■西側過熱報道に「冷ややか」な環球の真意■
*本記事はブログ「中国という隣人」の2012年4月28日付記事を許可を得て転載したものです。
Camp fire burning bright / jon_a_ross
■王立軍事件とは
中国を支配する9人の老人たち、それが中国共産党中央政治局常務委員。今秋の18大(中国共産党第18回全国代表大会)で交代するわけですが、その有力候補の一人・薄熙来をめぐって今冬、大きな動きがありました。
腹心の部下であった「打黒英雄」王立軍が公安局長の座から外されたかと思うと、成都市の米領事館に逃げ込むという大事件が発生。重慶市からは追手の警察車両が大挙襲来し、領事館を包囲するという騒ぎに。両会明けの3月15日にはついに薄煕来・重慶市委書記が更迭される事態へと発展しました。
そして4月10日、新華社は「深刻な規律違反問題で立案、調査を決定した」と報道するにいたりました。今回の事件について「天安門事件以来最大の政変」と評する海外メディアもあります。膨大な量の報道や噂を整理し、考察してきた「細かすぎて伝わらない王立軍事件ウォッチブログ」こと、「中国という隣人」が最新情報を伝えています。
■シリーズ:「打黒英雄」の失脚と薄熙来の危機
解任の「打黒英雄」が米領事館に逃亡?謎の「休暇式治療」発表で祭りに(水彩画)
カナダ首相と会見も……新華社に存在を消された薄熙来(水彩画)
解任の「打黒英雄」が米領事館に逃亡?謎の「休暇式治療」発表で祭りに(水彩画)
薄熙来失脚を狙う罠、黒幕は江沢民の政敵か?体制外メディアが報じる中国の政争(水彩画)
公安業務から解任された「重慶マフィア摘発の英雄」=「汚職で逮捕」との報道も―中国(水彩画)
「打黒英雄」の失脚は子飼いの部下を潰された賀国強の報復か―中国(水彩画)
「薄熙来は中国最大の偽君主」失脚した部下の公開書簡=重慶市トップ交代の観測も(水彩画)
重慶市長が装甲車を引き連れ殴り込み、団派の人事攻勢……王立軍事件の「謎」を考える(水彩画)
王立軍事件の行方=薄熙来は無傷で済むのか、重慶市政法会議を欠席(水彩画)
【王立軍事件】薄熙来が辞表提出との噂=後任人事情報も飛び交う(水彩画)
【王立軍事件】薄熙来の独立王国・重慶市に湖南省武装警察が「進駐」―中国(水彩画)
【王立軍事件】王代表、全人代に「休暇願」=海外メディアの「荒唐無稽」な報道(水彩画)
【王立軍事件】「フォトショップで作った捏造画像だ!」重慶市市長、報道官がコメント(水彩画)
【王立軍事件】「重慶市は反省せよ」温家宝首相が薄熙来を批判―中国
【速報】【王立軍事件】薄熙来、王立軍解任=温家宝の痛烈批判の翌日に(水彩画)
【薄熙来失脚】「共産党中央に服従を誓う」独立王国・重慶が完全降伏(水彩画)
腹心の部下は米領事館に逃亡、妻は英国人を毒殺=薄煕来・前重慶市委書記終了のお知らせ―中国(水彩画)
人民解放軍高官が「失踪」、薄熙来事件に連座か=薄熙来軍事クーデター説の真偽(水彩画)
■リークが飛び交う薄熙来事件
薄熙来関連の醜聞が、欧米メディア、反体制報道をにぎわせています。第二の林彪事件寸前だった、胡錦濤や温家宝を盗聴していた、夫婦で4800億円を海外送金していた、ヘイウッドと谷開来の痴情のもつれなどなど。裏が取れないネタであっても可能性がないとは言い切れなかったり、微博経由で流れてきた「眉唾ネタ」が結構な精度だったりするので、判断に困る状況です。
私としては、王立軍解任の初期に喬石が動いた、王立軍の独白など怪しげなネタに飛びついてしまったことを反省し、それ以降は公式の動きを中心に紹介してきました。中国ネタは、裏が取れない飛ばし気味のネタでも受け入れられてしまう下地もあり、内部からのリークもあって真贋が見極めづらい状況であります。
■環球時報がデマ沈静化コラム
さて、これまで薄熙来関連の醜聞に対して動きを見せてこなかった党中央ですが、環球時報を通じて沈静化に乗り出しました。
薄熙来問題はなぜ中国では関心を持たれず、逆に西側で注目を集めているのか?
