■インドのインフラ建設を仕切る“旧敵”中国の技術者たち■*本記事はブログ「チェンマイUpdate」の2012年2月8日付記事を許可を得て転載したものです。
1996 #230-22A New Delhi Hindu Temple (Birla) / Dan Lundberg
■インドのインフラ建設に従事する中国人1962年の中印戦争から半世紀が過ぎた。
今や経済成長を軌道に乗せた中国は、経済の立ち遅れたインドに人を送り、そのインフラ建設に関与している。首都デリーの郊外の建設現場に行くと、中国人の現場監督や技術者が、インド人を使って現場の建設作業を仕切っているという。
中国の労働者、技術者といえば、古くはアメリカ、さらにアフリカの鉄道建設にたずさわってきたが、かつての仇敵にして中国と並ぶ人口大国インドのインフラ作りを指導するまでになった。
■現場技術者が不足するインド
インド人は、IT技術者や医者、法律家などの専門職を多く生んできたが、製造業の発展が遅れたため、土木・建設の作業技術者があまり育っていない。電気技術者、大工、溶接工、機械工、左官など現場の技術者が不足しているといわれている。
インドは今後5年で1兆ドル(約80兆円)のインフラ建設を計画している。年平均2000億ドル(16兆円)ずつかけて、港湾、ハイウェイ、発電所、製鉄所、製油所、架橋、通信ネットワーク、空港ターミナルを築いていく。この計画に欠かせないのが中国だ。過去3年間をみても、中国はインドのインフラ・プロジェクト計100億ドル(約8000億円)を仕上げた実績を持っている。
■ 中印貿易の急拡大
中国はアメリカ、イギリス、日本を抜いて、インドにとって最大の貿易相手国となった。中印の貿易額は2010年には600億ドル(約4800億円)以上に達している。2000年時点では29億ドル(約2320億円)。10年で20倍以上に拡大したことになる。
2012年には700億ドル(約5600億円)を超える見通し。2016年には1000億ドル(約8000億円)の大台に達するとという。ちなみに600億ドルという貿易額は、米国の対日輸出に匹敵する。
■インドの警戒心
インフラ建設と貿易。中国がインドで受け持つ仕事は今後も大きく増えていくだろう。しかし一方でインド側に警戒感も強い。専門職だけでなく、多くの中国人労働者がインドに流入することで、インド人の職を奪うのではないかという警戒である。昨年、インドは労働ビザでなくビジネスビザで現場労働に従事しているとして、2万5000人もの中国人労働者を国外退去させている。