■軍部も薄熙来事件に関係か■*本記事はブログ「中国という隣人」の2012年4月15日付記事を許可を得て転載したものです。

照片 008 / lego爱好者
■王立軍事件とは
中国を支配する9人の老人たち、それが中国共産党中央政治局常務委員。今秋の18大(中国共産党第18回全国代表大会)で交代するわけですが、その有力候補の一人・薄熙来をめぐって今冬、大きな動きがありました。
腹心の部下であった「打黒英雄」王立軍が公安局長の座から外されたかと思うと、成都市の米領事館に逃げ込むという大事件が発生。重慶市からは追手の警察車両が大挙襲来し、領事館を包囲するという騒ぎに。両会明けの3月15日にはついに薄煕来・重慶市委書記が更迭される事態へと発展しました。
そして4月10日、新華社は「深刻な規律違反問題で立案、調査を決定した」と報道するにいたりました。今回の事件について「天安門事件以来最大の政変」と評する海外メディアもあります。膨大な量の報道や噂を整理し、考察してきた「細かすぎて伝わらない王立軍事件ウォッチブログ」こと、「中国という隣人」が最新情報を伝えています。
■シリーズ:「打黒英雄」の失脚と薄熙来の危機
解任の「打黒英雄」が米領事館に逃亡?謎の「休暇式治療」発表で祭りに(水彩画)
カナダ首相と会見も……新華社に存在を消された薄熙来(水彩画)
解任の「打黒英雄」が米領事館に逃亡?謎の「休暇式治療」発表で祭りに(水彩画)
薄熙来失脚を狙う罠、黒幕は江沢民の政敵か?体制外メディアが報じる中国の政争(水彩画)
公安業務から解任された「重慶マフィア摘発の英雄」=「汚職で逮捕」との報道も―中国(水彩画)
「打黒英雄」の失脚は子飼いの部下を潰された賀国強の報復か―中国(水彩画)
「薄熙来は中国最大の偽君主」失脚した部下の公開書簡=重慶市トップ交代の観測も(水彩画)
重慶市長が装甲車を引き連れ殴り込み、団派の人事攻勢……王立軍事件の「謎」を考える(水彩画)
王立軍事件の行方=薄熙来は無傷で済むのか、重慶市政法会議を欠席(水彩画)
【王立軍事件】薄熙来が辞表提出との噂=後任人事情報も飛び交う(水彩画)
【王立軍事件】薄熙来の独立王国・重慶市に湖南省武装警察が「進駐」―中国(水彩画)
【王立軍事件】王代表、全人代に「休暇願」=海外メディアの「荒唐無稽」な報道(水彩画)
【王立軍事件】「フォトショップで作った捏造画像だ!」重慶市市長、報道官がコメント(水彩画)
【王立軍事件】「重慶市は反省せよ」温家宝首相が薄熙来を批判―中国
【速報】【王立軍事件】薄熙来、王立軍解任=温家宝の痛烈批判の翌日に(水彩画)
【薄熙来失脚】「共産党中央に服従を誓う」独立王国・重慶が完全降伏(水彩画)
腹心の部下は米領事館に逃亡、妻は英国人を毒殺=薄煕来・前重慶市委書記終了のお知らせ―中国(水彩画)
■重慶市の猛烈な手のひらがえし
薄熙来を政治局委員から解任するとの発表があってからというもの、中国各地で「中国共産党中央の決定を擁護する」と表明する報道が続いています。
薄熙来のお膝元であった重慶市は14日、同市共産党機関紙・重慶日報の1面を丸々使って、薄熙来批判の記事を3本掲載。党中央への恭順を再度表明しました。特に以下に紹介する記事の手のひら返しっぷりたるや、もう凄まじいの一言。
規律違反、法律違反では人心を得られない
中共中央は薄熙来同志の深刻な規律違反問題に対して立案、調査を決定したこと、そして公安機関がヘイウッド死亡事件に対して法にもとづき再調査した結果、容疑者を司法機関へ移送した発表は、全党、全国各民族人民の心からの擁護を得た。
中央の正確な決定は人心を得たが、薄熙来、王立軍ら規律違反、法律違反の人間は人心を得られない!
というもの。かつてのボスをばっさり切り捨てています。
黄奇帆・重慶市長こそ無事だったものの、市人大主任、組織部長の陳存根も事実上の解任処分。副市長や公安関連の調整などもありました。5月に予定されている指導部一新を考えると、生き残りに必死になるのは当然といえます。
特に陳存根は、黄奇帆、政協会議のおばちゃん(失念)と共に恭順姿勢を示して生き残ったかと思っていたので、党中央が容赦はしないというのはあながち嘘ではないのかもしれません。
■第二砲兵隊トップに停職処分か
地方だけではなく、人民解放軍からも党中央擁護の声が上がっています。ですが、その中でも第二砲兵隊(ミサイル部隊)政治部主任が人民日報に寄稿した文章が波紋を呼んでいます。
よほど重要なのか、あちこちのカテゴリーに転載されています。
党中央の決定を擁護するという内容そのものには問題がないのですが、注目されているのは文章の作者。通常ならトップの政治委員の署名文となるはずですが、なぜか格下の政治部主任である殷海龍の署名です。例えば海軍は劉暁江政治委員(胡耀邦の女婿)名義で党中央擁護の文章を寄稿しています。第二砲兵のおかしさが目立つのです。
どうやら第二砲兵部隊トップの張海陽・政治委員が停職処分に遭い、現在調査されているようなのです。香港メディアは薄熙来事件に巻き込まれ、失踪中だと報じています。張海陽は父・張震の三男として生まれました。張震といえば、中央軍事委員会副主席を務め、第二砲兵部隊の政治委員も勤めた将校。張海陽もばりばりの太子党となります。薄熙来とは年齢が近いこと、張が2009年まで重慶市も管轄する成都軍区の政治委員を務めていたことから、知らぬ関係ではなかったと思われます。
先日、郭伯雄・中央軍事委員会副主席が成都軍区を視察しました(
郭伯雄「部隊の政治思想、安定工作の進歩、安全発展を確保せよ」(2012/4/14新華社))。なぜこの時期に視察先を成都軍区に選んだのかよくわからなかったのですが、張海陽の件を考えると繋がってきます。
郭伯雄は「党中央、中央軍事委主席である胡錦濤の指揮に従い、党中央と団結せよ」と要求しており、また「政治的なデマを聞かない、信じない、他に話さない」よう教育するよう求めています。成都軍区内部で相当の動揺があったものと推測されます。
■薄熙来軍事クーデター計画説
また、薄熙来が2月8日、9日に雲南を視察した理由も繋がってきました。雲南は成都軍区の指揮下にあり、成都軍区14軍が雲南を守備します。この14軍ですが、薄熙来の父・薄一波が創設した山西新軍が前身だそうです。薄熙来は14軍を視察して軍部の不興を買ったのですが、あるいは成都軍区内部に薄熙来と呼応する動きがあったのでしょうか。そうした動きを警戒しての郭伯雄成都入り、という見方はアリです。
実は、ネットでは「薄熙来は王立軍に命じて軍備を整えさせていた、北京に攻め入り習近平の退陣を迫るつもりだった」という、薄熙来軍事クーデター説などという、どう見てもヨタ話に思えない噂話もささやかれていました。しかしこの一連の動きをみると、あながちヨタとも決めつけられなくなってきました。
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張海陽の件、気になります。
薄熙来とのつながりがある場合、張海陽が提供する予定だったもの(もしくは今まで提供していたもの)が軍事的な保護だったりしたら、wktkどころの話ではなくなりますね。