中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年02月28日
■中国マイクロブログの光と影
中国マイクロブログ「微博」。新浪微博、騰訊微博を筆頭に複数サービスがしのぎをけずり、中国ネットユーザーの約半数、3億人が利用している。当初はツイッター模倣サービスとしてスタートしたが、今や次々と新機能を加え、中国のネットの中核を占める、インフラ的存在になるのではとの期待まで高まっている。
一方で問題点も指摘されている。その最たるものがゾンビ・フォロワー問題だろう。中国の有名人や企業のアカウントはフォロワーが数十万人を超えることはざらだが、その多くが金で買われたゾンビ・フォロワーだという。先日、ある中国人作家とお話する機会があったのだが、中国での書籍出版にあたり、出版社から微博アカウント開設を進められたとのこと。開設するとあれよあれよと数万人のフォロワーがついたのだが、それは「フォロワーが少ないとやりづらいだろうから」という配慮から出版社が買ってくれたゾンビ・フォロワーだったのだという。
■肩書きもお金で買える?!
*中田英寿氏の新浪微博アカウント。右上のオレンジのマークがV認証。
「金で買えるのはフォロワーだけではない!」というのが中国青年報の記事。微博にはV認証と呼ばれる認証制度がある。「作家」やら「俳優」やらの肩書きを各マイクロブログ企業が確認済みを示すマークだ。このV認証がお金で買えてしまうのだという。
中国最大のB2Cサイト「タオバオ」で検索してみると、なるほど数百件もの「商品」が出てきた。V認証付きのアカウントを売買するというものもあれば、うちを介せば簡単に認証が取れますよといううたい文句のショップもある。
■不正の手口
中国青年報に暴露した某マイクロブログ企業従業員によると、この手のV認証取得サポートはいくつかの抜け穴を利用したものだという。
第一に各企業でV認証の審査権を持つスタッフは多いため、その権限を利用して「アルバイト」している輩がいるというもの。
第二に各マイクロブログ企業の営業担当は「週50人の著名人獲得」といったノルマを負わされている。協力してくれる仲介者がありがたくも著名人を紹介してくれるのは良いが、その中に虚偽の申請を混ぜるという形で不正が行われているというもの。
第三に「作家」「俳優」「ディレクター」など確認が難しいあいまいな肩書きで認証を取得するもの。企業名などを入れると問題になることが多いが、「作家」や「俳優」ならばそういった問題はなかなか起きないという寸法。しかも取得しやすいわりに、カッコいい肩書きだという。
■濃いめのグレーの関連ビジネス
ツイッターにも認証済みアカウントなる制度があるわけだが、サードパーティー製のアプリを使って見ることがほとんどであんまり気にしたことがない。
一方、微博の場合は公式ページ経由の利用が多く、しかも表示画面にかなりどぎつく「V」マークが表示されるので、ステータスアイテムとしてそれなりの意味がありそうだ。実用だけではなく、虚栄心を満足させる目的でV認証を取得しようとするものも多いと記事では指摘されていた。
微博という大ヒットサービスのまわりでは、ネットショッピングやネットゲームなどの派生産業につなげようというまともな商売も展開しているわけだが、ゾンビ・フォロワーやV認証の売買でお小遣い稼ぎという濃いめのグレーゾーン商売も盛んな様子。これらも含めて微博ビジネスの生態系と言っていいのかもしれない。
関連記事:
ちょっと待った!そのアカウント生きてます?ソンビフォロワー検出サービス登場―中国微博情報
中国人も「ソーシャル疲れ」=実名制導入前に見えていた微博の陰り
マイクロブログと中国の民主化=加藤嘉一コラムを題材にして(前編)―中国