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2012年03月22日
Riverside wooden housing, Jiumen, Nangao (Guizhou) / HotShot2
■開屯村と鉱山
開屯村は人口2000人の小さな村。1990年代まで村民たちは無許可で近隣の鉱床の採掘を続けていたが、後に当局によってやめさせられた。
2011年12月、省の認可を得た貴州虹博鉱業有限公司は、開屯村での鉱脈探査と選鉱場の建設にとりかかった。採掘によって、水源の水位低下、環境汚染があるのではないかと恐れた村民たちが妨害するなどの問題が起きていた。県政府、鎮政府の説得により、一度は村民たちも矛を収めたという。
■村民と会社の衝突
再び問題が激化したのは今年3月15日のこと。 貴州虹博鉱業有限公司が新たな労働者用宿舎を建設しようとしたことに反発し、村人100人余りが現地を訪れた。連絡を受けた鎮政府幹部が現地を訪問。村人をなだめるために宿舎1棟の取り壊しを支持したが、村人たちはあくまで会社側が取り壊すべき、もう採掘はやめると約束するよう主張した。
会社側が聞き入れないのを見た農民たちは宿舎3棟を焼き払い、会社の事務用品や生活用品などを外に投げ捨てた。これに怒った会社従業員との間で衝突に発展。会社側は刃物を持ちだし、村民9人が負傷したという。
翌16日は永楽鎮の「赶集日」(市に人が集まる日。陳情の受付も行われる)。開屯村の村民は鎮幹部に陳情し、今すぐ現地の事情を見て欲しいと頼み込んだ。その途中、陳情した村民が感情的になって詰めより、集まった野次馬とともに鎮幹部を取り囲む騒ぎへと発展した。後に鎮政府職員の説得を聞き入れ、解散した。
■環境問題と群体性事件
以上、人民網の記事は黔東南ミャオ族トン族自治州政府発表をもとにしたもの。表に出ていない事情がいろいろありそうだ。
村人がまず放火など暴力を振るったとあるが、その後の「衝突」で会社側に負傷者が出ていないのはなぜか。本当は会社側が先に手を出したのではないか。昨年の「説得」とやらは、「村民の合意が得られるまで鉱山開発を一時中止」とかいう内容だったのではないか、さもなければ今回の衝突が起きるのは不自然、などと勘ぐってしまう。
中国の「群体性事件」(スト、暴動、デモなど人が集まる騒ぎを総称する中国独特の用語)では、環境問題が新たな焦点となっているが、開屯村のケースでは加えて「俺たちの採掘を勝手に禁止しておいて、別の会社には許可するってどうよ?」と権利問題もかかわっていそうだ。
なにせド田舎の話だけに続報、詳報はありそうにもないが、今の中国でごまんと起こっている事態、その氷山の一角として興味深いニュースとなった。
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