気がついたら「中国外交部大忙し」という、ちょっと大変な事態になっていたのでご紹介したい。
前編で「北朝鮮」「尖閣」についてご紹介したので、今回は「南シナ海」「レアアース」について。

South China Sea / Willem vdh
■炎上案件3:南シナ海戦線異状あり
2011年の中国外交において最大のトピックとなったのが南シナ海(南沙諸島、西沙諸島)問題。記事「2011年南シナ海問題が残したもの=東南アジアの軍拡競争」でまとめています。詳しくはそちらを読んでいただきたいのですが、簡単にまとめると、こんな感じ。
・係争地帯だけに海底資源(石油、天然ガス)が手つかずだった南シナ海
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・そろそろ掘るか@中国
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・ベトナム、フィリピン、決死の抵抗。米国が「みんな仲良く(にやにや)」と介入。「ボクも領有権主張してます!」と言うも無視される台湾。何も言わないけど領有権は主張しているはずのマレーシア、ブルネイ。
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なんかこじれてきたから、よくわかんないけどとりあえず手打ち。中国は資源探査をこっそり撤回
「とりあえず中国の強引な資源探査、採掘は撤回された、小康状態か」というのが私の読みであり、かつ中国のえらい人の考えていた状況だったはずですが、なぜかベトナムとフィリピンが頑張っています。
ベトナムは2012年9月、インドと共同で南シナ海の開発を行うと発表(
ニューズウィーク)。さらに2012年3月、南沙諸島にあるベトナムの寺院修復、警備艇配備を発表(
MSN産経)。さらに中国が水産加工センターを作ろうとしているが、それはベトナムの主権に対する侵害だ、と外務省が発表するなど意気揚々(
ボイスオブロシア)。
一方のフィリピンはというと、南沙諸島の開発権をオークションで販売。自国企業だけではなく、フランス企業、イタリア企業も入札に応じたということで、それらの企業が落札するようなことがあれば、ただでさえ複雑な南シナ海情勢がますますわけわからんじょうせいとなります(
MSN産経)。
2011年は中国がごりおしで「資源採掘しておくか→失敗」という流れだったのですが、その後の流れは「ベトナムとフィリピン、うちも資源に手を出そう!」と立場が逆転した印象。もし本当に資源採掘までいけば、中国が見過ごすとは思えないだけに大きな火種となりそうです。
中国にとって頭が痛い問題であるのはもちろんのこと、「アジアの平和がオレが守るっ!(キリッ」という姿勢を打ち出したオバマ外交にとっても面倒な状況となりそうな気配……。
■炎上案件4:レアアース輸出規制を日米欧が提訴日米欧、中国のレアアース規制めぐりWTO提訴を発表
オバマ米大統領は13日、中国のレアアース(希土類)輸出規制解除を求め、米国と欧州連合(EU)、日本が共同で世界貿易機関(WTO)に提訴したと発表した。
レアアースは液晶テレビやスマートフォン、ハイブリッド車などの製造に使われる素材で、EUによれば中国での生産量が全体の97%を占める。
オバマ大統領は「わが国の企業にはここ米国で製品を製造してほしいと思っている」「そのためには中国が供給するレアアース素材を米国のメーカーが利用できなければならない」としたうえで、「(中国の政策は)その実現を阻んでおり、中国が合意したルールにも反している」と批判した。
本サイトでもえんえんと扱ってきたレアアース・ネタ。ようやっとWTOに提訴です。伏線となっているのが今年1月に中国の敗訴が確定したレアメタルの輸出規制です。WTOの原則とは「国内企業も海外企業も公平に扱いましょうね」ということです。
中国は「資源が枯渇するし、環境保護のためにも仕方ないんだ」といいつつ、輸出にだけ規制をかけるという海外企業に対して不公平な対策を導入しています。レアメタルもレアアースも似たような輸出量限度額の規制ををかけていますので、提訴はある意味自然な流れと言えそうです。レアメタルの時には提訴に加わらなかった日本がちゃっかり参加しているのも面白いところ。
「産出量を規制する」と明文化して、その割当は国内企業優先、といったばれにくいやり口をとっているのならばともかく、輸出量の制限という、明らかな海外企業差別のやり口をとっている時点で、WTOでの争いは中国に不利な判断が下される可能性が高そうです。
■中国外交部はつらいよというわけで、3月16日の中国外交部記者会見で槍玉にあがったネタをご紹介しました。
個人的にいたく同情するのは、「中国外交部報道官って大変だな……」ということ。日本でも各省庁が角つきあわせているのと同様に、中国でもセクト争いが存在するわけですが、例えば中国商務部がレアアース問題で不用意な規定を出したとしても、あるいは中国国家海洋局がわかりやすすぎる尖閣問題での対日報復策を実行したとしても、海外メディアの記者会見に回答するのは中国外交部報道官という不条理が存在するのです。これほどこまめに記者会見を開くのも外交部だけですしね。
今回取り上げたネタ以外にも、米中貿易摩擦やら欧州債務危機問題やら、いろいろと面倒なことは山積みの中国。海外メディアの追求をかわさなければならない中国外交部報道官のストレスたるやいかばりか。勝手に同情しているところであります。
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