中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年04月11日
■暴動の発端は自治体合併
中国では年18万件もの「群衆性事件」(デモやストライキを総称する中国の用語)が起きている。まさに日常茶飯事なわけだが、今回の綦江区の一件はたんに規模の大きさだけではない、興味深い内容を備えている。大規模なデモ、暴動といえば、環境問題や土地強制収用などが原因のことが多いが、今回の発端はなんと行政区画の合併だという。
綦江区は昨年11月に万盛開発区と綦江県が合併して成立した区だ。今回、暴動を起こしたのは万盛開発区の住民たち。万盛開発区は1955年の成立石炭採掘とその関連産業を主産業とし、今は石炭が枯渇しつつあるとはいえ、少なくとも綦江県よりは栄えた自治体だった。より貧乏な自治体との合併によって不利益を被ると感じた住民たちがデモを起こしたようだ。
10日夜には数千人が「万盛区を返せ」「俺たちにはメシのタネが必要だ」などと書かれた横断幕を持って行進。警官隊と衝突した。11日朝には学生たちが中心となって高速道路を封鎖する一幕もあったという。以下のサイトがマイクロブログに掲載された写真をまとめている(1、2)
■重慶市政府が譲歩
デモについては中国メディアは沈黙を決め込み、ネット掲示板などの書き込みも削除されたようだ。ところが11日午後2時半、重慶市政府ウェブサイトは「中国共産党重慶市委員会・市人民政府による万盛経済開発区の現在の経済社会の平穏な発展の促進に関する政策意見」という通達を掲載。デモについての報道はないのに、参加者への譲歩だけが公開されるという、なんとも不思議な事態が出現した。
上記通達の内容をざっとまとめると、以下のとおり。
1:万盛経済社会の飲食業、運送業、旅行業については今後3年間の営業税をいったん徴収した後に返還する。
2:老朽化市街地の再開発について地方政府が強力に推進し、不足資金については市が手当する。
3:年金、医療保険については重慶市全体で一括処理し、保障能力を高める。一括処理後も待遇や積立金が悪化することがないよう約束する。
4:不動産立ち退きに関する保障については、従来約束した基準通りに執行する。
5:中古不動産の取引については2年間、契約税を免除する。
6:経済開発区に与えられていた資源枯渇型都市への支給、鉱山地質環境総合対策専門経費、市からの優遇政策については続行する。
7:炭鉱の地盤沈下地域にある危険な住宅については、住民の意思に応じて移転を支援する。市区政府が住宅建築を先行し、危険地帯に住む住民に対する優遇政策を実施する。
8:万盛経済開発区を優良観光区発展計画に組み込み、優遇措置を提供する。
人々の合理的な要求については政府は真剣に検討し対応する。ただし、合法的な手続きを通した要求だけだ。盗みや打ち壊しを働いたものは厳重に処理し、責任を追及する。
昨年8月の大連PXデモ翌日の大連の新聞各紙もそうでした。当時の記事は、一部の市民がPX工場撤去を要求し、政府が要求を受け入れた、といった書き方で、あたかも大規模デモが全く存在しなかったような書きぶりでした。
官製マスコミがデモを報道してしまうとデモを自由に行なっても良いという「お墨付き」と受け取られかねない、さりとてデモ参加者はなだめておきたいということでしょうか。