中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年04月09日
广州万花筒 / llee_wu
日本でも話題となった薄煕来・前重慶市委書記の更迭。その薄前書記の看板政策の一つ、「打黒」(マフィア・汚職官僚摘発)についても、一度ぐらい説明を目にした人は多いのではないか。
注目するべきは看板政策としてマフィア摘発を掲げなければいけないのか、という点だ。本サイトでも何度かとりあげてきたが、改革開放以来、中国共産党の統治は緩み、また経済関係や利害関係に関する衝突を処理するため、中国のマフィアは急速に復活しつつある。
興味深いのは、台湾や香港とは異なり、多くのマフィアが新興勢力であるにもかかわらず、前近代的な様式や名称を継承していること。あるいは武侠小説や香港マフィア映画の影響も強いのかもしれないが。最近、広東省を中心に学生不良グループの台頭が注目されているが、彼ら「幇派」もまた前近代のマフィア、結社的な名称、組織を継承している。
■幇派
「幇派」 という言葉がある。中国製オンラインゲームならば「ギルド」の意味。武侠小説ならば各流派のグループ。黒社会ならばマフィアのグループ、そして広東省広州市では不良グループを指す言葉となる。近年、広東省では格好への幇派浸透が広がり、注目されている。
広東省裁判所では、2008年から2011年の4年間に5万人の未成年犯罪者が裁判にかけられた。全国の約10%という多さだが、その半数以上は「幇派」関連だという。といっても、幇派イコール犯罪組織というものではない。仲間を守れ、ボスの命令は絶対という程度の決まりしかない組織もあれば、ひったくりや窃盗などの犯罪を繰り返している組織もある。また幇派同士の決闘もしばしば起きている。
広州市ではないが、今年2月には南京市で不良グループが通行人4人に面白半分で暴力を振るう「ゲーム」を楽しんでいた事件が発覚。話題となった。
■幇派に加入する理由
国際在線が調査した学校には狗堂幇、新興幇、千龍幇、少坊幇などの幇派があり、構成員はいずれも100人以上を数えている。各幇派は階層化され、下級会員は自分の直接の上級会員に金を支払うのが一般的だ。費用は月50元(約650円)程度。退会時には数百元が必要になる。
生徒たちが幇派に参加する理由は、組織の一員となることで威張れるからというもの、加入を強制されたものなどさまざまだ。ある生徒はどこかの幇派に属さないといじめられたり、かつあげされたりするから、と話している。上納金がなく、規則のしばりが緩いグループを選んで加入したという。
こうした状況を不安に思っているのはやはり親御さん。劉さんという女性はたまたま街で、息子がいじめられ、幇派に加入するよう迫られている姿を見かけた。学校や警察に連絡すると、騒ぎが大きくなり息子の高校受験に影響するかと心配し、結局ボディーガードを雇って学校の送り迎えをお願いしている。
■幇派の低年齢化
最近の幇派は低年齢化しつつあると、かつてある組織のメンバーだった王傑氏は言う。数年前、広州市海珠区江南西「統一」を唱え、付近の幇派に次々と決闘をしかけていった許智雲くん。当時はまだ13歳だった。今年1月にひったくりなど6件の容疑で裁判を受けた張東暁くんは13歳の時に「洪興幇」を立ち上げた。
中国の刑法では14歳未満は少年犯罪として扱われる。そのため警察は14歳以下の犯罪行為について統計を持っていない。それだけに大胆な犯罪が可能となる。
また未成年犯罪の温床としては、両親がともに出稼ぎしている「留守児童」、仕事もせず学校にも行っていない遊民の存在も大きい。2010年、広西チワン族自治区玉林市博白県で摘発された少年犯罪グループ「十三省」は、8~13歳の少年13人によって構成されていた。全員が親に捨てられたストリートチルドレンだった。
香港映画にあこがれて!中学生がマフィアを結成、15年後の検挙―中国
官僚を辞めてマフィアのボスになった男=地方官僚と黒社会の結託―中国
元不良の僧侶がランボー、チェ・ゲバラ、スーパーマンとバトル!『ホリーマン2』―タイ映画(asianet)
<性風俗と人権>今度から「売春婦」を「不良女性」って呼ぼう=言い換えだけじゃ問題は解決しない―北京文芸日記