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クーデター・デマに中国政府が過敏反応=マイクロブログのコメント欄閉鎖、官制メディアの批判記事

2012年03月31日

先日流れた「クーデター・デマ」に対して、中国政府は過敏ともいうべき反応を見せている。デマに関与した6人を逮捕、また大手マイクロブログ(微博)の新浪微博と騰訊微博のコメント欄閉鎖という強硬策を示した。


Tanks in Beijing
Tanks in Beijing / gadgetdan

■日常茶飯事のデマと異例の対応


先日、中国語ネット圏に「北京市中心部で銃声」「北京市内に軍用車が多数出没」「すわ、クーデターか」とのデマが流れた。その経緯、背景については福島香織さんの記事「北京でクーデター?飛び交う噂の背後にあるもの」(日経ビジネスオンライン、2012年3月28日)に詳しい。

30日、新華社はデマを流した6人が拘束されたと報じた。

「クーデター」デマで6人拘束=背景に重慶前書記解任―中国
時事通信、2012年3月31日

中国のミニブログ「微博」(中国版ツイッター)で今月19~20日に「軍の車が北京に入った」「北京でクーデターが発生した」とのデマが流布する事件があり、北京市公安局は「社会に悪質な影響を与えた」として捜査に乗り出し、デマを流した6人を拘束した。国営新華社通信が30日夜に報じた。
 
 北京の消息筋によると、デマの背景には、15日の薄熙来前重慶市共産党委員会書記の解任がある。公安・司法を統括する周永康党中央政法委書記が解任に反対し、クーデターを起こしたとの臆測が広がり、同筋も「軍が出動したといううわさが流れ、当局者の間に緊張が走った」と指摘した。

拘束だけならば日常茶飯事だが、なんと大手マイクロブログの新浪微博、騰訊微博は3月31日午前8時から4月3日午前8時までコメント欄閉鎖という荒療治に。デマなどの違法有害情報の氾濫に対応するべく、問題書き込みを削除するため、という触れ込みだ(新浪微博の告知)。


■官制メディアの大合唱

加えて官制メディアが「デマはダメ!」記事の大合唱。新華社は国家インターネット情報弁公室責任者の発言として、「デマを流したサイトは法に基づき摘発する」との記事を掲載。実際に問題ある書き込みが掲載された16サイトを閉鎖させたと報じた。

中国官制メディアの突撃隊長こと環球時報は、「社会の堅守はデマに対抗する防御戦」を掲載。「実際のところ、人類史において国家の進歩がデマによって『推進』させられたことはない」と説き、民主化や共産党崩壊を願っているにしてもデマじゃ無理ですよとネット民にメッセージを送っている。

大本営・人民日報は「ネットはバーチャル社会だが、リアル社会と密接にして不可分。リアル社会の調和と安定に影響する。ネットのデマはウソを『事実』に見せかけ、推測を『実在』にねじ曲げるもの。ネットで作られた荒波が人心をかき乱す。もしその横行を許せば社会秩序の混乱につながり、社会の安定に悪影響を与え、社会の信頼を損なうものとなろう」と格調高くご叱責。「ネットのご利用は法律に従って、でよろしく」と訴えた。


■「革命」を恐れる中国政府

薄煕来更迭へと発展した王立軍事件は、まさにネット劇場型事件とでもいうべき展開を見せ、あることないこと無数の情報がネットにあふれかえった。「重慶市の英雄公安局長が米領事館に逃げ込んだ」というありえない情報が真実だったこともあって、「ウソっぽいけどひょっとして……」という目で数々の噂話を眺めるという展開が続いた。

そうした無数のデマをスルーしてきた中国政府が今回、書き込み主の広告と官制メディアの大宣伝、微博のコメント欄閉鎖という強硬策に出たのは、「政変」「軍が動いた」という情報は見過ごせないという判断だろう。

思えば昨年春の「中国ジャスミン革命」も、米内部告発投稿型ニュースサイト・博訊網に「主要都市の広場に集まろう!」という呼びかけが掲載された「だけ」という不思議な出来事だったが、中国政府は異例の厳戒態勢で対応。無関係と思われる民主化人士の拘束、逮捕などの波紋が続いた。

私を含め、ほとんどの人々が「今の中国に革命はありえない」と考えているが、「いやいやひょっとして……」と警戒しているのがネットで騒ぐ反政府の民主化シンパと当の中国共産党という状況だ。


■中国政府の二律背反的課題

中国政府にとって悩ましいのは、社会の凝集力を高めるというミッションと、政権維持というミッションという異なるベクトルを持つ2つの課題に直面していることにある。

国有企業という「社会」が失われ、政府に対する信頼性が欠如し、道徳心や宗教心がもたらす規範も失われた中国。いかにして道徳を再建するか、政府への信頼性を取り戻すかが大まじめに議論されている。あたかも反政府のツールのように語られているマイクロブログだが、民草と政府を直結させる回路として、政府の信頼を取り戻すツールとしての期待もかけられている。

しかし個々の市民が道徳心や政府への信頼性を取り戻すだけならばいいのだが、そうした人々の意識が組織化されることは望ましくない。その矛先がいつ現政権に向くかわからないからだ。2005年の反日デモがその好例と言えるだろう。

反日デモ、あるいは中国ジャスミン革命での人々の組織化がどれほどの規模だったのかは疑わしいし、中国当局の杞憂と言ってしまえばそれまでだが、現実問題として中国の政治が異常なまでにそうした動きに過敏であることは注目に値しよう。

「唱紅」(革命歌振興)という文革ライクなポピュリズム運動で名をあげた薄煕来の更迭。その余波がネット劇場型事件とデマの横行へとつながっている展開はなんとも皮肉である。

関連記事:
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 コメント一覧 (3)

    • 1. 阿井
    • 2012年04月02日 00:33
    • 微博どころかbilibili動画やACfunなどの動画サイトもコメント欄封鎖されてますね。ただ優酷は大丈夫な気配です。基準が今ひとつわかりません。
      優酷よりbilibili動画観てるヤツの方が危険ってことでしょうか。それとも面倒事が起きる前にbilibili動画の方からコメ欄封鎖したってことでしょうかね。
    • 2. Chinanews
    • 2012年04月06日 13:02
    • >阿井さん
      コメントどうもです。bilibiliと優酷の違いが謎ですね……。自主規制するかしないかって感じでしょうか。
    • 3. essay writing coupons
    • 2014年07月15日 22:11
    • 内戦、紛争の力は、同じ国や政治的実体に属しての制御や、その国や政治のエンティティからの独立のために競っている戦争である。

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