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ネット世論観測産業の勃興=民の声に怯える政府が大口顧客―中国

2012年01月31日

2012年1月29日、財経網は記事「ネット世論観測を探って」を掲載した。民間のネット世論リサーチ企業の登場を紹介している。


Weibo Phone
Weibo Phone / bfishadow

■ネット世論観測産業の勃興


2011年、ネット世論観測業界の大手が証券市場への上場に着手し始めた。中小企業にいたっては中国全土に分布している。

ネット世論観測が主要業務の一部である北京拓尓思情報技術株式有限公司はベンチャーボードへの上場を果たした。同社は「天気予報のようにネット世論を予測する」ことを目指している。同社社内資料によると、 北京拓尓思 のネット世論管理システムは、政府、警察・司法、電力、石油化学、軍需、通信、メディア、医薬など幅広い業界で利用されているという。

ある電力企業は「中国最大の企業級ネット世論プロジェクト」を実施。中国31省・市に3000の顧客を抱えているという。年1億件、3TBのデータを監視可能だという。また別のネット世論観測企業も上場審査を通過しているほか、人民日報旗下の人民オンラインネットワーク有限公司もネット世論観測を業務としている。人民日報だけではなく、新華社も2011年後半に「ネット世論オンライン」の提供を開始。ネット世論観測分析センターを設立した。

北京メディア大学の研究機関でもある、ネット世論・口コミ研究機関の艾利艾は、地方政府やテレビ局、通信社、大手企業にサービスを提供しているという。

地方政府の調達記録を見てみると、各地方自治体はネット世論監視システムを購入していることがわかる。値段は数十万元程度のようだ。


■ネット対策業界も新時代に移行か

独裁国家にもかかわらず(あるいは独裁国家だからこそ)、ネット世論にやたらと敏感な中国政府。大手企業もやり玉に挙げられると業績に大打撃というケースもあるだけに、ネット世論観測の需要も大きいのだろう。

さて、以前のネット対策企業といえば、ネット掲示板の著名ネット民や管理人から転職した人々が主力というイメージがあった。それらの企業は広告代理店を名乗ることが多く、ヤラセを演出したり、サクラを動員したり、あるいはネット掲示板運営企業と話を付けて書き込みを削除したりといった業務についていたようだ。
(関連リンク:「一个公关“五毛党”自述的网络江湖」財新網、2010年11月11日)

今回、話に上がっているネット世論観測企業はそういうチマチマしたやり方ではなく、膨大なデータを収集、分析するシステマチックな傾向が強い印象を受けた。世界的に見ても「ビッグデータ」が新たなトレンドとなっているが、中国のネット対策業界もより技術的な方向に向かうのだろうか。ネット掲示板管理人から転職した広告代理店の皆様が新たな時代に対応できるのか、気になるところだ。

もっともまだまだ勃興し始めたばかりの業界で、売りつけられているシステムの値段もまちまち。機能にしてもいい加減なものも少なくないという。なにせまだ新しい業界、適当な製品を売りつけても、政府や大手企業には善し悪しは分からないというところだろうか。


■昔ながらの危機対策も健在です

とはいえ、データを収集、分析するだけではなく、トラブルが起きた時の対策も大事な仕事ではある。記事には興味深い事例が載っていた。
 
脱獄事件が起きて、刑務所がメディアのバッシングにさらされたことがあった。困った刑務所がネット世論観測企業に相談したところ、「大手メディアの記者を招待して、刑務所を実地見学させよ。とりわけ経費不足の辛さをアピールせよ」との回答を得た。実際その通りにやってみると、間もなくネット世論の盛り上がりは鎮火したのだとか。

日本でも、食べログ騒動やらネット工作員やらはたびたび話題になるが、「ネット世論に過剰に敏感な政府」という大口顧客がいるだけ、中国のほうが業界の未来は明るいのかもしれない。ベンチャー市場とはいえ、上場を果たしている企業がいるというのはちょっとした驚きではないだろうか。

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