• お問い合わせ
  • RSSを購読
  • TwitterでFollow

「米国の銀行を買収してやったぜ!」英雄商人の自慢話は全部ウソだった―中国

2012年03月14日

「中国人として初めて米国の銀行を買収してやったぜ!」と2012年初頭の中国メディアを騒がした林春平さん。このたび銀行買収は真っ赤なウソということが判明した。「中国人の力を世界に示した!見事!」と褒めたたえた中共官僚の皆様に赤っ恥をかかせたことになる。2012年3月13日、財新網が伝えた。


New York 2009 - Downtown
New York 2009 - Downtown / Jorbasa

■時の人になった林さん


2012年1月12日、 林春平さんは浙江省温州市の地元紙に「米デラウェア州のアトランティック銀行を買収したから、従業員を数人募集!」という広告を出稿。「中国人が米国の銀行を買収したのか!」と一躍、時の人に。

レコードチャイナ
サーチナにも翻訳記事があります。2つの記事を見比べるとわかるのですが、結構細かいところで事実の食い違いが。それは翻訳元の食い違いというか、林さんがインタビューを受けるたびに言うことが微妙に変化していったためだと思われます。

ともあれ、「中国人初の米銀行買収」はそれなりのニュースに。林さん曰く「6億ドルで売るとか言われたけど、6000万ドルにまで値切ってやった」「華人向けの投資支援業務で儲かるっしょ」「つーか2011年11月から営業始めたけどもう黒字」と、ぶいぶい言わせまくり。

林さんは1月18日に温州市政治協商会議委員に当選。さらには複数の浙江省幹部から「米帝の銀行を買収するとは!林くん、君は英雄だ!」とおほめの言葉をたまわったとか。


■ウソが発覚

実は私も金鰤のネタで扱おうと思ったのですが、ともかく林さんのトーク以外に事実確認ができないという大変怪しげな状況。「チャイナマネー、ついに米銀行を買収」という大変わかりやすいネタではあったのですが……。きっちり調べるには米国側の情報を調べねばならない……というわけで、面倒なので放置していました。

が、面倒じゃ住まさなかったのが中国メディア。3月初頭、潇湘晨报がついに林さんのしっぽをつかみます。

(1)米当局にはデラウェア州アトランティック銀行の記録がないよ?
(2)林さんの買収後、改名したという「USA NEW HSBC FEDERATION CONSORTIUM INC」っていう会社だけど、登記情報を調べたら普通の会社で、銀行じゃなかったよ

という内容。


■謝罪っぽい会見

この面白すぎるネタを他メディアも後追い報道。林さんは13日、記者会見を開き、「ちょっと事実を誇張し過ぎちゃったかな」と謝罪っぽい会見をひらきます。この時点ですでにお腹いっぱいなのですが、謝罪っぽい会見の内容もまた見事。

・銀行じゃないけど金融業務をやる会社だから、実質的には銀行みたいなものかな、と。
・自分の社会的地位を高めようと、ちょっと誇張してみた。
・米国の主流の人々、金融エリートの皆さんとお付き合いしたり、国際的なフォーラムに参加できたりするかもと思って。
・これから温州で民間銀行が設立される時には参加するつもりだったし(だから気持ちはウソじゃないってこと?!)

うーむ、事ここにいたってもあんまり謝っていないのがすごい!

ちなみに林さん、「アナン元国連事務総長の息子と同級生だったんや!」「(アナン人脈で)ガーナの鉱山買ったんや!ボロ儲けやで!」とおっしゃっていたようですが、実際の商いはペン製造工場と米の輸入だったようで。うーむ、ほら吹きすぎ。


■おまけ

個人的な興味としては、林さんの楽しい漫談になぜみんなが釣られてしまったのか、という点にあります。まあ、「チャイナマネーの脅威」と世界で騒いでいる今、無名の温州商人が米国のちっちゃい銀行をぽんと買ってもさほど不思議ではないかも……と思わせるものがあったのも事実ですが。

ちなみに財新網の分析によると、温州商人は中国政府の後ろ盾がない、独立独歩、民間の力で生きてきた人々。それだけにお上の認可の必要な金融業への参入は難しく、海外での金融業運営は温州商人全体の悲願であったとのこと。林さんの「ほら」は温州商人の夢を実現させた、ステキな「ドリームズ・カム・トルー」話として受け入れられたそうです。

うーむ、そう解説されるとなんだか林さんの大ボラにもなんだか深みがでてきたような……。

関連記事:
ブランド力向上に取り組む中国企業=加速する大手銀行の海外進出(ucci-h)
「世界に中国共産党の声を伝えよう」海外展開を加速させる中国官製メディア
給与はなんと地方の3倍!花の都モスクワ―ロシア駐在日記
【ジャイアニズム】国力向上に自信を持った中国人=思わず赤面のゴーマン・エピソード2連発



トップページへ

コメント欄を開く

ページのトップへ