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子どもを2人産むのは公務員と高給取りだけ?!日本とは違うロシアの少子化事情(タチアナ)

2012年03月27日

■ロシア人で二人目を産むのはどういう女性ですか?■

*本記事はブログ「ロシア駐在日記」の2012年3月25日付記事を、許可を得て転載したものです。


■2人以上出産する女性ってどんな人?

子供の教室で色々な雑誌をパラパラと見ていたら、ニジニ・ノヴゴロドのある産科医長とのインタビューが載っていました。

20120327_写真_ロシア_出産


今のロシアで二人目や三人目を産む女性はどういう人ですか?」という質問に対して、先生は次のように答えています。

主に二つのタイプに分かれると思います。一つは公務員です。安月給で8時から17時まで働くよりも、子供を産んで育児休暇で家にいることを選ぶ女性です。経済的には大変ですけれども、子育てには専念できる。

もう一つのタイプは、上のお子さんがある程度大きくなり、収入が「中」か「中以上」のキャリアウーマンたちです。生活が安定してきたので42~44才でもう一人のお子さんを産む決心をします。低所得者の中で国の「母親資金」目当てに二人目を産む女性もいますけれども、ごくわずかだと思います。

先生の答えは以上です。
(「母親資金」については、記事「二人目出産に補助金支給=少子化が進むロシアの子育て支援―ロシア駐在日記」を参照)

これは統計的なデータではなくあくまでもこの先生の印象ですけれども、とても興味深いと思いました。要するに、ロシアでは二人目(三人目)を産んでいるのは、「安月給の公務員」と「高給取りのキャリアウーマン」という対照的なタイプの女性たちなのです。


■育児休暇取り放題の公務員、出産即仕事復帰のキャリアウーマン

もともとロシアでは育児休暇は子供が3歳になるまでです(育児手当が支給されるのは子供が1.5歳までです)。となると、タイミングよく二人目を産めば最大6年まで家にいられます。子供が3人なら最大9年間育児休暇が可能です。そして、民間企業では「もっと早く復帰するように」というプレッシャーがありますけれども、公務員の場合はそうでもないようです。そこで、もともと給料が安いということもあって、少なくとも育児手当をもらえる間は復帰しない公務員女性が多いようです。

一方、二人目(三人目)を産むもう一つのタイプは、バリバリ働くキャリアウーマンたちです。彼女たちは社長だったり幹部クラスの社員だったりして、経済的に恵まれています。そして、「仕事に穴を開けられない」という気持ちと「経済的なダメージが大きい」から、育児休暇をほとんど使わず復帰しています。

このブログの中に、ロシア人の家族は「年の差二人兄弟」が多いことについてすでに書いたことがあります(「サザエ・カツオ姉弟は当たり前=ロシアに「年の差兄弟」が多い理由―ロシア駐在日記」)。いうまでもなく、年の差兄弟のお母さんたちは必ずしも女社長とは限りませんけれども、こうした家庭は「年の差兄弟」というパターンの一つではあると思います。


■年の差兄妹の実例

そういえば、また別の雑誌の中で3月8日の「国際婦人デー」にちなんだ「私のお母さんが一番」という特集があって、6人のお母さんの写真が載っていました。私立クリニックの医者や「ディレクター」という肩書のついている女性たちばかりでした。興味深いのは、6人のうち4人は年の差兄弟のお母さんでした。

例えば、このお母さんはネイルサロンのディレクターで、お子さんは18歳と8歳です。

20120327_写真_ロシア_出産2


次のお母さんは、出版社のディレクターで、娘さんたちは18歳と9歳です。

20120327_写真_ロシア_出産3


そして、次のお母さんは「コウノトリ」クリニックの産婦人科医で、お子さんたちは17歳、8歳、2か月です。
20120327_写真_ロシア_出産4

お子さんが一人だけ、という二人のお母さんの写真も載っていましたけれども、お子さんはまだ小さいので、「年の差兄弟」の予備軍と言えると思います。


■日本の少子化、ロシアの少子化

少子化が同じぐらい問題になっている日本とロシア(「ロシアの少子化事情=産休に困る企業と「3人目の子ども」を生ませたい政府―ロシア駐在日記」)。しかし、私が見ている限り、問題の「中身」は同じではないと思います。

子供を作らない生き方を意識的に選んでいる女性に私が初めて出会ったのは日本に行ったときです。つまり、日本では、子供を一人も産まないという女性がいる一方で、子供を産む女性はだいたい一人にとどまらず二人か三人を産む傾向があると思います。

一方、ロシアは違います。少なくとも現時点ではロシア人の間では「子供を作らない」という生き方を自分から選んでいる女性が非常に珍しいと思います。しかも、このブログにも書いたことがありますけれども、「結婚に縁がなかった」からといって「子供がいない」という話にはなりません(結婚はしなくても子供は「産んでおく」=母子家庭が当たり前のロシア人の発想―ロシア駐在日記)。

よくも悪くもロシアでは、未婚の母は普通の存在なのです。ということは、日本とは違って、ロシアではほとんどの女性が子供を産むのですが、一人っ子が多いのです。雑誌記事の中でもわざわざ二人目を産む女性のタイプを聞くのも、そういう女性がそうは多くないからだと私は思います。

このように一言で少子化といっても、日本とロシアとの間では事情が必ずしも同じではありません。

関連記事:
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*本記事はブログ「ロシア駐在日記」の2012年3月25日付記事を、許可を得て転載したものです。 
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