■「月にダライ・ラマ法王のビジョンを見た」として逮捕■
*本記事はブログ「チベットNOW@ルンタ」の2012年4月12日付記事を、許可を得て転載したものです。
■中国のダライ・ラマ法王バッシング
中国政府はダライ・ラマ法王の批判に余念がない。「角の生えた悪魔」と形容してみたり、「ヒットラーと同じだ」と訳のわからぬ比喩を使っては笑いものになっている。また、ダライ・ラマ法王の主張には触れず、とにかく「分裂主義者」として非難を繰り返している。
批判だけではない。チベット人がダライ・ラマ法王の写真を持ってるだけでも逮捕の対象になる。そればかりか、「月にダライ・ラマ法王のビジョンを見た」チベット人がそれだけで逮捕されたという驚くべき話が伝えられている。
■月を見つめていたら逮捕
チベット亡命政府のオフィシャルサイト・
TibetNetは10日、ラサでチベット人青年が逮捕されたことを報じた。逮捕されたのはブルブ・ナムギェルという20歳の若者。「月をじっと見つめているとダライ・ラマ法王が現れるんだ」と周りのチベット人に話し、みんなで「ダライ・ラマ法王のビジョンを求めて月を見つめた」ことが逮捕の理由となった。逮捕後、現在も行方不明のままだ。
プルブ・ナムギェルはラサ近郊、ペンボ・フンドゥップの出身。ラサのナンマ(་チベットの歌や踊りのライブなどがショーとして行われるクラブのような飲み屋)で働いていた。3月のある日、ナンマで働いている時、ある客が「おい、月に今ダライ・ラマ法王が現れているぞ」と言ったらしい。それを聞いてプルブ・ナムギェルは他の友人や客と一緒に月を凝視していたというのが事の次第のようだ。話を聞きつけてやってきた警官がプルブ・ナムギェルを連行した。
■専門家のコメント10日付
RFA英語版が専門家のコメントを伝えている。
コロンビア大学のロビー・バーネット教授は、「ダライ・ラマ法王の写真の所持禁止」には明文化された法律はなく、ゆえに「どのように運用されるか、何の基準もない」と指摘した。「プルブ・ナムギェルの行為自体、常識的に見て何らかの犯罪行為にあたるとは考えられない。人を集めたということだけで連行されたわけだ」とコメントしている。
ICT(チベット国際キャンペーン)のプチュン・ツェリン副会長は、一件は「チベット人の信仰の力と、当局がそれをどのように見ているかを象徴している」と指摘した。「月にダライ・ラマ法王のビジョンを見た、という話はこれが初めてではない。だが、それを弾圧するというのはまったくバカげた話だ」と批判している。
■チベット人作家が伝えた「月とダライ・ラマ」
またチベット人作家ウーセル氏もツイッターで以下のようにコメントしている(邦訳はuralungtaさん)。
1)「月夜のラサでは、月に向かって両手を合わせ、なにかの言葉を唱えるのは厳禁だ。迷信かそうではないかの問題ではない。人民警察に身柄拘束されてしまうという現実の問題だ。罪名は「月にダライが出現するとみなすのは違法行為である」というもの。実際には、私たちにはみな、月はこんなふうに見えているのに。(以下の写真を掲載)
2)確か5、6年前の深夜のこと。アムドの友人の1人から電話があった。「すぐ月を見て!月にクンドゥン*が現れている!」、と。私は外に飛び出して見上げたけれど、ラサの夜空は厚い雲に覆われていた。戻って、何も見えないと答えるしかなかった。アムドにいる友人は「こっちは村中の全員が屋根に上がって月を見て、(法王のため)祈りをささげているよ。俺の幼い姪っ子はまだ不安気に『警察は月を撃ち落としちゃったりできないよね?』なんて言うんだよ」と話していた。
*クンドゥン…チベット人のダライ・ラマ法王への尊称
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*本記事はブログ「チベットNOW@ルンタ」の2012年4月12日付記事を、許可を得て転載したものです。