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『らき☆すた』連載開始!お値段そのままページ数倍増で勝負に出た角川・中国語漫画誌『天漫』(阿井)

2012年03月21日

■ページ大増! 天漫3月号■

*本記事はブログ「トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く」の2012年3月19日付記事を、許可を得て転載したものです。


■天漫がビッグチャレンジ

角川書店の中国語漫画雑誌・天漫。話題性だけはあるが、肝心の中身はパッとしなかったのですが、角川がとうとう重い腰を上げました。最新3月号は13作品を収録し、ページ数は通常の2倍の400ページというボリューム。それなのに値段は据え置きの12元(160円程度)です。このボリュームに思わず雑誌を手に取る人が続出するでしょう。

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微博(マイクロブログ)で創刊号から3月号までの天漫の厚さ比べをしていた人がいたので私も真似してみましたが、まさに突然のリニューアルです。

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3月号の表紙はらき☆すたのこなた(チャイナ服バージョン)、イラスト上には美水かがみの描き下ろしと注釈が書かれています。2月号で既に告知されていましたが、3月号から幸運☆星(らき☆すた)の連載がスタートします。

らき☆すたの他にも、第5回角川漫画新人大賞・天聞角川特別賞を受賞し、天漫12月号に該当作が掲載された『引霊師』、中国の少年漫画王の異名を持つ于彦舒が手がけるサッカー漫画『10号露蘭』(和訳:10番ローラン)、宇宙から飛来した謎の生物に髪の毛を寄生されてしまう女子高生のドタバタを描いた『請勿擅自訂下契約』(和訳:勝手に契約しないで下さい)などが紙面を飾り、ページ数だけではなく、ジャンルの幅も広げています。


■新連載作品1:『引霊師』

成仏せずにこの世に留まる悪霊を、仏教と道教の力を駆使して六道輪廻の世界に送る引霊師の活躍を描いた漫画『引霊師』。読み切り作品として登場した時には主人公だった葉衍が、体の半分が人間で半分が悪霊というのハーフ&ハーフ設定に変更され、主人公の座から陥落。代わりに唐檸という半人前の女の子引霊師が主役です。

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1話では自分一人の手では余る悪霊を葉衍と唐檸が協力して倒すという王道展開が繰り広げられました。今後は読み切りのように悪霊との対話をメインで話を進めていくんじゃないでしょうか。その方が葉衍の半人半霊設定を生かせることですし。


■新連載作品2:『10号露蘭』

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未来の地球でも、サッカーは全人類が熱狂するスポーツ。しかし未来のサッカーは体に機械を埋め込みサイボーグ化した選手が活躍する、力こそが全ての球技に変わっていた。

昔ながらのサッカーを愛し卓越したボールコントロールセンスを持つ露蘭。プロサッカーチームのスカウトマンからその技術を認められ、拉致同然にスカウトされてしまいます。しかしひと目で露蘭の才能を見抜いたスカウトマンは最も重要で重大なミスを犯していました。それは、露蘭がサッカー少年ではなくサッカー少女だったということです。

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ショタだと思ったらロリだったってパターン。于彦舒先生ありがとうございます!とお礼を言いたいところですが、普通に少年って設定の方が人気出たんじゃないでしょうか。


■新連載作品紹介3:『請勿擅自訂下契約』

憧れの先輩がいる高校に入学できたヒロインの卓凛。気合を入れて短めのスカートで登校した初日、憧れの先輩から突然告白される。嬉しさのあまり二つ返事でOKした凛だったが、実はその正体は先輩の姿を借りた宇宙生物だった。告白(契約)を受け入れてしまった凛はその時から髪飾り型の宇宙人に寄生され、共同生活を送ることになってしまう。

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学園ものの漫画を読んでいていつも不思議に思うんですが、中国人の漫画家は制服を着ているキャラクターが中国のどの都市に住んでいるのか、設定を考えているのでしょうか。私はダサいジャージの着用が義務付けられている北京の高校生しか知らないので、この漫画のように制服を着ているキャラがいると中国のお話しとは到底思えないのです。


■らき☆すたも始まりました

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幸運☆星(らき☆すた)は最新話と過去の話が一緒に収録されております。天漫誌上で掲載されているエヴァと同様に、日本の漫画のように右から左へとページを読み進める形式です。コンプティーク3月号と同じ話が収録されているのでしょうか?


