる一方で、不動産価格抑制政策は今後も堅持されるとの見方が根強い。今年も中国不動産企業の悲鳴ばかりが報じられることになるのだろうか。
そうとは限らないと指摘しているのが紅網の報道だ。2011年は不動産企業にとって苦しい一年だったと言われ、主要都市の不動産価格は減少傾向を示した。今後も下落トレンドをたどるという予測から成約数が大幅に落ち込み、一部都市では住宅在庫が積み上がっている。
ところがいざ決算を見てみると、万科、恒大、緑地、保利、中海など大手企業の業績は好調だった。むしろ不動産価格抑制政策によって中小企業が弱り、大手企業の独占が強化され、利益率が向上する可能性もあるという。大手企業の優位点は財務的な体力、規模の経済だけではない。その強力な政治力で土地供給を担保することができるためだ。政治力を持つ大型国有企業が不動産分野に進出したがるのはそのためだ。
また抑制政策がまだ施行されていない地方都市、いわゆる三線都市、四線都市が新たな「ドル箱」として注目されており、大手企業は地方展開を急いでいる。
雨後のタケノコの勢いで誕生する中国富裕層。その3分の2は不動産業界出身者だという。2011年、中国政府は不動産の高騰を懸念し抑制政策を導入したが、大手寡占という新たな問題を招いてしまうのか、それとも不動産問題をソフトランディングすることができるのか。2012年の注目点と言えそうだ。
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