中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年02月17日
North Almont, North Dakota / afiler
■ディプロマ・ミル
「ディプロマ・ミル」という言葉がある。金さえ払えば誰にでも学位を与える学位商法を行う教育機関を指す。ディキンソン州立大学はまさにディプロマ・ミルとして多くの留学生を受け入れていた。
10日、
ディキンソン州立大学は、本来ならば入学資格を持たない留学生が多数入学していたことを発表した。2003年以来、816人が入校。うち743人の履歴になんらかの問題があったという。学位を取得したのは410人で、そのうち正規の課程を修了したのはわずか10人だけだったという。また
ディキンソン州立大学の留学生はほとんどが中国人だったことも発表された。
■事件は拡大の気配
同校には「特殊国際課程」という変わった制度がある。外国の大学で学ぶ学生が1年だけ、あるいは1学期だけ留学。帰国後に与えられた課題をこなすことで同校の学位を取得できるというもの。この制度が不正の温床になっていたようだ。
ちょっと興味深いのはディキンソン州立大学と提携している中国の大学の顔ぶれ。計19校があるが、中央民族大学、四川大学などの名門校まで含まれているという。同校は留学生のリストを公開しない方針だというが、中国教育部は米国にスタッフを派遣。調査する方針を示した。あるいは研究者や有名人に火が着く展開もありそうだ。
■教育と公平
ディプロマ・ミルでの不正自体はそう珍しい話ではない。 中国ではかなり大きなニュースとして扱われているが、800人という人数の多さ、名門大学との提携という点だけではなく、「教育の不正許さまじ」と感情が人々に共有されやすいためだろう。中国において教育は数少ない「人生一発逆転」のチャンス。それゆえに大学受験は古代の科挙さながらの本気度で人々が挑む難関となってきた。
中国で炎上しやすいネタとして、大学受験不正や公務員試験不正があるが、不正が横行しているのはみなみな重々承知だとしても、「そこは公平であって欲しい。不正で自分の子どものチャンスを奪うのは勘弁」という感情が根強いためだと感じている。
■もっとお手軽な偽造証明書
ディプロマ・ミルなどというお金のかかる手段を使わなくとも、中国ならばそこらで簡単に偽造の学位証明書が購入できる。一方で不正が横行しているだけにネット認証システムなど、不正を確認するシステムも整備されている。むしろ海外で取得した学位のほうがチェックが困難と言えるかもしれない。
海外との絡みでいうと、偽造学位証明書に困っているのはむしろ海外のほうかもしれない。中国で偽造された証明書を見破れと言われても、外国人にはなかなかハードルが高いのではないか。実際に英国ではそうした問題がたびたび話題となっている。中国人留学生の数が10万人を超えた日本でも、どれだけのチェック体制が構築できるのか、心許ないところである。
*2012年2月18日追記
大学名を当初「ディクソン州立大学」と表記していましたが、正しくは「ディキンソン州立大学」です。おわびして訂正いたします。
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