中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年02月20日
新世纪影城的《阿童木》海报 / utpala ॐ
■習近平の「手土産」
2012年2月17日、米ホワイトハウスは、中国が映画輸入規制の緩和を受け入れたと発表した。財経網、多維網、ロイター(英語版)を主に参照した
中国の映画規制問題は長年にわたる米中間の懸案。中国政府は映画輸入本数を年間20本に制限するなどの規制策を実施していたが、米業界団体は批判していた。
2007年、米国は世界貿易機関(WTO)に提訴。2009年にWTOが中国の違反を認定した。上訴も棄却され、2011年3月までに是正するよう勧告された。すでに期限は過ぎているが、米中は規制緩和について話し合いを続けており、このたびの習近平国家副主席訪米の「手土産」として合意された。協議を担当したバイデン副大統領は「米映画業界の雇用、ゲットだぜ」と成果を誇っている。
■米映画業界は数億ドルの収入アップに
合意では従来20本だった輸入映画本数が34本に増やされることが盛り込まれた。ただし増加分の14本は3D、またはIMAX規格に限定されるとのこと。9日に公布された海外テレビドラマ規制令でも、「高画質、高品質の作品を輸入するため」とお題目に掲げていたが、映画でも同様の方針をとったようだ。もっとも低制作費映画を閉め出して、増えた枠は実質的に米国映画が独占するための「策」かもしれないが。
(関連記事:ダメ韓流ドラマ、ダメ台湾ドラマを締め出しへ=中国の海外ドラマ輸入規制)
増加分の14本に関しては、海外の映画制作会社が受け取れる興行収入の取り分が従来の13%から25%にアップされることも取り決められた。米紙ロサンゼルスタイムズの報道では、中国市場での利益が映画1作あたり2000~4000万ドル(約15億9000万~31億8000万円)程度増加する見通し。今回の合意が米映画市場にもたらす収入は年数億ドルに達するという。
合意は本数の増加だけではない。従来の中国当局を窓口とした輸入だけではなく、民間企業同士の輸入交渉も認可される方針だ。また大作映画だけではなく独立系映画の輸入も認められる方向だという。さらに5年後に今回の合意結果を評価し、問題があれば米国は再度、WTOに提訴する権利を保留することも盛り込まれた。
■中国政府が日本アニメ配信サイト立ち上げ、の不思議
習近平の手土産に米国がほくほくしている一方で、日本も謎の成果(?)をあげている。
日本アニメ、直接購入へ 中国政府、海賊版対策共同・MSN産経、2012年2月17日日本のアニメ番組、映画の違法コピーや海賊版が氾濫する状況に対処するため、中国政府はこうした番組などの放映権を直接購入、専門のインターネットサイトを立ち上げ配信する方針を固めたことが17日、分かった。中国は知的財産権保護の取り組みの遅れが国際的に非難されている。政府が直接関与することで、違法コピーや海賊版の取り締まりを強化する狙いとみられる。この日北京で発足した「日中創意産業促進連盟」の関係者が明らかにした。関係者によると、中国国家版権局の下部組織、中国版権保護センターが中心となり、日本側との交渉やサイト運営に当たる。サイトの立ち上げは夏ごろの予定。こうしたやり方が軌道に乗れば、米国や韓国などとも同様の仕組みを構築したい考えだという。