2012年4月20日、楽天は中国検索サイト最大手・百度と共同で運営していた中国ネットショッピングモール・楽酷天のサービス終了を発表した。
■日中最強タッグが惨敗
楽酷天は2010年10月にスタート。楽天が51%、百度が49%が出資している。日本最大のネットショッピングモールと中国最大の検索サイトのタッグということで注目を集めたが、大惨敗。2011年末には百度が運営から離脱するのでは、2012年春には人員の50%をリストラといったマイナスのニュースでしか注目を集めることができなかった。
楽酷天閉鎖を報じた日経の記事では(1)業界最大手・タオバオがシェア8割を占める独占構造、(2)2位以下の中小サイト間では過当競争による値下げ販売が激化、と要因を分析しているが、中国メディア報道によると、楽天と百度の内紛もあったという。
■楽天と百度の仲間割れ
中国でもたいして注目されていないのか、楽酷天閉鎖に関する報道はあまり多くないのだが、騰訊網が長編記事を掲載している。
ある内部関係者によると楽酷天成立から現在までに損失額は1億元(約13億円)を超えている。(損失額は)EC企業の中でも比較的少ない方だが、失敗の本当の理由は日本人の管理にある。
とばっさり。同記事曰く、最高マーケティング責任者(CMO)をのぞき、最高経営責任者(CEO)、最高執行責任者(COO)、最高技術責任者(CTO)はいずれも日本人が占めたほか、10人以上の日本人管理職が送り込まれ、楽天側が完全に経営権を掌握していたという。百度側が改善を試みようとも、臨機応変がきかない日本人との社内バトルに疲れ果てて業務改善が進まなかったという分析だ。
その亀裂が表面化したのは昨年末のこと。「百度・楽天」というタイトルが消え、「楽酷天商城:日本ナンバーワンのネットショッピングモール」と改変されたほか、百度の提供する決済サービス・百付宝も支払い方法の選択肢から消えた。百度が経営から手を引くのでは、と噂されたゆえんだ。
■百度の二股
もっとも騰訊網の記事は中国側、百度側の理屈に過ぎる感もある。楽天には楽天の言い分もあるだろう。
そも百度の李彦宏CEOは楽天と手を結ぶ一方で、中国ネット販売大手・京東商城にも出資し、二股をかけていた。いや、百度の楽酷天出資額は約2500万ドルだが、李CEOの京東商城への出資額は1億ドルを超えているという。その意味では本命は京東であり、楽天とはお遊びのお付き合いだったと言えるかもしれない。
というわけで、「百度は本気で協力してなかった」説というのもあるのだが、
億邦動力網によると、当初は強力なバックアップをしていたのだという。その強力とは無料広告だ。百度はグーグル同様、検索ワードに関連したリスティング広告を表示するシステムがあるが、なんとそこに楽酷網の広告が無料で表示されていたという。公立中正であるべき検索サイトとしてはもはや禁じ手のようにも思える手法だが、この裏技をもってしても客を集めることはできなかったようだ。
■最初からタオバオに勝つ見込みはなかったよ説
「楽天側が日本人管理職で固めて中国事情を無視した」説、「百度が本気で協力していなかった」説と紹介してきた。
他にも「中国でウェブサービスを広めようと思ったら、もっとクレイジーに宣伝広告費を注ぎ込まないとダメだよ」説とか、「日本のネットショップから直接商品が買える!っていう目玉サービスがしょぼいよ。輸送期間2週間とかふざけているんじゃないよ」説とかもあるのだが、まあ楽酷天以外のネットショッピングモールも軒並みタオバオに惨敗している現状を考えると、最初から難しいチャレンジだったというだけの話かもしれない。
タオバオ以外で大手と言える中国ECサイトは京東商城であったり、アマゾンであったりB2Cサイトばかり。加盟店を集めて運営する楽天のようなネットショッピングモールでタオバオの独占を打破するのはそう簡単ではなさそうだ。
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