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【陳光誠】米国は盲目の人権活動家を見捨てたのか?混乱する情報を整理してみた―中国

2012年05月03日

保護されていた中国の人権活動家・陳光誠が大使館を離れた。この件について「米国が見捨てた、裏切った」云々という物々しげな情報も出ている。だが、整理してみると、そういうことではなさそうだ。


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*画像は陳光誠氏。今年2月、監禁中の自宅で撮影した動画。  

■2日の混乱

陳光誠とその脱出については記事「脱出した盲目の人権活動家・陳光誠が明かした監視と暴力に苛まれた日々=ビデオメッセージ全文―中国」で取り上げている。

2日午後、新華社は突然、陳光誠が大使館を「自らの意志で離れた」と報じた。中国政府と米国政府が合意することなしに陳が大使館を出ることは考えがたい。合意の詳細は不明にしても、中国政府が陳の安全を保証したことは間違いないだろうと、私を含めニュースを追っていた人の多くが考えた。

ところが2日夜になって中国人権活動家・胡佳の妻にして、活動家の曽金燕がツイッターで「光誠は大使館を離れたくはなかった。ただ彼に選択肢はなかった。大使館を出なければ(妻の)袁偉静はすぐに山東省に送り返されてしまうだろう」でつぶやいたことをきっかけに、「ひょっとして脅しに屈してしまったのでは」との噂が広がっていく。

「米国ようやった!」と絶賛しまくっていた民主化シンパの中国ネット民も一転、「陳を売りやがったな!」と阪神ファンのごとき華麗な手のひらがえしを見せている。


■病院での不安

では、本当に米国は陳を見捨てたのだろうか?それは違うんじゃないかというのがいろんなソースを流し読みした感想。一番よくまとまっているのがCNN報道を転電した時事通信記事だ。

陳氏、米亡命を希望=「裏切られた」と米非難―CNN
時事通信、2012年5月3日

CNNテレビによると、中国の米大使館から北京市内の病院に移った人権活動家・陳光誠氏は3日未明(現地時間)、妻と共に同テレビの電話インタビューに応じ、自らの命が危険にさらされているとして、できるだけ早く出国し、米国に亡命したいとの意向を表明した。

陳氏は「中国にとどまれば、生きていることはないだろう。オバマ大統領に家族全員が出国できるようあらゆる手段を尽くしてもらいたい」と語った。陳氏の妻も「未来のない中国で子供を育てたくない」と述べた。

米政府は、陳氏が中国にとどまることを希望したと説明していた。しかし、同氏は病院で再会した妻から、椅子に縛り付けられて取り調べを受け、生命への危険を示唆する脅迫を受けたことを聞かされ、改めて亡命を決意したという。同氏は、米大使館で事情説明を受けておらず、「米国に裏切られたと感じている」と強い不満を表明した。 

つまり大使館を立ち去ることに同意したが、その後病院に行って妻と会い、陳の逃亡後に受けた暴行などの話を聞いて考えを変えたということになる。陳と直接対話した滕彪(日本語訳、ブログ・おもいつくまま)の電話記録を見ても、陳が次第に不安になっていく様子がよくわかる。

AP通信は「陳氏は病院の部屋から電話インタビューに応じ、「大使館から出なければ、中国当局が陳氏の妻を死の危険にさらすことになる」と、アメリカ政府関係者から言われたことを明らかにした」(NNN)とのコメントも報じているが、「妻の問題は病院に行って初めて知った」というCNNソースと矛盾している。

今、陳氏が置かれている環境を考えれば混乱したり不信に陥るのももっともだと思うのだが、飛び交う情報に早合点して「米国は陳を売った!」と釣られないようにしたいな、と。


■陳光誠問題の今後

今後については「米国と中国が合意の詳細」「中国に残るという陳氏の当初の決定は自発的なものなのか、中国と米国の交渉の結果なのか」「逃亡の協力者たちの処遇」という点ではないだろうか。

陳氏の妻が懸念しているとおり、たとえ身の安全を保証されたとしても、陳氏の子どもが中国で暮らすのは困難ではないか。中国政府にしても、国内に火種をとどめておくよりも海外に出してしまったほうが好都合のように見える。

もう一つ、よくわからないのが中国政府の「こだわり」だ。前回の記事にも書いたが、不妊手術強制など山東省の一地方都市における一人っ子政策の実態を暴いたことが陳氏の「罪」なのだとしたら、中国政府からしてみたらきわめて小さな問題であろう。国際的な注目も高く、かつ中国国内法に照らしても明らかに違法であった陳氏の監禁に中国当局がこだわるとしたら、それはなぜなのだろうか?

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 コメント一覧 (2)

    • 1. 通り掛り
    • 2012年05月03日 21:16
    • 「国際的な注目も高く、かつ中国国内法に照らしても明らかに違法であった陳氏の監禁に中国当局がこだわるとしたら、それはなぜなのだろうか?」

      そのわけを話せば、長いですが、実は裏の事情はこの間の「重慶事件」の裏事情とまったく同じです。
    • 2. 通り掛り
    • 2012年05月03日 21:22
    • その二件の行方はともに中共の崩壊をエスカレートさせると思います。
      2012年不思議な年だね~

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