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【南シナ海問題】全世界のフィリピン人が反中抗議デモを計画=中国が海底資源探査を強行

2012年05月09日

フィリピン人移民団体が2012年5月11日に世界各地で南シナ海問題で中国に抗議するデモを企画している。在フィリピン中国大使館は中国人及び企業に身の安全に注意するよう警告している。


Oil rig
Oil rig / Stig Nygaard
■2011年から2012年初頭の超簡潔まとめ

昨年来、中国外交のホットスポットとなった南シナ海問題。簡単にまとめておくと、2011年に中国が南シナ海の海底資源採掘プラットフォームを設置すると報じられ、中国とベトナムが緊張関係に。中国巡視船がベトナム探査船に威嚇射撃するなど騒動が拡大。この問題にフィリピンも参戦。中国対ベトナム、フィリピンの構図となった(ベトナムとフィリピンが緊密に連携しているわけではないが)。なお台湾も南シナ海に魚雷艇でも送ってみようぜなどの政治家発言もあったが、世界からスルーされている。
(昨年の流れについては記事「2011年南シナ海問題が残したもの=東南アジアの軍拡競争」を参照)

2011年秋にいったん沈静化が図られたが、ベトナム、フィリピンともにアグレッシブな動きを見せている。ベトナムはインド、ロシアと南シナ海を共同開発する方針を発表。フィリピンも探査・採掘権を入札にかけ、海外企業相手に売り飛ばすという荒技を敢行。「他の国をとことん巻き込みます」という姿勢で、「二国間交渉による対話での解決を」(タイマンで話し合いなら小国には負けへんで~)という中国の要請を蹴散らした。


■中国VSフィリピン

というわけで、静かなつばぜりあいが続いていた南シナ海問題だが、一気に燃え上がったのが今年4月10日のこと。スカボロー礁(中国名は黄岩島)に停泊していた中国漁船をフィリピン海軍艦艇が摘発しようとしたところ(中国での報道ではフィリピン海軍の襲撃)、付近にいた中国巡視船が現場に急行。その後、船を入れ替えながらも1カ月弱にわたり、にらみ合いが続いている。

この間、フィリピンは海洋考古調査船での調査を実施しようとしたり、スカボロー礁をパナタグ礁とフィリピン風の名称に改名する方針を発表したりと、中国に負けず突っ張っている。フィリピン世論までしっかりと追いかけているわけではないが、フィリピン政治家の「中国許さまじ」的発言であったり、今回の抗議デモの呼びかけをみるに、フィリピン世論レベルでも「南シナ海を守れ」話はそれなりに盛り上がっているのではないか。

中国でも、突撃隊長メディアこと、環球時報が強硬論のコラムを掲載したり、中国外交部の傅瑩副部長が「フィリピンによる事態拡大に対応する準備はできている」とがっつりバトル方針を匂わせたりと政府及び官制メディアはそこそこの盛り上がり。そのせいで、せっかくの石原慎太郎都知事尖閣買収発言がかすんでしまっている。

中国ネット世論的にもそれなりの注目を集めている、と言えるかもしれない。9日、大手ポータルサイト・網易のニュースランキング(コメント数)では1位と2位をスカボロー礁問題が占めている。「発言したいネット民」の注目はこの問題に集中していると言えよう。ただしアクセス数ランキングでは1位が「廈門航空のスチュワーデスが上司の接待に付き合わされ、エッチまで強要された」、2位が「プーチン、大統領就任」、3位が「日本巨乳コスプレイヤー」という並び。「サイレント・マジョリティ」のネット民は南シナ海よりもエロのほうが大事なようだ。


■フィリピンは中国固有の領土、中国の探査プラットフォームが正式稼働

そんな中で出てきた全世界中国抗議デモの呼びかけ。中国大使館が警告し、CCTVが報じたとあって話題となっている。家政婦に代表される労務輸出の国・フィリピン。全世界に1300万人が散らばっているという。そのうちどれだけがデモに参加するのか注目ではある。家政婦さんが作ってくれた朝ご飯のオムレツ。その上にケチャップで「スカボロー礁はフィリピンの領土」とか書いてある展開を期待したい。

他にもいくつか関連小ネタをば。7日放送のCCTVの番組「24時間」で、女子アナの和佳さんは「黄岩島は中国固有の領土、その主権は中国に帰す」というべきところを、「フィリピンは中国固有の領土、その主権は中国に帰す」と言い間違えて話題となっている(CCTV)。「そのとおり、フィリピンを占領せよ!」と本気で盛り上がる人、ネタで盛り上がる人が出ているのも予想どおり。

もう一つの関連小ネタ……というか大ネタなのだが、中国海洋石油の深水海底資源探査プラットフォームが9日から正式に調査を始めるという(新華網)。本当は昨年中にやりたかったことだと思われるが、ついにというところだろうか。漁船がらみのもめ事やにらみ合いと違って、資源探査はフィリピン、ベトナムの実質的行動とその後の緊張激化の引き金にもなりかねない話だが……。

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