中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年03月09日
Manhole / Joe Shlabotnik
■兎にも角にも「国が悪い」
ある本で読んだ話です。ロシアを旅行してて色々な不便さに遭遇してしまった外国人。「一体どうしてそうなっているの?」という彼の質問に対するロシア人の答えは決まって「国が悪い」という内容でした。その後ロシア人たちは、「この国は本当にどうしようもないですよね~」とみんな嘆いてしまいます。
返答を聞いた外国人は「国や経済といった抽象的な話は要らないから、今、目の前にあるこの一本の釘が一体どうしてちゃんと打たれてないのか知りたいんだ」と言ったそうです。いかにもありそうな話だったので、読んでて思わず吹き出してしまいました。
ロシア人が具体的な話が苦手でいきなり一般論に逃げるくせもその通りですし、いつまでも「国」などの「上にいる誰か」をあてにして、何もしないというくせもあります。
■落とし穴
実は、私たち家族も、ついこの前あの外国人と同じような状況に遭遇してしまいました。
お正月休みに親戚の住んでいるキーラフ市に行ったときのことです。おばちゃんの家族としゃべりながら住宅街を歩いていると、急にゆうくんの叫び声がしました。振り向いていると、ゆうきはマンションのすぐ前にある穴に落ちてしまいました。必死に出ようとしているけれども、何かにひっかかってしまい出られない。
パパが穴の中に手を入れてゆうくんがひっかかっていた板を折って無事脱出。幸い怪我もなくゆうきは何もなかったかのように元気に走り出しました。ちなみに、足に引っかかった木がなければ、ゆうきは自分の背丈以上の穴に落っこちていたところでした。
ゆうきの叫び声にマンションの1階に住んでいる女性が窓を開け、私たちの電話番号を聞いてきました。どうもその場所で秋に工事が行われたのですが、雪が降ってからすべてやりっぱなしで放置されたらしいです。その女性は何回も行政に連絡しているのですが、何の返事もない。そこで、私たちの電話番号を「被害者が出ている」証拠として使いたいとのことです。
工事をやりっぱなしで残してしまった業者は確かにいけません。しかし、住民としていつまでたっても行政の反応を待っているだけでいいのか、と私たちはとても驚きました。
■自分たちでは何もしない、国がやってくれるのを待つだけ
1階の窓から、女性の他にゆうきと同じぐらいの年齢の女の子が覗いていました。その子は毎日その危ない穴のそばを通っているはずです。雪が降ると穴が見えにくくなるから非常に危険だと思いますけれども、住民たちは「何もしない行政が悪いんだ」という考えで、自分たちで何とかしようとはまったく思ってないようです。つまり、マンションのすぐ前の敷地は国や管理会社の責任であって、自分たちは文句を言うだけなのです。
さらに言えば、敷地だけではない。ロシアの一般的なマンションは、外観も階段も汚い場合が多い。ところが、登っていてこわいと思うぐらいのその薄暗い階段から一旦部屋に入ると、中が美しくてびっくり。うちのパパも何回も驚いていますので、やはり日本的な感覚で見ているとその差が不思議みたいです。
ロシア人は「自分のもの」として認識しているものに関してはとことんと愛情をかけているのに、そうじゃないものはまったく関係ないという発想なのです。
「自分のもの」として見ているゾーンをもうちょっと広く考えるようになれば、ロシアという国全体ももうちょっと安全できれいになるのに・・・と考えている今日この頃です。
PS:あの危ない穴ですけれども、あっちこっちに散らかっている端材を使ってパパたちはちょっとした囲いを作っておきました。
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*本記事はブログ「ロシア駐在日記」の2012年3月8日付記事を許可を得て転載したものです。