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国営ディスカウントストアを1万店作る?!迷走するタイの格差是正政策(ucci-h)

2012年04月02日

■やはりダメだろう政府の日用品廉価店構想■

*本記事はブログ「チェンマイUpdate」の2012年3月27日付記事を、許可を得て転載したものです。


Big C
Big C / Sistak
■最低賃金引き上げの影響

アメリカ人に見られるように「市場で決める値段が一番いい」と言い張る市場原理主義者にも困ったものだが、タイの政治家のように、市場経済の原理に疎く、「人工的に安い店を作れば低所得者層が助かるだろう」とまじめに考える市場経済音痴にも困ったものである。

最低賃金の引き上げを機に、物価の高騰が続くタイ。賃金が仮に上がっても、物価が上がれば追いつかない。「全国民の賃金が同時に上がるわけではないが、物価上昇はすべての人に平等に影響する。よってたんなる賃金水準の引き上げでは生活向上に役に立たない」と思っていたら、タイの政治家の中に手品師が現れた。


■国営ディスカウントストアという奇策

「賃金アップで物価が上がるのはある程度やむをえない。高所得者はビッグC(タイとベトナムに展開するスーパーマーケット・チェーン)でいいものを高く買えばいい。低所得者には、政府が安い店を作ってやる」ときたものだ。

政府が設営する日用品安売り店「トン・ファー」(青旗)のアイデアが出たのが昨年のことだ。「そんなもの無理だよ、どうなるのかなあ?」と思っていたら、この3月下旬になって、「青旗はやめて、代わりにトゥーク・チャイ(お気に入り)店を1万店、16億バーツかけて作る」とブーンソン商務大臣が言ってきた。1店当り13万バーツは、店を作るだけの予算である。仕入れ、在庫は関係なさそうだ。

市価より20%安い米や食料油や砂糖など日用品20品目の店を、6ヶ月以内に1万店全国に作ると、まじめに言っているようだ。どういう手法があるのだろうか?製造者に安い価格で泣いてもらうのだろうか。


■失敗は必至

タイ小売・卸売協会は、「過去にも同様の試みがあったが、物が悪くて失敗したじゃないか。性懲りもなくまた繰り返すの?私たちの物流ネットワークをうまく使った方がよほどいいものが安く提供できるよ」と冷ややかな反応。その通りであろう。

どこの世界に、小売業が必死になって安くてよいものを提供しようと競い合っているところに、政府がお金を提供して、これで安いものを供給しろと言って、誰がどういう形で実現できるのだろうか?

「こんな子供だましみたいなやり方はないだろう。失敗は目に見えている」と笑ってはいけない。この廉価日用品供給店は、最低賃金大幅引き上げ、学卒給与引き上げの「免罪符」に使われるのだから……。さて、来月から1号店ができると言うから、しばらくたったら、「ツーク・チャイ」のブランド店を探しにいこう。どこかに見つかるかなあ?

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*本記事はブログ「チェンマイUpdate」の2012年3月27日付記事を、許可を得て転載したものです。   

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