■ロシアでは「ごめんなさい」はかえって怒られる■*本記事はブログ「ロシア駐在日記」の2012年2月13日付記事を許可を得て転載したものです。
こいつ、謝る気あるのか? / kimi-■失敗した時の行動=ロシア人と日本人の違い今日は通訳の話です。部下が失敗をしたために、上司とあまり楽しくない話になってしまったときの通訳のことでちょっと困っていることがあります。
実は、失敗したときの行動は日本人とロシア人とでは違うのです。
日本だったら、まず「申し訳ありません」と謝ることになるでしょう。そして、この「謝る」というステップが済んで初めて失敗に至った経緯をまとめたり、今後の進め方を検討したりするステップにうつると思います。
ところが、ロシア人の行動は違います。謝りの言葉を言わないか、さらっと言う程度。そして失敗に至ってしまった経緯からいきなり述べ始めます。そして、日本人はロシア人のそういう行動について「また言い訳をしている」と決まって怒ってしまいます。
そういう場面の通訳をするとき、タチアナはいつも困ります。なぜならば、ロシア人がしゃべり出したとたんに日本人の上司の反応を予測できてしまうからです。「だらだらしゃべってないで、さっさと謝ればいいのに」と心の中で叫んでいます。
■通訳の仕事ってなんだろう?
しかし、私はあくまでも通訳。人の言葉を訳すしかありません。そして、案の定上司は怒ってしまいます。しかし、そういう場合って、通訳として本当にそのまま部下の言葉を訳していいのだろうか、と実は非常に疑問です。というのは、このような場合は文化の違いがあってロシア人は日本人のような行動はそもそもとれないのです。
では、もし、失敗したロシア人は日本人のようにизвинитепожалуйстаなどの謝る言葉を並べた場合はロシア人同士でその行動がどう映るのだろうか?
実は日本とは違って、ロシア人上司はその行動を当たり前だと思ったりなんかしません。むしろ、ひたすら謝る部下を「頼りない」と思うのです。なぜならば、部下が謝ったところで問題が解決しないからです。だから、上司として何より先に聞きたいのは、失敗の理由とこれからの計画なのです。そういう話をしている中で「すみません」に当たるロシア語も出てくるかもしれませんけれども、それはあくまでも説明の一部であって、日本のように「まず謝る」という「個別のステップ」はありません。こうして同じ場面でも日本とロシアとでは違う行動が求められるわけです。
■タチアナ一家も勃発!日ロ「謝罪」問題
実は、我が家でもそういう違いがたまに出たりします。
ゆうきが悪さをして、私は怒ってしまった。そこに日本人のパパがやってきて、事情を聞いてゆうきに「お母さんにごめんなさいと言いなさい」と言う。ゆうきは「ごめんなさ~い」と暗い顔で言う。このような場面は今まで何回かあったんですけれども、毎回同じ展開になりました。ゆうきの「ごめんなさい」はタチアナに対して効果があるどころか、私をよりいっそう怒らせてしまうのです。
ごめんなさいのような決まり文句は要らないから、今何をして、そしてどうしてそれがいけなかったのか、しっかり言葉にしてもらいたいのです。「ごめんなさい」は一切反省しなくても言えちゃうから、ロシア人の私としては便利な逃げ道に見えてなりません。そして、ほかのロシア人も同じように考えるのではないかと思います。
■通訳の「工夫」ってあり?
さて、会社の話に戻ります。失敗したロシア人部下はロシア文化の基準に従って行動をする。しかし、日本文化の基準で判断する日本人上司はその行動を見て怒ってしまう。
通訳の私にも責任があるのではないかと思い、最近タチアナは、部下の「言い訳」の中に勝手に「すみません」を追加するようになりました。そうしたら、「すみません」を追加しなかった場合よりも明らかに上司の怒りが少なくなりました。
しかし、部下があまり反省してないと判断したら、タチアナは「すみません」を追加せずにそのセリフをそのまま訳してしまう。そして、上司は怒る。
なんだか、通訳次第で上司の「怒り」が左右されるんですけど、そんなんでいいのだろうか?とまたまた考えてしまいます。