• お問い合わせ
  • RSSを購読
  • TwitterでFollow

北朝鮮、尖閣、南シナ海、レアアース!中国外交大忙しの春(前編)

2012年03月18日

気がついたら「中国外交部大忙し」という、ちょっと大変な事態になっていたのでご紹介したい。


iPhone camera
iPhone camera / くーさん

■中国外交部報道官は大変なお仕事です


2012年3月16日の中国外交部定例記者会見。 週5回に回数が増やされてからというもの、一回ごとの密度は薄くなっていたのだが、この日は大忙し。

質問を列挙してみると、以下のとおり。他の省庁がやったことも全部、中国外交部がコメントしなければいけないのだから大変です。

・シリア危機一周年にコメントください
・日本海保が尖閣諸島付近で、中国の漁業監視船を発見と言ってますけど?
・北朝鮮が人工衛星打ち上げるみたいですが?
・国連特使がシリアのアサド大統領と会った時の提案についてコメントください
・国連高官のシリア訪問についてコメントください
・ベトナム外交部が南シナ海における中国の活動は主権侵害と言ってますけど?
・エアバス機の発注を取り消したそうですけど、炭素税に対する報復ですか?
・日本が2010年の尖閣諸島沖中国漁船衝突事故の船長を起訴するっていってますけど?漁業監視船の尖閣諸島への派遣と関係あります?
・日米欧が中国のレアアース輸出規制をWTOに提訴しましたけど?


■炎上案件1:北朝鮮

欧米で関心が高い(そして日本ではびっくりするほど関心を持たれていない)シリア問題についての質問はまあ恒例行事のようなものとして、最近の炎上案件についてちょこっとご紹介。

北朝鮮が4月に長距離ミサイル発射…米朝合意17日で破る
中央日報日本語版、2012年3月17日
 朝鮮中央通信はこの日、「金日成(キム・イルソン)主席の100回目の誕生日(4月15日)に合わせて観測衛星『光明星3号』を打ち上げる」とし「4月12日から16日の間に平安北道鉄山郡(ピョンアンブクド・チョルサングン)西海(ソヘ)衛星発射場(東倉里基地)から南側に打ち上げる」と明らかにした。 

北朝鮮がいう「衛星」とは長距離ミサイル、特に大陸間弾道ミサイル(ICBM)だと国際社会は見なしている。北朝鮮は先月29日、「核実験と長距離ミサイル試験発射、ウラン濃縮活動を中止する」という合意文を米国と同時発表したが、17日で合意を破ったのだ。外交関係者の間では「金正恩(キム・ジョンウン)がオバマ米大統領の後頭部を強く殴った」という声が出ている。 

2月29日、第3回米朝高官会談の合意が発表された。核開発中止と米国による食糧支援が盛り込まれるなど北朝鮮問題が久々に進展するかと思った矢先の人工衛星打ち上げ予告。

米国は食糧支援中止を示唆しているほか、中国も張志軍外交部副部長が北朝鮮大使に「憂慮を表明」(レコードチャイナ)。「少しの間、大人しくしてはくれませんか」と泣きをいれたもよう。なお中国も北朝鮮に大規模な食糧支援を開始したとも伝えられており、なんだかはしごを外された格好となった(MSN産経)。

今年4月15日は金日成主席生誕100周年の記念日。それを盛大に祝うために食糧支援が必要だったとの指摘もあるが、「メシだけじゃなくて花火も必要」だったということだろうか。北京で開催された米朝高官会議をうまくアシストしたはずの中国にとっては切ない展開だ


■炎上案件2:中国の挑発、日本の挑発

中国、世論にらみ強硬姿勢 尖閣付近領海に監視船
日本経済新聞、2012年3月16日
中国国家海洋局は16日、海洋監視船2隻を沖縄県の尖閣諸島(中国名・釣魚島)の周辺海域に派遣し、監視活動を展開した。監視船は一時、日本領海内にも侵入した。河村たかし名古屋市長の「南京事件」否定発言などで目立ち始めている日中間のきしみが、さらに広がる可能性がある。秋に共産党指導部交代を控えた中国側には、外国への強硬姿勢を示して求心力を高めたいとの世論対策の思惑もありそうだ。

尖閣の次はガス田、侵入中国船が領有主張の訓練
読売新聞、2012年3月17日
沖縄・尖閣諸島沖の日本の領海に16日に侵入した中国国家海洋局所属の巡視船「海監50」と「海監66」の2隻は17日、東シナ海の日中中間線に隣接するガス田「白樺」(中国名・春暁)と、「平湖」の周辺に移動して他の巡視船4隻と合流し、巡視ヘリも加わった海空合同訓練を実施した。

(…)国家海洋局はホームページ上で17日、尖閣諸島付近での行動について、「我が国の主権と管轄権を示すことができた」と主張

と尖閣問題に動き。「尖閣領有権主張の動きでは」「世論対策では」と報じられているようですが、むしろ「日本の挑発」に対抗したものである可能性が高いでしょう。日本の挑発とは2010年の尖閣諸島沖中国漁船衝突事故の船長強制起訴です。

尖閣漁船衝突、最高裁通じ起訴状送達へ 
日本経済新聞、2012年3月17日

2010年の沖縄県・尖閣諸島付近の中国漁船衝突事件で、公務執行妨害などの罪で検察官役の指定弁護士が強制起訴した中国人の●其雄船長(42)の起訴状について、那覇地裁は17日までに、最高裁を通じ、中国の裁判所への送達を嘱託する手続きを取った。

他にも今年の尖閣トピックとしては、「日本が尖閣を含む、排他的経済水域(EEZ)起点となる無人島嶼を命名。中国も対抗して尖閣諸島全島嶼・岩礁に中国名を命名」という動きがありました(レコードチャイナ)。ただこれよりも起訴のほうがよっぽど中国を逆なでするのは、

尖閣諸島付近で起きた事件について日本の刑法が適用される

日本の領土

それだけは許さない!

