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2012年03月28日
BCG injection / neillandreville
■予防接種記録をもらいにいったら、交換条件をだされちゃった
先日、久しぶりにロシアの国立子供クリニックに行きました。以前、長女りなにポリオと三種混合の予防接種を受けさせた病院です(「ロシアの赤ちゃん健診」)。その病院に数回通ったのですが、車じゃないと行けない場所だし、さんざん待たされるから通うのをやめました。そして、うちから歩いて行ける距離でとても親切な私立クリニックがあるので、そちらに切り替えました。
これで国立子供クリニックに完全にさようならしたかったのですが、なかなかそうは行きませんでした。というのは、そのクリニックに娘の予防接種記録が残ってしまったからです。
日本では予防接種のたびに母子手帳に書き込みをしてくれるので、予防接種記録は常に親の手元にあって便利です。しかし、ロシアは違います。私は、すぐに証明書を出すように頼んでみたのですが、「日本に戻るときになったら、全部まとめて出します」と断られてしまいました。
私立クリニックに切り替えても、予防接種記録をしばらく国立子供クリニックで放置していたのですが、どう考えてもそういう情報はかかりつけの病院でまとめて管理すべきです。タチアナはやっと重い腰を上げ、証明書をもらいに病院に行きました。
ロシアはどんな証明書でも、1日で手に入らないことが普通です。今回も、覚悟して行ったのですが、案の定イヤな予感が的中しました。
「予防接種記録?出しますよ。でも、その前に子供たちを二人とも連れてきて、ツベルクリン反応検査をしてください」という交換条件を突きつけられてしまいました。
■超厳重!ロシアの結核対策
ツベルクリン反応検査とは、結核感染の有無を調べるための注射です。ロシアでは子供たちは全員年に1度受けることになっています。一方、日本では子供たちはこの検査を特に受けていないようです。少なくとも、ゆうきは4才半になるまで日本で暮らし、普通に保育園に通っていましたけれども、一度もこの検査は受けていません。このことから考えると、日本では子供の結核がそれほど恐れられていないようです。
しかし、ロシアは違います。日本と比べると、ロシアの医療・教育現場で目の当たりにする結核に対する警戒心は異常にさえ見えます。ツベルクリン反応検査をしないと、今までに受けてきた予防接種の記録さえもらえない。結核の検査を強制されているとしか言いようがない状況なのですが、それだけロシアの医療現場は結核予防・結核早期発見に必死なのです。私のようなケースだけではない。BCGワクチンも、腹部X線も、国民全員が強制されていると言ってもいいと思います。
・BCGワクチン
まずBCGの予防接種ですが、ロシアではとにかく全員に受けさせようと、子供が産まれた産院で生後間もなく親の同意なしに接種されてしまいます。日本のように、赤ちゃんが3~4ヶ月になるまで悠長に待つなんて、考えられないようです。
・ツベルクリン反応検査
ゆうきとりなが受けることになってしまったツベルクリン反応検査は、保育園でも、小学校でも年に一度受けることになっています。結果が陽性だと、普通の保育園(小学校)には入園(入学)できません。
・腹部X線
何歳からかわかりませんけれども、腹部X線も非常に重要視されており、どこへ行っても「腹部X線撮影・異常なし」という書類の提出が求められます。例えば、昨年、同僚のお子さんは緊急入院することになりました。「付き添いはOKですが、『腹部X線異常なし』という証明書を持ってきてください」と同僚が言われたそうです。
・おまけ:別の同僚の話。
プールに通うため、皮膚科の証明書が必要でした(「何をするにもまず健康診断!不正書類が横行し効果は希薄に―ロシア駐在日記」)。ところが、皮膚科に行ったら、X線の検査結果がないと何の証明書も出せないと言われてしまいました。どう考えても、皮膚病とX線の写真は何の関係もないはずです。しかし、このように、関係のない科の受診条件にまでX線写真の提出を義務付けることで一人でも多くの人に検査してもらおうという狙いがあるようです。
同僚が言うには、以前あまりにもしょっちゅう提出を求められていたから、腹部X線の証明書を身分証明書に挟んで常に持ち歩いていたこともあるそうです。
■ロシアにいるなら結核対策は必要かも
・・・さて、国立子供クリニック。予防接種記録をそう簡単にはもらえないと聞いて落ち込んでいるタチアナ。
「いいんじゃない?日本のBCGの効果はどれぐらいあるか、見てみようよ」と国立子供クリニックの先生はなんだかうれしそうにさえ見えました。日本のBCGの痕はロシアのとは違うので、先生はりなを初めて見たときから興味津々(「「烙印」に見える日本のBCGの痕」」)。
ちなみに、私立クリニックはツベルクリン反応検査をする権利はないそうです。
というわけで、あれだけ縁を切りたかった国立子供クリニックにまたまた子供たちを連れて行くはめになってしまいました。あ~あ。
私たち家族にはまったく関係ないはずの結核。しかし、インターネットで調べると、Global TB burdenという「結核高蔓延国」として22カ国が挙げられていますけれども、残念ながら、その中にロシアも含まれているようです。であれば、ロシアで暮らしている間に私たちも小まめに検査しておいた方がいいのかもしれないと、納得しつつあるタチアナでした。
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*本記事はブログ「ロシア駐在日記」の2012年3月28日付記事を、許可を得て転載したものです。