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中国国産漫画が背景スカスカの理由ってなに?中国人オタクの議論(百元)

2012年03月17日

■中国オタク「なんでウチの国の漫画は背景が白いままの作品が多いんだろう?」■

*本記事はブログ「「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」の2012年3月9日付記事を、許可を得て転載したものです。


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■中国国産漫画の状況


中国では漫画に関しては市場の形成がなかなかうまくいかないことから、漫画を描いてある程度の収入を得ることや、商業誌に漫画を掲載すること自体が難しかったりするなど、厳しい状況が続いているようです。

ただそういう事情があったとしても、中国オタク的には中国の国産漫画に関してちょっと気になる点があったりするようです。先日、中国のソッチ系の掲示板で「中国の国産漫画作品の背景描写について」のやり取りが行われていましたので、例によって私のイイカゲンな訳で紹介させていただきます。


■中国人オタクの議論

最近、雑誌やネット連載まで含めたウチの国の国産漫画をじっくり読んでみて感じるんだが、なんでウチの国の漫画は背景が白いままの作品が多いんだろう?昔はスクリーントーンとか出回ってないか、あっても高かったからしょうがないと思っていたが、最近はデジタル化でそういった処理もできるようになったんじゃないの?それなのになんで今でも背景とかがあんまり変わってないんだ?

ウチの国の漫画に関して、背景と構図は大きな問題だよね。構図の方は経験と才能の影響もあるだろうからしょうがないかと思うが、背景はちょっとまずいかもな。意識的に残すんじゃなく、普通に放置で白いまま。日本の漫画とかでは「画でぺージが埋まっている」という感じなんだが。

もっとお金がもらえるなら、ちゃんと描くんじゃない?ウチの国の漫画はホント金にならないから、そこまでやる意義を感じないんでしょ。日本の漫画界みたいにも競争して勝利したら有名になれるとか大金持ちになれるとかないし。

同人じゃない、プロの漫画家がそうだからちょっとアレな気分になってしまうんだよね。別にスクリーントーンが好きってわけじゃないんだが。漫画雑誌買って、載ってる漫画のほとんどが白背景+キャラの立ち絵みたいな感じになってるとさすがに。

日本の漫画は劣悪な紙の上に印刷するもので、スクリーントーンとかもそれに合わせて発展したものだろ。アメコミとかで使ってるの見たことない。今のウチの国の漫画はそういう悪い紙質の上に印刷してるわけじゃないし、別に日本のスクリーントーン技術を学ぶ必要はない。もし学ぶならアメコミの陰影や色の使い方を学ぶべき。

背景に関してはかける手間もそうだが、空白を強く感じるのは漫画家の能力の問題もあるんじゃないか?冨樫の下書き漫画とか、白いのに速度感や空間のイメージに満ちている。自分でもどうすればああなるのかよくわからんが、違いは感じる。

そうなんだよな。ウチの国の漫画ってすごい空白というかスカスカ感がある。日本の漫画にしろ、アメリカの漫画にしろ、漫画の空間が埋まっているんだよな。怠けているのかそれとも描き方の問題なのか、正直分からなくなってきたが。

漫画の構図については漫画家の経験やセンスによるものだし、漫画家の才能と努力に期待するしかないと思う。でも、背景の真っ白さは作品に対する態度の問題じゃないか?そこまで難しいってわけでもないだろ。

背景は金と時間と読者の問題だ。今の読者が背景白い漫画で満足してるし、漫画家は金もそこまでもらえるわけでもないから多くの時間をかけて背景を描いたりしなくなる。背景をきっちり描くとページごとの生産効率は落ちるし、原稿料が上がるわけでもないんだから、収入の減少に直結する。

アシスタントを雇うお金がありません。てか、国内の漫画界ってアシスタントは存在するもんなの?

国内の漫画家もアシスタントは普通にいるよ。あと、複数のクリエイターによるスタジオという形式を取って共同作業にするというケースもあるね。自分は同人で描いているだけなんだが、自分の描きたいストーリーやキャラを描いた段階で力尽きることが多い。背景(自然風景や建造物)は手間かかるんだよね……

Photoshopに慣れてくれば、トーン処理とか1ページ30分くらいでできるし、そこまで面倒なもんではないと思う。まぁ、カラー漫画処理も似たようなもんではあるが。

ウチの国ではカラーの漫画の方が流行しているし、カラーでの表現はともかく、スクリーントーンなんかも含めた白黒での表現は発展していないんじゃないかな。あと、背景に関しては国内の漫画家がプロのアシスタントを使えないってのが大きいと思う。漫画家一人だけの仕事量だと、出来ることには限界がある。

