• お問い合わせ
  • RSSを購読
  • TwitterでFollow

重慶市長が装甲車を引き連れ殴り込み、団派の人事攻勢……王立軍事件の「謎」を考える(水彩画)

2012年02月17日

■王立軍事件の薄熙来への影響■

*本記事はブログ「中国という隣人」の2012年2月16日付記事を許可を得て転載したものです。


Chongqing Central Skyline
Chongqing Central Skyline / sanfamedia.com


シリーズ:「打黒英雄」の失脚と薄熙来の危機

■事件の展開は一段落

次期中国共産党最高指導部入りを目指す太子党の雄・薄熙来。その腹心・王立軍が公安業務を解任され、さらに「休暇式治療」という表現で失脚が明らかになり、そして亡命を狙ってか米領事館に駆け込んでいた(追い返されたが……)という驚くような流れが続きました。

すでに王立軍は中央紀律検査委員会に委ねられ、薄熙来も取り合えずは失脚することなく乗り切りましたが、問題は山積しています。今回は疑問点、注目点のまとめとなります。


■重慶市長が装甲車を率いて成都市に殴り込み

成都市の米国総領事館に逃げ込んだ王立軍。彼を追って黄奇帆・重慶市長が武装警察、装甲車や公安車両を率いて成都市の米国領事館を包囲しました。この「暴挙」ですが、薄熙来と一蓮托生の黄奇帆が独断でやったのか、それとも薄熙来の命令だったのかが注目です。

直轄市である重慶市の公安局長は武装警察のトップ、第一政治委員を兼任するのが慣習になっています。黄奇帆が装甲車を引き連れて成都市に乱入した時、そのポストは空でした。つまり黄には武装警察の指揮権はないはずなのですが、どういう権限、ルートで動員したのか、正直わかりかねます。明らかな越権行為なので、現時点でお咎めがないのが不思議なほどです。


■公安局長の交代

団派・関海祥、王立軍に替わって重慶市公安局長に」(RFI中文、2012年2月15日)

事件の発端となった重慶市公安局長の交代について。2月2日の王立軍解任後、空席となっていましたが、噂どおり重慶市江津区党委書記の関海祥が後継となるようです。

関は13日、区党委書記を円満辞職しています。重慶市組織部副部長は関が市政府に異動することを認めているので、公安局長就任はほぼ確定でしょう。胡錦濤と温家宝の承認待ちのようです。

関海祥はキャリアのほとんどを共産主義青年団で過ごしています。李克強の秘書を勤め、劉延東の女婿でもあるというバリバリの団派。胡錦濤、というよりかは李克強の色が濃い人事です。太子党の薄熙来にとって、心臓部に切り込まれた人事です。

さらに団派の周強が薄熙来の後任として重慶市党委書記を務めるという観測が流れています。関の公安局長就任は、団派人事の観測を補強するものでしょう。周強が共産主義青年団団中央第一書記だった時期、関は組織部副部長でした。知らない仲ではありません。なお周の重慶市党委書記が決まれば、十八大での政治局入りは確定です。


■王立軍の解任理由はどうなる?

3月に両会(全国人民代表大会、全国政治協商会議)が開催されますが、同時期に重慶市人民代表大会も開催されます。ここで王立軍の党委常務委員、副市長解任が発表されるのは確実です。

問題はどういった理由で解任されるのかという点です。陳良宇や劉志軍のようにたんなる汚職(「経済問題」)なのか、精神病によるものなのか、はたまた別の理由なのか。

理由によって薄熙来の態度も変わってくるのですが、汚職ならばかつての部下を全力で叩くことになるでしょう。精神病だと公安局長解任時に出てきた新華社の絶賛記事と、以前から精神不安定という診断は明らかに辻褄が合わないことになります。解任からの事態急変を証明するものとなるのではないでしょうか。


■薄熙来の傷

また前回記事で、新華社報道から薄熙来が「消された」ことをご紹介しました。出席していたのに発言が消されていたのですが、きわめて異例の事態です。薄熙来が無傷では済まないと判断できる材料になるかと思います。

以前なら重慶を訪問して賞賛していた常務委員を含め、江沢民も薄熙来の調査に同意したとの情報もあり、唯一彼を支持していると思われる習近平も政権維持に邪魔になるなら切り捨ててもおかしくありません。


■小ネタ

北京電影学院が王立軍事件を入試問題に」(RFI中文、2012年2月16日)

北京電影学院の入試問題にこんなオモシロ問題が出た……という情報がマイクロブログでつぶやかれ、話題となりました。

以下の人物の中で、王立軍と最も無関係なのはどれか
A:文強 B:汪洋 C:薄熙来 D:劉湧

というもの。おい、難しいじゃねえか。

文強は前任の公安局長。汪洋は前重慶市党委書記。薄熙来は説明の必要はないと思いますが、劉湧とは誰でしょう?実は王立軍が遼寧省綿州市の公安局長に就任した直後に死刑にされたマフィアの親玉です。となると、答えはDなのでしょうか。

王立軍事件ではこういう出所不明なネタが飛び交いまくっているのですが、真贋判定は受験生にお願いしたいものです。

関連記事:シリーズ:「打黒英雄」の失脚と薄熙来の危機




 コメント一覧 (2)

    • 1. 啊啊男
    • 2012年02月17日 18:58
    • 直接的関係はないからBじゃないのか?
    • 2. Chinanews
    • 2012年02月18日 22:35
    • >啊啊男さん
      www 難しいですよね~。白紙回答が正解なような気がしてきましたw

コメント欄を開く

ページのトップへ