■成長するラオス■*本記事はブログ「チェンマイUpdate」の2012年1月30日付記事を許可を得て転載したものです。
Vientiane, Laos. Mekong River sunset. / Mat Honan
■ラオス人民民主共和国
ラオスは海がなく、国土(23.7万平方km)の8割近くが山岳部の山国である。人口は640万人しかいない。人口の27%が一日1ドル以下で暮らしているという。したがって、アジアでは東チモールに次いでビジネスが難しい国だと世界銀行には評価されている。
1975年、左派パテートラオが内戦で勝利した結果、王制が廃止され社会主義一党独裁のラオス人民民主共和国が誕生。以来、その体制が続いている。タイからメコン川を渡り、ラオスのホワイ・サイの街のホテルに泊まると今はなつかしいマルクス・レーニンの肖像画が飾ってある。ラオスでは1977年、友人の日本大使館書記官夫妻が反政府派によって殺害されるという忌まわしい事件もあった……。
■ラオスの成長
そのラオスが今、同じ一党独裁のベトナムに負けない経済成長を見せている。過去5年間の経済成長率は平均7.9%と高い伸びを示している。政治・経済体制は腐敗、行政の非効率など多くの問題が残っているようだが、タイ始め周囲のアセアン諸国の経済成長に牽引されている印象だ。
もっともGDPはいまだに75億ドル(約5730億円)と低く、世界182か国中137位という貧困国だ。一人当たりGDPは1人1200ドル(約9万1600円)弱。世界179か国中143位だ。アセアンの4貧国「VLCM」(ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマー)の一角だが、それでも一人当たりGDPはカンボジア、ミャンマーに勝っている。
今や首都ビエンチャンでは、日本車が走り、ショッピング・モールが建設され、携帯電話ショップが並び、モダンなコーヒー店があり、昔の“眠った街”の印象はない。まるでタイの街のようだ。
ラオスでは19の商業銀行が活動。携帯電話キャリア5社の契約者数は1000万人と人口を上回っている。国営ラオス航空はプロペラ機8機しか保有していなかったが、最近エアバスA320(1機あたり4600万ドル、約35億1000万円)2機を購入した。
■電力輸出に支えられた経済成長
ラオスの高成長を支えているのは、タイなど外国への電力販売だ。山と大河を抱えるラオスは水力発電の条件が整っている。「東南アジアのバッテリー(電池)」を目指し、2025年には2万8000メガワット(MW)を発電、インドシナ半島の需要の8%を供給すると意気込んでいる。
2015年までに1万3500MWを近隣3カ国に提供すると約束している。タイに7000MW、ベトナムに5000MW、カンボジアに1500MWという契約だ。ラオスは「百万象の国」ならぬ「50ダムの国」と呼ばれるようになりつつあるようだ。ちなみに現在は1600MWを発電、その9割をタイへ輸出している。
今後、メコン川流域に多くのダムを建設する予定だが、反対も多い。環境を破壊し、多くの住民の立ち退きを必要とするからだ。先月もサヤブリ・ダムの建設に対し、メコン委員会から待ったがかかっている。
(関連記事:強硬に進むメコン川「サヤブリ・ダム」計画=懸念される生態系への影響―ラオス(ucci-h))
■金と銅発電に加え、金と銅の非鉄鉱山が成長の要。金と銅の輸出額は2011年に15億ドル(約1150億円)強に達した。また、電力・非鉄鉱山への外国投資が、ラオスのGDPの半分を生み出している。
ラオスに対しては、隣国3カ国からの投資が多い。過去10年で見ると、ベトナムが27億7000万ドル(約2120億円)、中国が27億1000万ドル(約2070億円)、タイが26億8000万ドル(約2050億円)。この3カ国はほぼ拮抗している。また中国は70億を投資して、タイと中国を結ぶラオスの高速鉄道を建設する。
(関連リンク:「ラオスの高速鉄道建設、着手延期」 チェンマイUpdate、2011年5月6日)■産業の多様化目指す ラオスは、今後5年間、年平均8%の経済成長を目指しているが、うち半分強は、外国からの直接投資で達成する計画だ。特に通信、観光、金融、農業分野への投資を期待している。
2011年1月、韓国証取の協力で、ラオス証券取引所(LSX)ができた。上場株式は、まだ「ラオス外国商業銀行」(BCEL)と、「ラオス電力開発」(EDL-Gen)の2社だけだが、インターネット・携帯の「ラオス通信」(ETL)とキャッサバ・タピオカの「ラオ・インドチャイナ・グループ」(LIG)の2社の上場が今年予定されている。
(関連リンク:「証券取引所の開設で弾みをつけたいラオス経済」チェンマイUpdate、2011年1月16日)