2012年5月4日、南方週末は、山東省済寧市梁山県が、インフラ建設費を確保するため、公務員相手に事実上の地方債購入を強要していたとのニュースを報じた。土地を使った錬金術が封じられたことで、新たな「裏技」が出現した格好だ。
鉄骨切断機 / koziro
■金融商品名目で販売された事実上の地方債
2012年3月末、梁山県政府機関職員に同県総工会(総労働組合)の販売する金融商品を購入するよう「指示」が下された。金融商品の発行総額は2億元(約26億円)。3年満期で利率10%という高利回りの商品だ。
問題は金融商品の中身。 集められた資金は表向きは梁山県正大経済開発投資有限公司という国有企業(登記地は県財政局と同じ住所!)に貸し付けられるという名目だが、実際には県財政に貸し付けられ、県政府が返済を保証すると説明されていた。実質的には県政府が発行する地方債である。梁山県統計局ウェブサイトに掲載された通知「工会信託金融商品に購入する通知」では、
同金融商品は県総工会に販売。商品の性格は実質的に県財政に貸し付け、県が返済するものであり、ノーリスクにして利率は高い。我が局は統計部局全職員に積極的に購入し、4月7日までに予定購入限度額を達成するよう呼びかける。
とある。どうやら県政府の各機関に購入額のノルマが科されていたようだ。
■明らかにアウトな実質地方債
中国では地方政府による独自の地方債発行は厳格に制限されている。昨年、一部の省で独自起債が認められたとはいえ、発行額は中央政府が厳しくコントロールし用途も審査されているという。それというのも1980年代末から1990年代初頭にかけて地方政府が地方債を乱発する行為が横行。政府職員の給料やインフラ工事の代金を地方債で支払うという、地方政府による独自通貨的な形で使われていたケースまであったという。
2009年にも黒竜江省牡丹市などで地方財政を担保とする金融商品型の地方政府の資金集め行為があり、国務院が禁止令を出していた。中国の担保法では国務院の許可なくして政府機関が債務を保証することを禁じている。そも梁山県は2008年にも観光地建設名目で債権を発行。政府機関職員にノルマを決めて販売したが、お国に叱られて撤回するということをやらかしていたという。
法律を違反したやり口だけに県政府が返済を保証するという約束も空手形に過ぎない。南方週末の取材に答えた購入者たちは「利回りはともかく、元本だけでも返してもらえれば……」と不安を露わにしていた。
■地方政府融資プラットフォームから実質地方債へ明らかにアウトな資金集めを梁山県がやったのはなぜなのか。同県は財政収入1億4600万元、支出3億7300万元という赤字の貧困県。不足分は上級政府のお金でまかなっているのだろうが、財政はかつかつだという。しかし今年、済寧市は「大型プロジェクト建設突破年」というスローガンをぶち上げ、梁山県も同調しているという。
国の資金援助や銀行融資で費用をまかなう場合でも、地方政府が20~40%の資本金を供出しなければならないとの規定がある。以前ならば政府が土地を収用し、その土地を担保に銀行から金を借りる地方政府融資プラットフォームが打ち出の小槌として使われていた。2010年以後、中央政府は隠れた債務として膨らむ
地方政府融資プラットフォームを問題視し、この裏技も封じられてしまった。
というわけで、苦肉の策として怪しげな金融商品が販売されることになったという。
実質的地方債の怪しげな金融商品を販売するというやり口は、梁山県の専売特許ではない。山東省南部の複数の自治体で次々とこうした謎の金融商品が販売され、政府機関職員の購入が義務化されている。
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http://www.tsugami-workshop.jp/blog/index.php?id=1336136317
1年分の財政収入(1億4600万元)を上回る2億元を債券で集めてしまおうとするのはかなり荒っぽいことのような気がしますが、「やはり梁山泊に住む人たちはやることが違う」と感心しておくべきなのでしょうか。
さて今回の記事、多分「2012年月末」は「2012年4月末」、「お国の叱られて」は「お国に叱られて」、「土地融資プラットフォーム」は「地方政府融資プラットフォーム」、「その金を担保に」は「その土地を担保に」となるのではないかと思います。
それにしても、陳光誠氏の件にしても今回の記事の件にしても、なぜ山東省なのかが不思議です。
私は山東省には行ったことがないので、そのイメージを掴むことが出来ないのですが、山東省は沿岸部に位置するものの実は貧しい省なのか、それとも津上さんの記事にあるように上級政府からの吸い上げが厳しい省なのか。
それにしても、こういった金融商品が「労働組合」で売られているというのもすごいですね。