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2012年04月27日
Tibet - Lhasa / Goran (Kartlasarn)
■数千人参加のデモ
2012年4月25日早朝、チベットカム地方カンゼ州(四川省カンゼ・チベット族自治州)のデルゲ県ゾクチェン郷で、僧侶や一般市民などチベット人数千人が参加した抗議デモが起きた。一部報道によると、デモ鎮圧のために軍・武装警察が出動。10人以上が拘束され、多数のチベット人が負傷した。
早朝6時半ごろ(9時半ごろとの報告もある)、ゾクチェン・シュリセン・ンガリク学堂とゾクチェン僧院のトゥルク、ラマを含めた僧侶を中心に約500人が公安と庁舎の前に集まり、「理由なき弾圧を止めよ!先に拘束された者たちを解放せよ!」との声を上げた。これを知った地域のチベット人たちが続々このデモに参加し、参加者は3000人以上に膨れ上がったという。
■暴力的弾圧に抗議
今年2月27日、チベットの宗教的祝祭日にゾクチェン僧院ではダライ・ラマ法王の大きな写真を玉座に掲げた。これを拝むため大勢の住民が押し寄せたが、当局の妨害により法要は一旦中止された。
今月22日、当局は警官約60人を僧院に送り込み、僧院を荒らし、僧坊を捜査し、僧侶たちに暴力を振るった。続く23日と24日には特殊警察約100人が加わり、暴力に拍車がかかった。僧内だけでなく、周りの民家も襲撃されたと伝えられている。
ギャンツォと呼ばれる村人は「部隊を睨んだ」というだけで激しい暴力を受け、病院に運び込まれたが現在重体という。その他7人が病院に収容され、13歳の僧侶を含む13人が拘束され、尋問中に激しい拷問を受けていると伝えられる。
この事態を受け、昨日25日ゾクチェン僧院僧侶はじめ地域の住民たちが公安と政府庁舎の前に集まり、拘束された仲間の解放とともに、暴力的弾圧を止めるよう求める抗議デモを行ったのだ。
■抗議デモ、その後
僧侶たちは「僧院に対する弾圧を止め、すべての兵士・警官が引き揚げること」を要求している。もし要求が受け入れられない場合には「事態は悪化するであろう」と警告している。
デモ後の状況については複数のメディアで食い違いがある。RFAは「役人は検討すると回答。現時点で衝突はないもよう」と報道。VOA、TibetExpressによると、新たに兵士・警察官が投入され衝突が起きたという。けが人及び拘束者も多数出たとの報道だ。
最近、カンゼ州北部で軍・警察官による暴力的な拘束をきっかけに、抗議デモが起るというケースが続いている。ゾクチェン僧院は中国人や西洋人、日本人にも人気の高い僧院で、同院の仏教コースに出席する外国人も多い。ニンマ派としては珍しく、2008年以降何度か政治的な活動を行っている。
参照:
25日付VOA英語版、25日付RFA英語版、同チベット語版、25日付TibetExpressチベット語版
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*本記事はブログ「チベットNOW@ルンタ」の2012年4月26日付記事を、許可を得て転載したものです。