■新華社に存在を消された薄熙来■*本記事はブログ「中国という隣人」の2012年2月12日付記事を許可を得て転載したものです。
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シリーズ:「打黒英雄」の失脚と薄熙来の危機
「打黒英雄」の失脚は子飼いの部下を潰された賀国強の報復か―中国(水彩画)
「薄熙来は中国最大の偽君主」失脚した部下の公開書簡=重慶市トップ交代の観測も(水彩画)
■薄熙来、カナダ首相と会見次期中国共産党最高指導部入りを目指す太子党の雄・薄熙来。その腹心・王立軍が公安業務を解任され、さらに「休暇式治療」という表現で失脚が明らかになり、さらには亡命を狙ってか米領事館に駆け込んでいた(追い返されたが……)という驚くような流れが続いています。
注目は薄熙来がどうなるのかという点ですが……。11日、重慶を訪問したカナダのカナダのハーパー首相と会見。公の場に姿を見せています。ハーパー首相は北京で胡錦濤と会見した後、10日に広東省、11日に重慶市を訪問し、現地トップの汪洋、薄熙来とも会見しています。
■パンダがメイン?薄熙来が会見に出てくるのか注目されていましたが、ちゃんと姿を見せています。ただ報道の扱いが悪いのです。
重慶日報の一面には「カナダ総理が重慶訪問」が来ているものの、その原稿はなぜか重慶日報の自前原稿ではなく、新華社配信の統一原稿を使わされています。会見前にハーパー首相が港や動物園を視察した件も盛り込まれており、会見に割かれている字数はわずかなものです。
ちなみにハーバー首相の広東省訪問後、広東地元紙は独自原稿を使用しています。重慶での統一原稿使用は中央の指示と推測できます。重慶日報は省級の党機関紙ですから、これより上部の報道機関は新華社か人民日報しかありません。
また使われている写真が薄熙来との2ショットではなく、カナダにレンタルされるパンダを抱いたハーパー夫妻だったことも憶測を呼んでいます。薄熙来よりパンダのほうがニュースバリューがあるとは思えないのですが、何を意図したものなのでしょうか。
■新華社に消された薄熙来「
全国法院司法競売改革工作会議、重慶で開催」(重慶日報、2012年2月9日)
前回記事では「周永康が薄熙来の留守を襲った」と書きましたが、間違いでした。お詫びして訂正いたします。薄熙来も8日の重慶市政法委会議に出席していた事が確認できました。会議の閉会後に雲南に向かっています。
ただ私が使った新華社ソースでは、薄熙来の発言が完全に削られていました。周永康の発言の後、王勝俊(最高人民法院院長)に飛んでいます。重慶日報だと、この間に薄熙来の発言が入っています。「永康書記、勝俊院長」と2人を呼び、親密さをアピールしているのです。
新華社版では薄熙来が出席した痕跡を全て消し去っています。一方、以前から薄熙来推しの人民日報は、重慶日報記事を転載しているので、薄熙来の発言も収録しています。
人民日報と新華社のスタンスの違いが明確になると共に、新華社が出席自体を葬り去った点は重視すべきです。新華社が薄熙来を消しにかかってるわけですが、新華社を仕切る温家宝辺りの差し金なのでしょうけど、党中央のコンセンサスもある程度取れているのではないでしょうか。
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*本記事はブログ「中国という隣人」の2012年2月12日付記事を許可を得て転載したものです。