中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年03月13日
Chinese mags, Shanghai, China.JPG / gruntzooki
■日本の「出版の危機」と中国の「書店の危機」
日本でも中国でも出版界の「危機」が唱えられて久しい。日本の場合は出版社と書店の危機が同時に到来しているということになろうが、中国の場合は「リアル書店の危機」「民間書店の危機」という問題。ネット書店に追い込まれた中小民間書店がやばい、という話だ。
中国出版業のパイは順当に増え続けているようだが、問題はネット書店の猛威だ。再販制がない中国では書籍の値引き販売が可能だ。しかも当当網、アマゾン、京東商城というビッグプレーヤー3社がしのぎを削っているだけに、赤字覚悟の値引き合戦が繰り広げられるばかりか、バイイングパワーを生かして出版社からの卸値を値切り、さらには独占販売商品を獲得したり、さらには電子書籍販売にも参入したりと活発な動きを見せている。
中小店舗ではとても太刀打ちできない状況と言えそうだ。「書店の危機」については中国マスコミの関心も高く、ちょくちょく記事になっているのだが、ここ数年、状況はかわらないというか、むしろ悪化するばかりである。
■女性作家の提案
そんな中、リアル書店を救えと呼びかけたのが全国政治協商会議委員の女性作家・張抗抗さん。
・政府は公共サービスに多額の税金を費やしているのだから、民間書店も政策支援の対象にしてもいいのではないか。フランスなど先進国では書店の所得税が免除される制度がある。国有企業・新華書店は税の還付という優遇措置を受けているが、民間書店も同様の待遇を得られてもいいのでは。
・都市計画で書店の場所を残すべきであり、不動産企業と書店の利益を協調させるべきだ。また文化建設に財政支出するべきだろう。カナダでは独立書店のコンピューター設備購入に対して、政府が半額を補助する制度がある。
・図書公益基金など民間、あるいは半官制機関は資金繰りに困る実体書店に対し、定期的に支援するべきだ。また図書流通監管委員会を設立し、民間実体書店の賃料補助の申請を受け付けるべきだ。
・ネット書店による悪性の値引き競争に制限をもうけるべきだ。日本、韓国では書籍の最低価格制度が導入されており、実体書店とネット書店が公正に競争できる環境を整えている。例えば韓国では値引きは2割までと制限されている。ドイツでは新刊発行後、一定期間の間、ネット書店での販売が禁止されている。また値引きにも厳格な規制があり、仕入れ値を割り込む価格での販売は禁止されている。
(なんか日本の再販制度について誤解があるような……)