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腹心の部下は米領事館に逃亡、妻は英国人を毒殺=薄煕来・前重慶市委書記終了のお知らせ―中国(水彩画)

2012年04月11日

■【速報】薄熙来終了のお知らせ■

*本記事はブログ「中国という隣人」の2012年4月11日付記事を許可を得て転載したものです。


■王立軍事件とは

中国を支配する9人の老人たち、それが中国共産党中央政治局常務委員。今秋の18大(中国共産党第18回全国代表大会)で交代するわけですが、その有力候補の一人・薄熙来をめぐって今冬、大きな動きがありました。

腹心の部下であった「打黒英雄」王立軍が公安局長の座から外されたかと思うと、成都市の米領事館に逃げ込むという大事件が発生。重慶市からは追手の警察車両が大挙襲来し、領事館を包囲するという騒ぎに。両会明けの3月15日にはついに薄煕来・重慶市委書記が更迭される事態へと発展しました。

そして4月10日、新華社は「深刻な規律違反問題で立案、調査を決定した」と報道するにいたりました。今回の事件について「天安門事件以来最大の政変」と評する海外メディアもあります。膨大な量の報道や噂を整理し、考察してきた「細かすぎて伝わらない王立軍事件ウォッチブログ」こと、「中国という隣人」が最新情報を伝えています。

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■全世界が待ちわびた(?)新華社発表

2012年4月10日、ツイッターには「今晩19時、CCTVが薄煕来に関する中国共産党中央政治局の決定を報道する」との噂が流れました。ところが夜のニュースでは報道されず。「公式発表まだか!」と全世界のメディア関係者らが待っていると、ロイター通信が公式に先駆けて「薄熙来が政治局委員の職務を停止された」と報道。ちょっぴりフライング気味に薄煕来報道合戦の火ぶたが切って落とされました。
(報道合戦の駆け引き(?)について、中国外交政策研究者の前田宏子さんが面白いツイートをしています。12

そしてついに午後11時に新華社から発表が。

201200411_中国_政治_薄煕来


中国共産党中央、薄煕来同志の深刻な規律違反問題に関して、立案・調査を決定

薄熙来同志の深刻な規律違反をかんがみて、中央は「中国共産党章程」「中国共産党紀律検査機関案件検査工作条例」の関連規定に基づき、その中央政治局委員、中央委員の職務を停止。中共中央紀律検査委員会により立案・調査することとなった。

世界の人々(のごく一部)が待っていたわりには簡素な内容。深刻な規律違反の中身については一切触れられていません。公安部に断りなく王立軍を解任した件ではないかと推測されていますが、いまだに明言されていないのです。

政治局委員の更迭といえば、2006年9月の上海市のトップ、陳良宇があげられます。陳の場合、政治局委員解任発表の時点で「陳良宇同志の関連問題に関する初歩的状況報告」が発表されていました。ある程度調査を進めた上で容疑の内容を発表していたわけです。

ちなみに4月3日に恒例の植樹活動が北京で行われましたが、薄熙来は出席しておりません。地方指導者以外の北京を拠点とする政治局委員はおおむね出席していましたので、この時点で既に出席できる状況にはなかった事がうかがえます。


■英国人ビジネスマン殺人事件について再調査

新華社は上記記事と同時に、薄煕来の妻・谷開来に関する記事も掲載しています(公安機関、ニール・ヘイウッド死亡事件を法に従い再調査)。

谷開来とその息子・薄瓜瓜が関係しているとされるイギリス人ビジネスマン、ヘイウッド氏の死亡事件に関するものです。再調査となっているので、薄熙来の政治局委員解任に合わせて発表された、ということなのでしょう。ブログでは追いきれていませんでしたが、王立軍が薄熙来にヘイウッドの殺害に谷開来が関わっていると報告したため、薄熙来との関係が悪化し、成都の米国総領事館に保護を求めた理由の1つとなったとされています。

殺人事件自体は谷によるものかもしれませんが、政治局委員の妻が殺人事件に関連している、と発表されているのですから、薄熙来が無傷というわけには行かないでしょう。ちなみに新華社記事では「薄谷开来(薄熙来同志妻子)」と表記。「薄谷開来」と夫の名字をくっつける奇妙な書き方をした上に、その後ろにカッコで「薄煕来同志の妻子」としつこく説明。薄煕来と谷開来の関係をいやというほど強調しています。


■人民日報コラム

現在、新華社トップページには上記2本の記事に加え、人民日報コラム「党中央の正確な決定を断固擁護しよう」という記事がセットで表示されています。党中央の決定は正しかった、胡錦濤に従おうという内容ですが、ちょっと興味深い点が。

現在公表されている事実から見て、王立軍事件は国内外に劣悪な影響を及ぼした深刻な政治事件であり、ニール・ヘイウッド死亡事件は党と国指導者親族とその周辺関係者による深刻な刑事事件であり、薄煕来の行為は党の紀律に対する深刻な違反である。

という一文です。「王立軍の米領事館への逃亡」「谷開来によるヘイウッド殺害」「薄煕来の紀律違反」が別個の問題としてあげられています。王立軍、谷開来とは別に「紀律違反」があったことがうかがえます。

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