「アップルには詐欺の嫌疑がある。」中国本土でのiPad商標を持つ深圳唯冠の関係者が、アップルの「巧妙すぎる」iPad商標買収のいきさつを暴露した。2012年2月18日、
華夏時報が伝えた。
iPad accessory / bm.iphone
■これまでの経緯
・2000年、唯冠国際(Proview)の台湾子会社が世界各地で「iPad商標」を取得。
・2001年、 唯冠深圳(中国本土子会社)が中国本土における「iPad商標」を取得。
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・2006年、アップル社がiPadの販売を計画。しかし、「iPad商標」は唯冠国際がすでに取得している。まだiPadという名前の製品が販売されていないことから、放置された無効な商標だとして英国で訴訟を起こすもアップルが敗訴。
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・2009年、アップルは唯冠国際台湾からiPad商標を購入。裁判及び商標購入にあたってはアップルが前面に出ることはなく、IP社というダミー会社を交渉窓口としていた。そのため唯冠も大もうけのチャンスに気づかなかったのか、ふっかけることなくわずか3万5000ポンド(約426万円)で商標を売却。
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・2010年、iPad発売!その直後、唯冠深圳が「唯冠国際台湾が保有していた商標は中国本土を含んでいない。保有していない商標を売れるはずがない。中国本土の商標は唯冠深圳が保有しています」と主張。
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・2011年12月、アップル社、中国本土でのiPad商標の所在確認を求めて提訴するも敗訴。アップルは上訴し、現在は二審審理が進行中。
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・2012年2月、唯冠深圳が中国各地の工商局にiPad販売停止を申し立て。また上海市でアップル及び家電販売店を商標侵害で告訴。
■唯冠深圳、米国での訴訟を示唆
というわけで、アップル社の凡ミス(といっても間違いないかと)から大変な騒ぎになってしまったiPad商標問題。今まで比較的静かに事を進めていた唯冠深圳側がこの2月に激しい動きを見せている。なにせ唯冠はすでに破綻しており、現在、資産整理及び再建の手続きを進めているところ。最大の財産ともいえるiPad商標をいかに高い価格で現金化できるかが勝負とも言えるだけに必死である。
17日、唯冠深圳の債務再編を担当している和君創業公司の李粛総裁は米国でアップルを告訴する可能性を示唆した。要求する賠償額は20億ドル(約1590億円)を予定しているという。なにが詐欺罪にあたるのかというと、2009年の唯冠国際からのiPad商標買収のやり口だ。
■アップル社のステルス買収
上述した「これまでの経緯」をもう一度押さえておこう。
・2006年、アップル社がiPadの販売を計画。しかし、「iPad商標」は唯冠国際がすでに取得している。まだiPadという名前の製品が販売されていないことから、放置された無効な商標だとして英国で訴訟を起こすもアップルが敗訴。
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2009年、アップルは唯冠国際台湾からiPad商標を購入。裁判及び商標購入にあたってはアップルが前面に出ることはなく、IP社というダミー会社を交渉窓口としていた。そのため唯冠も大もうけのチャンスに気づかなかったのか、ふっかけることなくわずか3万5000ポンド(約426万円)で商標を売却。
これが今まで明らかになっていた情報だが、このたび李総裁ははっきりと唯冠は騙されたと発言した。訴訟から買収交渉にいたるまで、窓口となっていたのはIP社という英国企業だったという。iPad商標が欲しい理由も
「IP社という会社名(IP Application Development)を略記すると、IPadになるから。念のため取得しておきたかったんです~」という説明だったとか。いやはや、なかなかとんちがきいた理由ではないか。
もともと唯冠は2001年にiPadという製品を作っていたそうだが、3000万ドル(約23億8000万円)も開発費をぶっこんだのに惨敗したとのこと(どういう製品だったかの説明はなし。金額含めて疑わしいような……)。そのためiPad商標が浮いていたので、2009年、IP社に3万5000ポンド(約426万円)というはした金で世界10カ国での商標を譲渡したとのこと。
したら、ダミー会社・IP社はたった10ドル(約795円、10ポンド=約1260円という説も)で、その商標をアップル社に売り渡し、大ヒット商品iPadが登場したという次第だという。
唯冠深圳側の一方的な主張なので全面的に信頼できるわけではないが、3万5000ポンドというはした金で商標売却が成立していたことを考えると、アップル社のステルス買収があった可能性は高そうだ。今回の中国本土商標バトルもその時騙された報復という意味合いもあるのかもしれない。
■唯冠のあこぎ技も明らかにもっとも唯冠側のあこぎさも明らかになっている。
南方週末によると、唯冠台湾からアップル社へのiPad商標譲渡の際、契約では中国本土の商標も含むと明記されていたという。ただし契約書には唯冠台湾と唯冠深圳の大株主の印章だけが押され、唯冠深圳の社印は押されていなかった。この事実をもってして、「中国本土の商標は譲渡されていない」と主張したのが昨年末に結審した裁判。
お前らグループ会社やないか、大株主(というか実質的な経営者)のハンコも押されとるやんけ、というアップルの主張もむなしく、裁判所は唯冠の主張を認めたのだった。
だんだん泥沼っぷりが明らかになってきたiPad商標問題。どのあたりが落としどころになるかという興味もさることながら、アップル社と唯冠のビジネス暗闘っぷりもなかなかに面白い。
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