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「薄熙来は中国最大の偽君主」失脚した部下の公開書簡=重慶市トップ交代の観測も(水彩画)

2012年02月11日

■【王立軍失脚】周永康が薄熙来不在の重慶に乗り込む■

*本記事はブログ「中国という隣人」の2012年2月10日付記事を許可を得て転載したものです。


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シリーズ:「打黒英雄」の失脚と薄熙来の危機
「打黒英雄」の失脚は子飼いの部下を潰された賀国強の報復か―中国(水彩画)


■王立軍の公開書簡

次期中国共産党最高指導部入りを目指す太子党の雄・薄熙来。その腹心・王立軍が公安業務を解任され、さらに「休暇式治療」という表現で失脚が明らかになり、さらには亡命を狙ってか米領事館に駆け込んでいた(追い返されたが……)という驚くような流れが続いています。

いい加減な噂にしか見えなかった報道が次々と真実味を帯びてきているわけですが、当初から「関係筋」の情報をばんばん流していた博訊網が、今度は王立軍の公開書簡を掲載しています。海外に住む王の友人が受け取ったものを転載したという触れ込みですが……。内容を信じるかどうかは、読者の皆さんの判断にお任せします。

王立軍、全世界に向けた公開書簡
博訊網、2012年2月9日
 
皆さんがこの手紙を読んでいる頃は、私はこの世にいないか、自由を失っている事でしょう。私は全世界にその原因全てを説明したいと思います。

結局のところ、原因とは中国共産党最大の偽君主・薄熙来が、今後も演技を続ける姿を私が見たくないからなのです。もし、このような奸臣が政権を握れば、中国の未来に最大の不幸と民族の災難をもたらすでしょう。薄熙来の「唱紅打黒」(革命歌振興とマフィア・汚職官僚撲滅)という茶番劇は、政治局常務委員入りを目指す薄のショーです。薄は独断的で、残酷にして無情。従順な者には優しく、逆らう者は容赦しません。

私を含めた部下に対し、薄は様々な手段で想像できないような事をするよう迫ってきました。従わなければ、すぐさま残忍に手を下します。薄にとって全ての人間はガムのようなもの。噛み終われば捨てるだけの存在です。それで誰かの足が汚れようとも気にしません。

薄は黒社会最大の老大(トップ)です。彼は重慶を党と人民のものから、彼1人のものにしようとしています。薄の性格を考えれば、中国すべてを自分のにするまで進み続けるでしょう。そのためには手段は選びません。薄熙来は清廉と言われていますが、実際は汚職と女にまみれています。家族が私服を肥やすことを容認し、その額は驚くべきものです。私は多くの資料を手に入れ、既に関係部門に通報しました。

この手紙を送った海外の友人には、適当な時期が来たらこの書簡を公表すること。徐々に資料を公表するよう依頼しています。私はいつの日かこの資料を出版したいと思っています。

薄熙来は無情きわまる人間であります。文革で父親を闘争の対象にし、兄弟姉妹や前妻にした仕打ちを見れば分かるでしょう。私は彼に全力で仕えましたが、犬以下の扱いをされました。やりたくもない汚れ仕事をさせられたのに見捨てられ、私の運転手など周囲の人間を逮捕して脅してきたのです。私は死んでも辱めを受けません。

私は本来英雄などではなく、人民のために血と汗を流したかったのです。しかし、この様な悪人のために影で涙を流したくはありません。私は命を以って薄熙来の件を暴露し、中国の体制のため、中華民族に災いとなる野心家を取り除くために全てを投げ出す覚悟です。

王立軍
二零一二年二月三日


■事態の拡大

王立軍が成都の米国領事館に立ち寄ったことを中国外交部も認めました。正式に調査が始まりましたし、すでに事態は重慶市だけの問題で収まるものではありません。王がなぜ米領事館を立ち去ったのかという件にしても、米国側は「自らの意志で立ち去った」と言っていますが、重慶市市長が70台以上ものパトカー、さらには装甲車まで引き連れ、管轄外の重慶市に突入。領事館を威嚇したとも伝えられるなど、解明すべき謎は山のようにあります。

こうした状況で、ついに中央政法委書記の周永康が司法活動調査名目で重慶市を訪問しています(新華網)。いよいよ本丸・薄熙来に直接切り込んできた感を受けました。周永康は重慶に立ち寄る前にインドを訪問しているので、事件を受けての緊急訪問ではないのかもしれませんが、薄熙来不在というタイミングでというのはどうも変です。


■重慶市トップ交代説も?

旧正月前の時点で、党中央が湖南省トップの周強を薄熙来に代わる重慶市委書記に据える決定をしていたこと。薄熙来もその決定を知っていた、とシンガポール華字紙・聯合早報が報じています。

周強は団派の一角。十八大で政治局委員入りが有力視されている「ポスト習近平候補」の1人でもあります。重慶市トップを政治局委員が務めるようになったのは薄熙来からですが、この前例に倣えば周強も次期党大会での政治局委員入りは有力です。

聯合早報はシンガポールの新聞ではありますが、「海外の報道」としてソースロンダリングの一翼を担ったり、重要な情報が事前に聯合早報道を通じて漏らされていたりと中国に近いメディアなので、与太だと笑い飛ばせないのです。


■高笑いする汪洋

瀕死の重慶モデル汪洋が広東省で打黒展開」(RFI中文、2012年2月10日)

最後に。薄熙来といえば、「打黒」(マフィア・汚職官僚撲滅)キャンペーンが売り物。その真の狙いは前重慶市トップ、現広東省トップの汪洋子飼いの部下をたたきつぶすことにあったとも言われています。薄熙来と汪洋は激しい舌戦を繰り広げてきた、次期最高指導部入りを争うライバルです。

薄熙来の危機で一番喜んでいそうな汪洋ですが、今度はなんとライバルのお株を奪う「打黒」を推進するそうです。広東省の、特に交通、商品卸を中心に不正を摘発。マフィアの後ろ盾になっている汚職官僚も摘発する方針を明らかにしています。

今回の王立軍事件ですが、事態は拡大する一方。ついに周永康という常務委員まで動き出しましたし、告発の公開書簡から重慶市トップ交代の話まで飛び出す始末。上海市トップの汚職と失脚という陳良宇事件を超える大事件になるかもしれません。

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