というロジックが成り立つため。そも2010年の尖閣諸島沖中国漁船衝突事故があれほどの大騒ぎとなった一因には、民主党・前原誠司外相(当時)が起訴にこだわったため。中国の激烈な反応が予想されるのに敢行するとはなにか秘策があるのでは……と思わせておいて、実は無策という大技が懐かしく思い出されます。

というわけで、今回の中国の動きも「日本が挑発してきたからやり返しておくか」という論理で理解するべきではないか、と。船長の身柄は中国にありますし、放っておけば控訴棄却となるため、これ以上事態が発展しないのではないかと思いますが。

尖閣問題についてどう対応すべきか、いろんな考え方があるでしょうが、民間人によて構成された那覇検察審査会の決定で、外交摩擦のボタンが押されてしまうという状況にはちょっと疑問が残ります。ケンカしかける時は勝てる準備をしてからにしてもらいたいのですが……。まあ法治国家である日本に検察審査会という制度がある以上、仕方がないのかもしれませんが……。

さて「炎上案件3:南シナ海戦線異状あり」「炎上案件4:レアアース問題、WTOに提訴」と残っているのですが、長くなりすぎたので別エントリーで。

関連記事:
尖閣諸島は「核心的利益」となったのか?中国内部に歩調の乱れ=離島命名問題をめぐって
尖閣は日本領?それとも中国領?領有権を確かめる31の方法―中国の政治ジョークをご紹介
【南シナ海問題】ベトナム人が語る中越関係=尖閣諸島から南沙諸島へ―北京で考えたこと
尖閣諸島に南沙諸島、海洋監視を強化する中国―翻訳者のつぶやき



トップページへ

 コメント一覧 (4)

    • 1. 天天
    • 2012年03月18日 22:46
    • お久しぶりです。
      引越しの後片付けは終了しましたか?

      さて久しぶりの報告です。
      まずはこの記事、
      「国連高官のシリア訪問についてコメントくだ さい」
      「民間人によて校正された」
      の2点。

      そして一つ前の
      「【薄熙来失脚】「共産党中央に服従を誓う」独立王国・重慶が完全降伏(水彩画)」の記事で、
      「なお帆あの」
      の1点です。

      イデオロギーを使って危険な火遊びをしていた悪い子にはきついお灸が必要でしょうね。
    • 2. Chinanews
    • 2012年03月18日 23:42
    • >天天さん
      ごぶさたしています。だいぶ部屋は片付きました。もう一息です。ご指摘ありがとうございます。

      薄煕来はこの数年、派手に政界を騒がしてきたわけですが、これまたど派手に散ったという感です。重慶市の揺り戻しが気になっています。
    • 3. 天天
    • 2012年03月20日 22:51
    • 今日の「借りパク」記事での「凌新功快調」は「凌新功会長」のようですね。

      ところで今回の薄煕来事件は、超大物ロビイストの失脚だと考えていますので、結構綺麗に処理できるのではないかと思っています。
      薄煕来・谷開来夫妻が違法に得てきた財産は全て没収。
      息子・瓜瓜も正当に得た奨学金以外は全て返還(ここも学歴詐称疑惑が出てくるかもしれません。楽しみ)。

      現在の党中央が、薄煕来を重慶市党委書記に任命した責任を問われないでないのであれば、全職務解任。

      もし薄煕来夫婦の海外送金が外国の金融機関を使って違法に行われたものであれば、その金融機関に対して違法に送金した全ての金額を国庫に返納請求(従わない場合は中国の企業はその国の金融機関と取り引き停止)。(←これはやらないだろうけど、やってくれたら面白い。)

      また、薄煕来にコバンザメして利益を得ていた奴等は懲らしめられるかもしれませんが、団派 vs. 太子党(or上海閥)といった形で、彼の下で働いていた人たちが全deleteされることはないだろうと思っています。
    • 4. Chinanews
    • 2012年03月23日 12:05
    • >天天さん
      ご指摘ありがとうございます。

      薄煕来失脚ですが、観測、リーク情報が乱れ飛ぶ展開でよくわからないという印象です。自信満々に断言されている論者の皆様の言うことが違いすぎて、もう何が何だか……。

      個人的には「唱紅」(革命歌振興)運動のポピュリズム的な側面が嫌われたという線は疑わしく思っているのですが……。より実質的な政治闘争がなければこんなことにならないのでは、というぐらいの根拠ですが……。

コメント欄を開く

ページのトップへ