えーと、自分は一応カラー漫画描いているもんだけど、背景に関しては読者の要求ってそんなに高くないんだよ。読者が重要視するというか漫画の良し悪しを判断するのは「キャラの顔」だったりする。ただ、これは漫画を描くというハードルが低いってことでもあるから、新人もどんどん参加できるし、そこまで悪いことではないと思うんだよね。人気が落ちたら切られるのは変わらないし。

今はPhotoshopやComicStudioのようなツールはあるけど、範囲指定や何やらで手間自体は熟練した人間が手で描くのとそこまで変わっていないと思う。消費する用具やトーンのコストが減ったのは大きな変化だけどね。背景の書き込みについては、現在の中国国内の漫画市場では背景まで細かく漫画を描いても割に合わないって点が問題なんじゃないかな。背景も含めた描写が評価されるのと、その評価で原稿料が上がるような状況になればいいんだが……

雑誌の表紙とか一枚絵のキャライラストとかはまだしっかり描きこみがあるけど、漫画の背景は白いんだよなぁ。まあ単行本の売り上げ見ると、そこまで手間かけてられないってのは想像できるが。

疑問なんだが、なんで日本の漫画ってどんなレベルの売り上げの漫画でも、連載開始時は下手だった作者が連載中にうまくなっていくんだ?背景とかならアシスタントである程度説明がつくかもしれないが、キャラや構図まできっちりうまくなるのが不思議。国内の漫画って、1~2年おっかけても進歩が見えなかったりするし、ウチの国の漫画に関する体制がなんか足りないんじゃないかと思えてくる。

技術の上達に関しては、そもそも漫画を描くことの基礎的な部分が足りていないんじゃないか?やる必要性を感じないのと同時に、どうやってうまく背景を描いたりスクリーントーンで表現したりするかが見えていないんじゃないかと。てかスクリーントーンに関しては今の日本の漫画はそれほど多用していないよ。ここ何年かの流れはどんどん簡略的な方向になっているようにも感じられる。ただ、使い方に関しては更に上手くなっているように思う。

漫画は原稿料が低いんだよ……雑誌の連載あっても食っていけないし、質を落として量を稼ぐ方法を選択せざるを得ない。同じ手間やスキルの場合、挿絵やゲームの原画を描いたら漫画の倍以上を稼げる。漫画は自分でストーリーや構図も考えなければならないのに報酬は少ない。しかも出版関係だからか税金で持ってかれる額だって多い……

イラストに関してはともかく、漫画に関してはウチの国のレベルが低いというのは認めないといけない。ウチの国は漫画に携わっている人間が少ないし、編集から描き手まで全てがまだ未成熟。雑誌やっててもきちんとしたアシスタントを見つけるのが難しいから若い漫画好きな人間を適当に見つけて使わざるを得ないし、漫画家にしても仕事をしているという意識がないのかみんな切守らないし、編集も作品の水準をコントロールする方法を持たないし。それに加えて、漫画の単行本や雑誌の流通の問題もある……

そうそう。編集のレベルが低いのもキツイよね。漫画家と作品について相談できるような人間がなかなかいないし、ちょっと良い編集は引き抜きやら独立やらで安定しないから漫画家を育てるなんてのも難しい。

日本の漫画を見ていると感じるんだが、今の一流レベルの漫画って一人で描けるもんじゃないと感じる。時間をかければ一人で描けないこともないだろうけど、連載という時間制限の上では無理だろう。ウチの国ではそういった制作環境を作れる金は出ないし、当分は難しいままんじゃないかな……

厳しい状況ではあるけど、国内の環境だけが問題とは考えたくないのが正直な所。現在のウチの国のアニメ・漫画産業は十年前とは比べ物にならないほどよくなっている。投資や販売ルートなんかもかなり整備されてきている。ネットゲームやネット小説なんかの大きなバックグラウンドのあるジャンルでは、競争も激しいしレベルも急上昇している。ここまで来れたのだから、将来は更によくなると信じたいよ。

とまぁ、こんな感じで。


■漫画家は割に合わないお仕事

背景のことだけにとどまらず中国の漫画界の現状についてまで話が及んでいました。現在の中国の漫画界の問題として、「漫画を描くのが割に合わない」というのは非常に大きな問題だそうです。

上の発言の中にもありますが、漫画はただでさえ手間がかかる上に、「漫画を描くよりもイラストを描いた方が儲かる」「細部まで描く余裕がない、そういった漫画が出てこない」「漫画で細部まできちんと描いても評価され難い」といったことから、「そこまでできる人がなかなか育たない」といった状況になってしまっているのだとか。

しかしこういった難しい事情はあるものの、一時期の海賊版などの影響で壊滅していた状況を思えば、今の中国漫画市場はかなり持ち直しているように見えますし、昔よりは着実に良い方向には向かっているように感じられます。昔はこういった不満や問題点の指摘が出る以前の状態でしたから。

とりあえず、こんな所で。例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。

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*本記事はブログ「「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」の2012年3月9日付記事を、許可を得て転載したものです。  

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