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2012年05月09日
Beijing, China: Liang Ma river, behind Kempinksi hotel / Marc van der Chijs
■完成住宅奨励という「抜け穴」
2011年から続く中国政府の不動産価格抑制政策。今年3月の「両会」でも温家宝首相は「抑制政策を緩和してはならない」と今年も方針を堅持する姿勢を表明。バブルと言われている中国不動産価格の抑制に力を注ぐ方針を示した。
地方政府も中央の方針に従い、不動産価格抑制政策の緩和は御法度となっている。ところが揚州市政府の「完成住宅の個人購入への奨励導入に関する通知」は不動産価格のてこ入れではなく、完成住宅の普及が目的と主張することで、中央の規制を突破する構えだ。
中国の新築マンションは内装工事をしないで引き渡されるのが一般的。これに対し、完成住宅(成品房)は内装工事を終えた後に販売される物件を指す。江蘇省では2015年までに市街地中心地域では60%、その他地域では40%の物件を完成住宅にすることを目指しているが、揚州市はこの比率が大きく下回っているという。そこで90平米以下の住宅には購入額の4%、90~120平米には5%、120~144平米には6%の補助金を支給し、完成住宅の普及を促すという。
■地方官僚の政治業績とGDP
とはいえ、揚州市の説明をそのまんま信じている者は誰もいない。形を変えた住宅市場救済策ではないか、という指摘が圧倒的だ。
GDPは基本的に消費、投資、純輸出の総和で求められ、中国では「三驾马车」(トロイカ、三頭立ての馬車)という呼び方がよく使われる。「もっと消費を伸ばしましょう」(内需拡大)が現在の中国の目標であり、「構造的減税」が政策課題に上がっている。
(たんに消費を伸ばすためならばただの減税でいいはずだが、重複課税の解消など構造的な改革を同時に行うことを含意したもの。「構造的減税って実質増税にするつもりでは?」という懐疑的な意見も)
もっとも内需拡大はそう簡単にできるものではない。経済成長率が政治的業績と直結している地方官僚の間では、手っ取り早く成果を上げようと道路工事などインフラ建設を加速させる動きもあるという。同様に地方GDPの向上、不動産市場てこいれの目的が揚州市にはあるのではないか。
揚州市政府はあくまで完成住宅の普及が目的だと主張、中央政府にお叱りをうけることはないはずと説明しているが、もし本当にお叱りがなかった場合、他地域にも同様の政策が広がる可能性は高い。そう考えれば、お叱りがでる可能性は高そうだが、はたしていかに?
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