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中国不動産会社が破産申請=「不動産バブル崩壊か!」と盛り上がる一部メディア

2012年04月10日

2012年4月9日、浙江省杭州市余杭区人民法院は、不動産開発業者・金星不動産の破産申請手続きが進行中であることを認めた。10日付南方都市報を主に参照した。


Beijing, China: Liang Ma river, behind Kempinksi hotel
Beijing, China: Liang Ma river, behind Kempinksi hotel / Marc van der Chijs

■不動産抑制政策下での初の破産申請?

中国浙江省の不動産会社が経営破綻、規制下で初-第一財経

投資助言会社CEBMグループ(莫尼塔投資)の施琪アナリストは10日の顧客向けリポートで、「金星房地産の経営破綻は、資金調達の難しさから中小規模の不動産会社の事業活動が制約されていることを反映している」と説明。「中小の不動産会社の破綻が今後相次ぐとは思わないが、発生リスクの頻度は高まるかもしれない」との見方を示した。

3月30日、金星不動産は裁判所に破産を申請した。昨年から不動産価格抑制政策が続いており、不動産業者は資金難に陥っているとの報道が続いている。また昨年始まった低所得者向け住宅が今年次々と完成していることもマイナス要因。A株上場不動産企業が保有する在庫物件は2011年には9048億元(約11兆8000億円)と前年比1.5倍にふくれあがった(新京報)。

金星不動産の一件は抑制政策下での初めての破産申請とあって、「ついに狼がやってきた!」「ドミノ倒しで倒産連発や!」と盛り上がっている報道も少なくない。

とはいえ、「初の破産申請」というキャッチフレーズというのは微妙なごまかしがあるという。というのも通常は経営難に陥っても、事業や資産を他人に譲渡してやりくするのが一般的で、破産申請することはないからだ。昨年は経営者の夜逃げ、飛び降り自殺などの事件が相次いだが、その中には不動産関連の経営者も含まれている。彼らは破綻はしたが、破産申請はしていなかった。

また破産申請によって物件購入者の資産は保全される。金星不動産が開発した物件は、西城時代家園だけだが、最後に残る道路の舗装や緑化などの最終工程については当局が資金を供出して完成させる方針だという。


■盛り上がりすぎにご用心

金星不動産の親会社・中江ホールディングスのトップ、兪中江は香料、油脂化学品の製造で身を立てた事業家。シンガポールでの上場も果たしている。不動産を含め、多分野の事業に手を出していたがこれが失敗し、親会社は破綻状態となった。

よって金星不動産の破綻も不動産価格抑制政策が破綻の原因ではないとの指摘もある。そも金星不動産の物件はすでに完売しており、資金は回収されていたはずだった。マンションは完売したが、その前払い金を別の事業や借金の返済に使ってしまい、財布が空になった可能性が高い。そのあたりの責任については今後問われることになりそうだ。

というわけで、「中国不動産会社が破産」「中国不動産バブル崩壊や!」「2012年、マヤ歴の終末キター」とぱっと見盛り上がれそうなネタだが、よく調べると中国不動産業界全体がクラッシュすると決めつけるにはまだ早すぎるようだ。


■これから起きそうなトラブル

とはいえ、注目すべき点もある。

長きにわたって続いた中国不動産価格の上昇に伴い、有象無象の事業家、企業が不動産事業に手を出しているわけだが、親会社の不振や資金難によってころっと破綻してしまう中小不動産企業が続出する可能性は否定できない。

業界のトレンドとしては、誰でも参入すれば儲かる時代は終わり、ブランド力と資金力を持つ大手に集約されていくターンが始まったということだろう。まあそれはそれでいいのだが、中小企業が開発した物件を買ってしまった消費者は悩ましい。今回は当局が面倒を見るという話だが、今後付近が大規模開発されるという触れ込みだったのが頓挫してしまったり、あるいはメンテナンスなどでトラブルが起きるという問題もありそうだ。

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