(原題:中国大衆はあまり関心を持たず、それなのになぜ西側は関心を強めるのか)単仁平(環球時報評論員)
薄熙来関連の事件について、中国大衆の興味はすでにピークを過ぎた。今日の中国では、大衆の注意を1つの事件に集め続けるのは非常に難しいのだ。
しかし、一部の西側主流メディアは、異例の情熱でもって、連日「重大報道」を続け、微に入り細を穿つ報道を続けている。この詳細な報道はほとんどが信用できないものだ。情報ソースもないのに、さもその目で見たかのように報道している。いまだ公式の結論が出ていない時期に、一部中国大衆に先入観を植えつけようとしている。一部西側の人々は、中国共産党の統治に対する薄熙来個人の破壊力を誇張している。
薄熙来が深刻な汚職をしていたかは中央の最終的な結論を待たなければならない。しかし、薄は中国の全ての幹部を代表しているわけではないことに注意するべきだ。ここ数年、指導者幹部の中の一部の腐敗分子が摘発されているが、中央の腐敗厳罰の態度は旗幟鮮明。全社会が積極的に監督に参加している。最近の薄熙来を取り巻く事情や、各種の噂は、西側メディアや境外サイトからどんどん発信されている。境外世論は中国人の考えに強烈に影響している。
「薄熙来の話は中国では終わってるのに、お前らまだ盛り上がっちゃってんの」、「西側は中国のことをよくわかってない」という、いつもの紋切り型の批判で冷静さを装っています。
その反面、お前らのデマが国内に入ってきちゃって困ってるんですけど、という状況にあるとも書いています。どのような影響があるのかは読み取れませんが、環球時報がわざわざ書くくらいですからそれなりに困っているんでしょう。
■狙いは周永康への飛び火防止か
悪人認定を済ませ、後は発表を待つだけの薄熙来個人については何を言われても問題ないのですが、後ろ盾とされる周永康については別です。薄熙来事件とは書いてはいるものの、事件に関係しているのは薄熙来一家と重慶の人間だけではないのです。
逮捕実績がある政治局委員ならともかく、常務委員となると「刑事事件」では済まされなくなり、政治闘争であることを否定できなくなります。周永康が軍事クーデター計画のトップで、その件で取り調べを受けているなどといった路線対立は、党中央が一番嫌うところです。
薄熙来失脚後、「胡錦濤同志を総書記とする党中央との高度な一致を維持」することが、党内、軍部で言及されるようになりました。これは陳良宇の時には無かった現象であり、党内、軍部で不一致があったことをほのめかすわけですが、それが常務委員9人の分裂をも意味するのか。
「軍が北京に進駐した。北京で事件だ」のデマが微博で流れ、直後に犯人を拘束し、ネット上のデマ取締りがしつこいくらいに展開されていましたが、これも周永康関連の話であります。「一政治局委員の深刻な規律違反」だけでは報道が執拗過ぎですし、周永康という公安部門のドンが関わっている一大事件が裏にあったとしてもおかしくない、という見方も飛ばしになるのでしょうか。
■関連リンク毎日新聞の記事「
中国:薄氏巡る海外報道過熱 当局リークの見方も」も薄熙来事件のリーク問題、引き締めに転じた事情について報じています。
■シリーズ:「打黒英雄」の失脚と薄熙来の危機
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