2012年3月17日、中国国家版権局の担当者は、米アップル社のiOS向けソフトウェア販売ネットショップ・App Storeには確かに知的所有権侵害の疑いがあると発言した。19日、シンガポール華字紙・
聯合早報が伝えた。
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■アップルVS中国人作家、これまでのまとめ2011年3月、一部の作家と出版社が作家権利擁護連盟を立ち上げ。中国検索最大手・百度が運営するドキュメント共有サービス・百度文庫をターゲットに抗議活動を展開した。マスコミ、世論も連盟支持に傾き、ついに百度は謝罪。数百万点もの違法コンテンツを削除し、海賊版コンテンツ通報システムを整備した。
(関連記事: 百度が謝罪、電子書籍共有サービスからの海賊版排除を約束―中国)作家権利擁護連盟が第二のターゲットに選んだのが米アップル社。海賊版コンテンツをアプリに仕立て上げてもうけている輩がいる。アップル社は取り締まるどころか、手数料(売り上げの30%)をとって儲けていると指弾した。中国語のiOS電子書籍アプリはまさに無法地帯で、日本の作家・東野圭吾氏は大量に海賊版が出回っている現状を知り、新刊の中国語版発行を許可しないと決断する騒ぎもあった。
(関連記事:海賊版に激怒し中国市場撤退を決めた東野圭吾と東野を嘲る中国ミステリ業界(阿井))昨夏から書面で改善要求を送っていた作家権利擁護連盟だが、拉致があかないとついに提訴。2012年初頭に裁判所が受理し、今年2月までに2回にわたり原告を追加。現時点で作家22人の作品95点について賠償を求めている。賠償額は5000万元(約6億5000万円)に達した。
(関連記事:「アップルが著作権侵害第二の敵」になった理由=「作家権利擁護連盟」が提訴―中国)■中国政府が動いたさて、18日付
日本経済新聞、19日付
ロイターがこの件を報じているが、一番肝心のポイントが抜けているので補足したい。
ポイントとは
新華社の報道。「中国国家版権局の担当者は17日、App Storeには著作権侵害の疑いがあると発言した」と報じたことだ。「関連部局の確認を待ってから最終判断を下す」と留保しているにせよ、ついにお国が動いたという点が大きな意味を持つ。2月に原告が追加されて以来大きな動きがなかったにもかかわらず、突然新華社が報道したというのは、中国国家版権局のメッセージととらえるべきだろう。
また記事には中華書局法務部の任海涛氏のコメントも掲載されている。人気作品だけではなく、古籍の海賊版も出ているとお怒りだ。正規版の『二十四史』は1セット3000元(約3万9000円)弱というお値段だが、無料の海賊版が出回っているという。まあ『二十四史』なら正規の無料公開サイトもあるのでいまさら買う人がどれだけいるのか疑問だったりはするが。
お国が動くとなれば、作家権利擁護連盟とアップルの訴訟にも大きな影響がありそうだ。App Storeもこれだけの規模のプラットフォームとなった以上、海賊版コンテンツ排除のシステムを導入する必要がありそうだが、はたしてアップルはどう対応するのか、気になるところ。
中国では、App Storeのようなプラットフォーム提供企業は第三者であり、著作権侵害の罪が問われないという「避風港原則」がある。以前、百度のMP3検索が訴えられた時もこの原則が適用されて、百度が難を逃れた。今回、アップルと作家権利擁護連盟の裁判が結審まで突き進んだ時には、従来の判例を覆すウェブサービスの根幹にかかわる重要な判決となる可能性もある。その意味ではアップルに限らず、中国ウェブサービス業界全体にかかわる重要な問題となっている。
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