■旧連載陣の動向

『ガンダムUC』や『涼宮ハルヒの憂鬱』のストーリーは原作通り順調に進んでいるようで、特筆すべきところはなさそうです。

「鄭和が男の娘に?!」という設定の漫画『提督大人与迷失的七海結界』は主人公(一応)の阿強が何故海に出たのかその理由が明かされ、阿強と深い因縁のある謎の男と彼を『陛下』と呼ぶ陳祖義が登場します。3話目にして物語の方向性が見えてきて阿強がようやく主人公らしくなってきますが、美味しいところを持っていくのはやはり鄭和です。

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3話目で気付いたんですが、この鄭和ってミニチャイナドレス(?)とニーハイで絶対領域を形成してるんですね。


■中国都市擬人

中国の各都市を擬人化させた漫画『中国城市擬人』は天津が主人公です。

2月号の西安洛陽編と同じで話が暗くシリアス調です。第1話の同人即売会でグッズを買い漁る広州編とはエライ落差を生み出しています。

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10月号の広州編

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3月号の天津編

前作と読み比べてみますと、どうやらこのシリーズは原作と作画の担当者が複数人いるようです。だから各話によって絵柄のみならず作品の雰囲気まで一変するというわけです。次回掲載予定の5月号ではとうとう北京がメインを張りますが、今の流れのままではシリアスムードが続きそうです。


■ 『初・末ONCEAGAIN』 

雑誌のバージョンアップと相俟ってストーリーに広がりを見せた旧連載陣の中で、唯一物語を収束に向けているのが『初・末ONCEAGAIN』です。

妻の訃報にも動じることなく会議を続けられるエリートビジネスマンの遠戈。ところが、ある時から他人の表情が全く見えなくなり、顔の上に当人の氏名と肩書き、現在置かれている状況などのデータしか見ることができなくなってしまいます。しかし地下鉄で偶然見かけた女子高生だけまともな顔を見ることができ、話したこともない彼女に徐々に心を囚われていきます。

前回、ようやく彼女の通う高校まで跡をつけて行った遠戈は、そこが彼の母校でもありその高校のグラウンドで彼女と仲良さげに話す男子高校生が、他ならぬ若き日の自分自身であるという異常な光景を目の当たりにします。遠戈が狂ってしまいそうになるほど追い求めていた少女こそ、とうの昔に関係が冷え切ってその死すらも心を動かされなかった遠戈の妻その人だったのです。

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今月号は恋人の幸せのために働いていた遠戈が、徐々に仕事中心の生活を送り彼女を蔑ろにするようになる回想シーンに費やされます。来月で最終回となる本作は『初・末ONCEAGAIN』というタイトル通りの結末を迎えることは出来るのでしょうか。


■全体総評

ページ数を倍増させ、掲載作品に歴史ファンタジー、冒険、学園、スポーツ、恋愛、伝奇ロマンなど日本の漫画雑誌らしい布陣を構え始めた天漫。当面はガンダムやハルヒ、エヴァ、らき☆すたなどのネームバリューのある作品を看板にするのでしょう。ただし、今更エヴァやらき☆すたを読むためだけに購読する人は少ないでしょうから、やはり天漫の主役は中国人作家の描いたオリジナル漫画なんじゃないでしょうか。

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*本記事はブログ「トリフィドの日が来ても二人だけは読み抜く」の2012年3月19日付記事を、許可を得て転載したものです。 


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