中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年04月07日
super computer / georgia.kral
■地方政府のお手盛り統計と国家統計局の秘策
中国の経済統計がいささか怪しいのはよく知られたところ。各地方のGDPを合計すると、国をはるかに上回るものとなってしまう。一つのプロジェクトを複数の地域でカウントするなどの技術上の問題もあるが、それ以外に各地方がごまかしているケースも少なくないという。
というのも中国の地方官僚の業績評価の一つに経済成長率も組み込まれているため。立身出世のためにうまいこと経済成長させましたよ、とお手盛りで報告してしまうのだ。
こうした問題をクリアするため、中国国家統計局のスーパープロジェクトが発動した。それは三上企業(一定規模以上の工業企業、一定額以上の売上の小売店・宿泊業・飲食業、資格を有する建築業)及び不動産デベロッパー、計70万社は地方政府を通さずに、ネットで直接、国家統計局に報告せよというもの。今年の2月18日よりスタートしている(新華網日本語版)。
■上に政策あらば下に対策あり
ところが、「地方政府をスキップして直接報告させれば、生の情報が取れるわい!」というお国の改革に対して、地方政府は「上に政策あらば下に対策あり」の中国精神を見事に発揮している、というのが21世紀網の報道。
中国各地の市、県、区で、「統計改革グループ」なる組織ができたり、あるいは統計改革に対する通達がでているという。その内容は「国家統計局にデータを送る前に、市・県・区政府に一度データを見せなさい」というもの。間違いがないようにチェックしてあげよう、という優しい心なのかもしれないが、「もうちょい売り上げを多くできませんかね?」といった指導が入っても不思議ではない。
報道を受け、6日、中国国家統計局の馬建堂局長は「企業データの報告に地方政府が関与することはまかりならぬ」との指示を出した(ロイター中国語版)。が、なにせ中国各地70万社の企業データが改ざんされていないかどうか、いちいちチェックするのは難しいのではないか。
ネット導入に積極的な中国政府が、「地方政府をスキップして統計データを集めれば無敵!」と考えたのは私もナイスアイディアだと思ったのだが、敵も然る者ひっかく者、結局は元の木阿弥ということになるのだろうか。
関連記事:
GDPが40兆円も増えちゃいました!足し算が合わない不思議な統計―中国
【追記】【誤報】「GDPマイナス10%?!中国経済はすでに破綻」というヨタ話を信じるな!
北京の灰色の「青空」=違和感残る政府統計―政治学で読む中国
中国の「不思議な統計」=失業率と就職率の読み方―翻訳者のつぶやき