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2012年02月04日
factory pollution, Yangtze River / eutrophication&hypoxia
■龍江河のカドミウム汚染問題、これまでの経緯
1月27日付記事「河川のカドミウム汚染を当局が隠蔽=噂広がりミネラルウォーター買い占め騒動に―中国」でお伝えした広西チワン族自治区・龍江河のカドミウム汚染問題だが、簡単に振り返っておこう。
1月15日、龍江河・拉浪ダムの養殖業者が魚の大量死を発見。河池市当局は水質検査の結果、カドミウム濃度の基準値超過を検出したが発表せず。下流の柳州市に通達したのも18日のことだった。柳州市当局もこの事実を公表しなかったが、23日に噂が広がり、柳州市ではミネラルウォーターの買い占め騒ぎが起きた。
騒ぎを受け、市当局はようやく記者会見を開き、汚染の事実を認めた。石灰やカドミウムを河水に投下し、カドミウムを固定化させる汚染対策を図ったほか、地下水など別水源を確保しているので不安はないとアナウンスしている。しかし龍江河のカドミウム濃度は最大で安全基準値の80倍以上を記録、2月2日時点でも20倍を超える状況が続いている。緊急対策本部によると、安全基準値の5倍以上のカドミウム濃度を持つ汚染水は約100キロに渡り続いており、カドミウムの影響は下流300キロの地点にまで及ぶという。
■カドミウム汚水はどこからやってきたのか
今回の事件で流出したカドミウムの総量は約21トンと報じられている。これほど膨大な汚水がいったいどこから出現したのか。
1月25日、最初の容疑者となったのが広西金河鉱業株式有限公司。理事長ら経営陣が拘束された。もっとも同社は「我々が持つ鉱石クズに含まれているカドミウムはせいぜい数十キロ程度」と反論、ぬれぎぬだと訴えている。
そして27日、第二の容疑者が浮上する。それが鴻泉立徳粉材料厰だ。もともとはプラスチック製品や塗料を生産する工場だったが、当局の認可を得ずにインジウムの精錬工場へと鞍替えしていた。インジウムを精錬する際、副産物としてカドミウムが産出されるという。
ちょっと不思議なのが鴻泉立徳粉材料厰が汚水を鍾乳洞に流していたことだ。河池市はカルスト地形に属し、地下には鍾乳洞、地下河川が走っているという。同社がインジウム精錬を始めたのは5年前のこと。この鍾乳洞は5年間にわたり、汚染物質を運ぶ地下河川となっていたことになる。
2月3日、龍江河環境事件緊急対策指揮部は記者会見を開き、広西金河鉱業株式有限公司と鴻泉立徳粉材料厰の2者が汚染源であったと認定した(新華社)。発表によると、鴻泉立徳粉材料厰は汚染に関する施設については現地住民を一切入れず、意図的な汚染隠しを行っていたという。
■鍾乳洞と「有色金属の郷」
鍾乳洞を利用した汚水排出隠しは広西チワン族自治区では珍しいことではない。1980年代にはある製紙工場が鍾乳洞に汚水を流していた。汚水は地下河川を流れ、5キロ先の地域を汚染したという。鍾乳洞を使った汚水廃棄がたびたびある一方で、法的規制はぬるく、環境当局の監視対象にはなっていないという。
河池市は「有色金属の郷」と呼ばれている。広西チワン族自治区には465社の重金属排出企業があるが、うち3分の1は河池市に位置する。過去数十年にわたる無秩序な採掘により、同市には71カ所もの鉱石クズ堆積場がある。うち12カ所は危険と判断されている時限爆弾のような存在だ。カルスト地形という地質的特徴を考えれば、汚染物質の漏出や決壊などの問題がいつ起きても不思議ではない。
もちろん河池市ではこれまでに重金属汚染がたびたび問題になってきた。2011年8月には児童31人の血液から基準値を超えた鉛が検出された。2008年には精錬工場の排水があふれ、450人以上が尿検査でヒ素基準値超過の診断を受けた。
1999年には浄水場がヒ素で汚染され、3000人以上が中毒になる惨事も起きた。その汚染リスクはいまだに完全に解消されたわけではないという。同1999年には洪水により複数の工場の排水が河に流れ込み、深刻な重金属汚染が広がった。計380ヘクタールの畑が廃棄されたという。10年後、広西師範学院の専門家が沿岸の稲を検査した結果、鉛や亜鉛、ヒ素が基準値超過の数字を示している。
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