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途上国の薬品、4分の1がニセモノ=ジェネリック薬品とニセ薬の微妙な境界線(ucci-h)

2012年02月23日

■途上国のジェネリック医薬品の製造は、知的財産権の強化で抑えられている!?■

*本記事はブログ「チェンマイUpdate」の2012年2月22日付記事を許可を得て転載したものです。


Antibiotics
Antibiotics / rbrwr

ニセ薬とゾロ薬(ジェネリック医薬品、特許が切れるとぞろぞろ出てくることから付けられた俗称)の境目は微妙だ。というより知的財産権の保護がきつくなると、ニセ薬がはじかれるだけでなく、安くて途上国の人のためになるゾロ薬まで締め出されるという矛盾が起きているようだ。2月10日付バンコク・ポスト紙で、タイのアピラディー氏がコメントしている。


■途上国に蔓延するニセ薬

ペルーでの話。前立腺がん患者が病院で処方された薬をいくらのんでも症状が改善しなかった。それはなぜか?実は薬はニセ薬だったのだ……というビデオをWIPO(世界知的財産機構)が制作した。WIPOによると、途上国で販売されている薬の25%はニセモノ。インターネットで販売されている薬品だと、半数がニセモノだという。その被害は甚大で、毎年数千人がニセ薬で死んでいるともいう。

知的財産権を保護する団体が言っていることだから、誇張はあるだろうが、ニセ薬が出回っていることは確かだろう。フィリピンの知的所有権保護団体によると、同国で流通している薬の10%はニセモノだという。ちなみにニセ薬とは、成分が間違っているもの、有効な成分が入っていないものに加え、正しい成分が入っているものの量が規定未満のものも含まれる。

世界で取引されているニセ薬は2008年時点で6500億ドル(52兆円)に達した。2015年までに250万人の雇用機会を奪う計算だとICC(国際商業会議所)は主張している。


■ジェネリック薬品とニセ薬の境界線

ニセ薬撲滅はいいことだが、問題はWHO(世界保健機構)すらもニセ薬の定義を明確にしていないこと。ニセ薬対策、知的財産権保護を名目として、ジェネリック薬品の生産、流通に支障が生じるという矛盾が起きている。

購買力に劣る開発途上国の患者にとって、ジェネリック医薬品は不可欠な医薬品だ。先進国の薬品メーカーは特許切れで利益を失うのを恐れて、従来の薬にわずかな変更を加えるだけで特許保護を長引かせる「エバーグリーン・パテント」と呼ばれる手法を使っている。これもジェネリック医薬品が出回りにくい要因だ。

タイを例に挙げよう。2005年以来、医薬品の輸入額が国産医薬品生産額を上回った状態が続いている。その差額は300億バーツ(約790億円)に達するとタイ公共健康省は推測している。特許に守られたモノポリー的システムが国産医薬品の伸びを抑えているのが原因で、タイ企業が少しでも似た薬を開発すれば、海外メーカーに特許違反として訴えられてしまう。


■知的財産権保護が途上国から薬を奪う

医薬品と特許は複雑な関係を持っている。好例といえるのが2008年のオランダで起きた事件。輸入された抗エイズ薬が差し押さえられた。薬はインドのジェネリック・メーカーが製造したもの。ナイジェリアのエイズ患者治療に貢献していたが、EUの知的財産権保護規則に抵触した疑いがかけられ、流通が禁止されてしまった。

先進国経済が低迷する中、知的財産権を武器に利益を守ろうとする動きが今後、さらに強まることになるだろう。なにかと話題のTPPにも盛り込まれるはずだ。知的財産権の過剰行使に反対する声もあるが、強大な資本の力には抑えられてしまうことになる。

日本はどうだろう?ジェネリック薬品を「ゾロ薬」などという俗称で呼んでいるお国柄だ。ジェネリック薬品普及の取り組みは存在するものの、「日本の貧困層のため、途上国のため」という本気はあるのだろうか?

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*本記事はブログ「チェンマイUpdate」の2012年2月22日付記事を許可を得て転載したものです。

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