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言論の自由侵害か、王室軽視か=タイの不敬罪条項修正論争(ucci-h)

2012年02月04日

■年明け後タイで興っている不敬罪改定運動の背景■

*本記事はブログ「チェンマイUpdate」の2012年2月4日付記事を許可を得て転載したものです。


Royal Grand Palace Bangkok
Royal Grand Palace Bangkok / bollin

■不敬罪条項修正の議論


タイでは年初以来、刑法112条(不敬罪)修正をめぐる議論が続いている。立憲君主制のタイ王国において、王の存在は絶対であり、不敬罪は厳しく罰せられる。
(関連記事:「タイにおける不敬罪とは?」チェンマイUpdate、2011年5月26日)

王様を敬い君主制を大事にするのは良いのだが、この不敬罪(リーズ・マジェスティ)が近年、政治的に乱用されていることが問題視されている。誰でも政敵の行動を不敬罪として訴えることができる。法執行の明確な手順もなく、最高で懲役15年という重刑が科される可能性がある。

不敬罪の適用範囲は広く、事実に基づく建設的なコメントさえ不敬罪と捉えられがちだ。こうした状況に、中進国タイにあるまじき言論の圧迫ではないかと、欧米からも批判を浴びている。


■不敬罪擁護派

進歩的な学者グループ「ニティラット」(啓蒙法律家)などが刑法112条改定を求めているが、一方で不敬罪擁護派も根強い。最近では王制・王室を公然と批判する者もいるため、このままでは王室を守れないという危機意識が背景にある。厳しい不敬罪が王制批判の防波堤だと考えているのだ。

従って修正派と擁護派の議論はかみ合わない。守旧派から見れば、不敬罪改定は王室への尊敬をなし崩しに解体させる試みに映る。改革派が運用に問題があると言っても、そうは受け取ってもらえないわけだ。


■インラック首相とブミボン国王の立場

インラック政権はどちらかというと改革に近い赤シャツ隊を背景にしているものの、政権党として不要な騒ぎは起こしたくないのか、「刑法112条を尊重する」とインラック首相が発言している。また修正運動の盛んなタマサート大学はキャンパス内での運動禁止を通達。「言論の自由の侵害だ」と物議をかもしている。教授や学生の間でも改革派と擁護派に割れている。

プミポン国王はこういった動きを憂慮されているようだ。国王ご自身は、厳しい不敬罪の適用を心よしと思っていないと言われている。政治闘争につながりかねない不敬罪問題に一番悩まれているのは、国王自身かもしれない。

タマサート大学を中心とした不敬罪を巡る闘争は、かつての「血の日曜日」虐殺事件を想起させるものである。1976年10月6日、警察は学生に無差別発砲し、46人が殺害される参事となった。不敬罪論争はタイが通らねばならない道なのだろうが、赤シャツ・黄シャツ対立が一段落したこの国に新たな社会的不安の火種とならないか、懸念される。

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