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中国共産党人事のダークホース・孟建柱=官制報道にみる序列上昇(水彩画)

2012年02月02日

■何故か評価が高い孟建柱について■

*本記事はブログ「中国という隣人」の2012年2月1日付記事を許可を得て転載したものです。


■ダークホース・孟建柱

今年の十八大(中国共産党第18回全国代表大会)では、新たな中国の最高権力者たち、中央政治局常務委員が選出されます。各メディアはその顔ぶれを予想していますが、中でも評価急上昇中なのが孟建柱(中央政法委員会副書記、武警第一政委、国務委員、公安部長)です。

先日、多維網が常務委員予想バージョン2.0を発表しました。記事「多維網が予想する「中国の次期支配者9人」予想改訂版」でご紹介しています。バージョン2.0では、孟建柱が常務委員に入選すると予想していますが、その根拠は、王楽泉が仕切る新疆、兪正声が仕切る上海に乗り込み、事件対応を任されたこと。その際に官制メディア報道で、現地トップを上回る扱いを受けた点が重視されています。

この多維の根拠は私の見立てと共通しています。
(関連記事: ポスト胡錦濤時代の支配者たち=次期政治局常務委員を大胆予想2―中国コラム 


■報道写真に見る序列

年齢による脚切りで引退確実の王楽泉はともかく、2010年11月の上海マンション火災、58人の死者を出した「特大火災事故」への対応で、全人代委員長入りの声が高まってきた兪正声を格下扱いしたことは大きなポイントです。

例えば、「孟建柱、上海特大火災事故負傷者と遺族慰問」(東方網 2010/11/16)という記事を見てみましょう。見出しが孟建柱中心で、「中共中央政治局委員、上海市委書記兪正声一同看望慰問」(共産党中央政治局委員、上海市委書記兪正声一行が慰問した)という最後の一文からして「孟が格上」を演出していますが、やはりこの写真が全てを物語っています。

20120202_写真_中国_十八大1

写真と言えども序列は必ず守られます。通常なら兪正声が入院患者に一番近い位置にいなければならないのに、実際は孟建柱が先頭にいます。中央から事件対応を一手に任されたとはいえ、孟建柱はヒラの中央委員、兪正声は格上の政治局委員ですから、多維がこの件を重視するのも無理はありません。

この写真をご覧下さい。

20120202_写真_中国_十八大2

これは1月21日、春節団拝会に登場した常務委員9人を捉えたものです。常務委員には厳然とした序列があり、この序列は2007年10月の十七大(第17回党大会)で決まってから全く動きません。入場も序列の順ですから、この様に間抜けな構図となるのです。

20120202_写真_中国_十八大3

こちらも同じく春節団拝会。胡錦濤を中央に9人が並んでいますが、その序列は「975312468」という並びになります。誰かが外遊などで不在の場合は欠番とせず、繰り上げて配置されます。例えば第3位の温家宝が欠席なら「86412579」となります。というわけで李克強はいつも李長春と一緒。逃れられません。


■孟建柱の弱み

序列の重要さを語る回ではないのでここらで終わりますが、孟建柱は中央委員に過ぎないのに、政治局委員級の扱いである事は間違いありません。ですから、六中全会(2011年10月)で政治局委員昇格があるのかと期待していましたが、昇進はありませんでした。

過去15年、政治局委員級昇格の人事異動は、党大会と党大会の中間辺りに開催される中央委員会(黄菊:1994年、第14期四中全会、胡錦濤:1999年、第15期四中全会、習近平:2010年、第17期五中全会)で行われていますから、それを踏まえれば孟建柱の昇格はまずあり得ないのです。

孟建柱の前任者で、同じく中央政法委員会副書記、武警第一政委、国務委員、公安部長を兼務していた周永康は政治局委員でしたから、常務委員への昇格も無理なく行われたのですが、孟建柱はついに中央委員のまま十八大を迎えることになりますから、彼が常務委員に昇格するとすれば、異例の2段階特進となります。

ここ20年で、中央委員から政治局委員を飛ばして常務委員への2段階特進は、朱鎔基、胡錦濤、習近平、李克強の4人で、曾慶紅の政治局候補委員からの昇格を入れても5人。いずれも中国を代表する指導者ばかりで、公安部門のトップに過ぎない孟建柱がこの列に加わる目はありません。

定年が党大会時点で67歳以下となり、常務委員を占めるポストが固定化されつつなるなど、常務委員選出のやり方が固まってきており、ここで前例を無視するほどの価値が孟建柱にある、と言うわけでもありませんし、胡錦濤にも江沢民にも前例を破る力など無いでしょう。

同じく杜青林(中央統一戦線部長)の名前も挙がっていますが、これも前例からすればあり得ないのです。


■それでも気になる大どんでん返し 

ただ、これは前例通りに考えた時の話で、常務委員枠が更に2人拡大し、政法委を公安(公安部、武装警察)と司法(司法部、検察、裁判所)の2つに分けるという話もあります。

常務委員が9人体制となったのは2002年からですから、前例とは頼りにならないものなのです。党大会の前には様々な噂が飛び交います。十五大(1997年、第15回党大会)の前には喬石が党副書記となって江沢民を支える話もあったそうです。

兪正声にしたって、兄が米国に亡命していて出世が遅れましたし、一度は常務委員とは無縁だと指摘されていたものです。まだまだ、分からないのです。

関連記事:
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*本記事はブログ「中国という隣人」の2012年2月1日付記事を許可を得て転載したものです。 

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