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ひそかに進められていた戸籍改革=都市レベルごとに入籍条件を整備―中国(岡本)

2012年03月16日

■中国の戸籍改革が進展!?■

*本記事はブログ「岡本信広の教育研究ブログ」の2012年3月15日付記事を、許可を得て転載したものです。


China-Yangshuo woman farmer
China-Yangshuo woman farmer / Praziquantel

■国務院弁公室の戸籍管理制度改革


戸籍改革にちょっとした変化が起こっています。京華時報による報道からそれらをまとめておきたいと思います。

国務院弁公室は2012年2月23日に《積極かつ穏当に戸籍管理制度改革を進展させることに関する意見》を公表しました。記事によると、この通知は実際は2011年2月26日に作成されたものですが、一年経ってから公開され、社会から注目されているようです。

それによると、今後戸籍の転換は都市レベルに分類されて実行されるようです。県級市、地級市、直轄市の定住条件や定住の難易度を示し、農民の都市定住に関して一定の方針を示しました。
基本は、地級市、県級市の定住は容易にしていますが、直轄市での定住は「合理的コントロール」する方針のようです。
具体的には以下の通り。

分類的移住政策
(1)県級市では定住の難易度は容易である。安定した仕事と住所があれば定住可。

(2)級市では定住の難易度は比較的困難である。適合する仕事を3年以上などの条件のもとで定住可。区を設けている市(直轄市や副省級市その他大都市では、合法的かつ安定的な職業に満3年そして合法的な安定した住所をもち、同時に国家が規定する社会保険に参加して一定年度を経たものが定住可

(3)直轄市では定住の難易度は困難である。直轄市では継続して人口規模を合理的にコントロールする。


■安徽省の試み

上記通知を受け、各地方自治体は試行錯誤、取り組みを続けているようです。記事では、北京と安徽省の動きを紹介しています。北京では直轄市ですが北京で農民が新市民としてとらえるようになっていること、市長の郭金龍は、積極的に優秀な農民を定住させる政策を検討すると述べています。

安徽省での戸籍改革は進んでいるようです。2011年、安徽省は県級市、地級市、省都に分けて定住政策や条件を決めたほか、特別な規定を設けました。自ら安徽省で仕事をする専門学校や大学などの卒業生は直接戸籍を就業地や実際の居住地に移動できるようにした模様です。

市級以上の労働模範、先進工作者として表彰を受けたもの、及び中級工以上の職業資格をもつあるいはその他不足している分野の人材には、本人及び家族は就業地で定住できる、という具体的な通知がなされているようです。


■識者の評価

このような動きに対して、識者の評価も記事では紹介しています。

段成荣(中国人民大学人口研究所所長兼人口学系主任)は、大きな進展として評価しています。直轄市や副省級市などの大都市は除外されているものの、区を持つ市においても具体的に定住方針を示しており、大多数の都市が農民の定住を受け入れることになるからだそうです。

袁崇法(中国城市発展研究院副院長)は肯定的な態度を示しながらも根本的な突破ではないと指摘しています。たしかにどのような都市にどのような条件の人間が入れるか明らかにしましたが、直轄市などの大都市では依然これまでの戸籍政策を堅持しています。また大都市では合理的コントロールを行うとしており、この理由として大都市では人々を受け入れる能力が足らないからとしています。これは矛盾で、小都市には雇用機会や産業が少ないのが現状であり、受け入れには大都市が有利としています。

成都(省都)と重慶(直轄市)は、全国都市農村統一計画総合セット(配套)改革試験区(国家の綜合改革試験区の一種)に指定され、戸籍の転換に関して試験的な取り組みがされていますが、この動向とともに戸籍改革がどうなっていくか注目していく必要があります。


■戸籍制度改革の概要

参考までに記事が整理していた戸籍制度改革の概要を、最後に示しておきます。

戸籍の変遷
第1段階
1958年以前自由移動期
第2段階
1958-78年厳格コントロール期
第3段階1978年以降半開放期
1980年10月、遷移進行を確定することに対して指標と政策の二重コントロール
1984年、国務院が文書を発し、農民が自らの食料を調達し都市に定住することを許可
1997年、小都市戸籍制度改革の試点を開始
2001年3月30日、国務院が公安部《小都市戸籍管理制度に関する改革の意見》を批准、小都市戸籍制度改革が全面的に進展

参照リンク:
户籍改革通知:地级市落户首次放开」(京華時報、2012年2月24日)

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*本記事はブログ「岡本信広の教育研究ブログ」の2012年3月15日付記事を、許可を得て転載したものです。

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