中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年05月14日
中国のマガジンスタンドを眺めていて、ボクのハートをがっつりわしづかみしたのは、
AKB写真集!(海賊版だと思いますが、AKBがそれなりに中国で知名度を高めていることに驚き)
……ではなく、
中国新聞週刊でした。「黄岩島、炎黄島」という特集タイトルには個人的にAERA賞を贈りたい。
(黄岩島(HuangYanDao)と炎黄島(YanHuangDao)というかけことば。炎帝と黄帝は中国古代の帝王にして中華民族の始祖という位置づけ。炎黄子孫=中国人という呼び方も)
特集の内容は、4月からのスカボロー礁(黄岩島)におけるフィリピンとのやりとり、歴史的に「中国の所有は明らか」というネタ、米国を巻き込もうとするフィリピンの策略というあたりで、よくまとまっているとはいえ平凡、平凡、アンド平凡。
とはいえ、こういうお仕着せの公式見解も垂れ流すことでそれなりの効果はあるのでしょう。先日も中国人の友人と飲んでいたら、「フィリピンはひどいやつらやで」「もうすぐ開戦だな」とのヨタ話を聞かされました。
中国新聞週刊しかり、あるいは人民日報社旗下の準党機関紙にして中国愛国主義の突撃隊長である環球時報しかり。プロパガンダが作り出す素朴な愛国心というのは、熱血愛国者というよりはむしろ、「天下国家を語る飲み話」で微妙に愛国心を発露するライト愛国者を作り出す意味のほうが大きいのではないかなと思っています。
で、中国新聞週刊の話に戻るのですが、「共産党の公式見解を垂れ流すプロパガンダ雑誌はつまらん!」ということはなく、むしろプロパガンダ仕事をこなした後、他の記事のレベルはなかなかのもの。
この号では「「教育マンション」の罠」「人民網上場記」が秀逸でした。前者は「名門小学校の分校をマンション敷地内に作ります。物件を買ったらお子さんの名門校入学が保証されます!」という触れ込みで販売されたマンションなのに、分校建設が頓挫して騙されたというお話。現在、北京市では建設中マンション6カ所が名門・北京小学校分校を誘致、を売り文句にしているそうで。
後者の人民網上場記は昨年来、注目されている官制メディアのウェブサイト独立上場について。人民網が先陣を切り株価的には大成功を収めているわけですが、そう簡単に他サイトは後に続けないのではないかという分析です。例えば新華網は通信社として各地方のニュースを流す地方チャンネルというページを持っていますが、そのサイトの所有権が新華社本体に有するのか、各地方の新華社子会社にあるのかなど、上場にあたって必要な資産の計上自体がなかなか困難だとか。
こうした障害をクリアして上場するまでに人民網は10年間かかったのだ、という記事でして、お国と太いパイプがあって政策的優遇受けまくりの人民網が上場するのはいかがなものかという批判からは一銭を画した記事になっています。