中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年05月17日
■腎臓を売ってネットゲームに打ち込んだ少年
河南省出身の王さん(20歳) は数年前から杭州で働いている。高校を卒業した18歳の弟も、昨年、姉を頼って杭州にやってきた。ところがこの弟、仕事を探すどころか一日中家にこもってネットゲームざんまい。王さんが口を酸っぱくして注意してもいうことを聞かない。
杭州にいてもどうしようもないと悟った王さん、弟に江蘇省で出稼ぎする両親を訪ねて仕事を探すようにと言って、旅費として500元(約6500円)を渡した。ところが弟は数日後帰宅して「仕事は見つからなかった」とけろり。もらったお金は全部ネットカフェで使ってしまったという。
その後も弟はネットゲームにますますはまり込んでいった。ついには腎臓を売って3~4万元(約39~52万円)をゲット。おニューのパソコンを買って、ますます熱心にネットゲームに打ち込んだ。ところがその金もすぐに使い果たした弟、今度はネットゲームの装備が欲しいとせっかく買ったパソコンを安値で売り飛ばそうとしていた。
見かねた王さんは友人に頼んでパソコンを「買ったふり」をしてもらった。実際には王さんがパソコンを買って弟にお金を渡したわけだが、知ってか知らずか弟はその後もネットゲームざんまい。
そしてつい先日のこと、今度は「友達と新疆ウイグル自治区に行って、自動車修理の勉強をするわ。パソコンを売って旅費にする」と弟は言いだした。慌てた王さんは警察に通報。家にやってきた警官が弟を諭し、メディアに報じられる騒ぎとなった。
弟はパソコンを売るのはあきらめたものの、新疆に行く決意は変わらず王さんから1000元(約1万3000円)をもらって旅だったという。ちなみに記事のタイトルは「18歳男性、ネットゲームの装備を買うために腎臓を売却」。実際には腎臓を売ったお金で買ったのはパソコンで、そのパソコンを売り飛ばして買おうとしたのがネトゲの装備だが、インパクトを考えた軽い釣りタイトルとなっている。本記事のタイトルも中国広播網に敬意を表して(?)、実際の事件経過とは異なることを注記しておく。
■カジュアル腎臓売買
最近、中国では腎臓売買に関する事件が頻発している。先日も江蘇省で腎臓売買ブローカーが摘発され、手術を待っていた臓器提供者20人が「救出」された。「救出」といっても、臓器提供者は自発的に売ろうとしている人間が多い。睡眠薬を飲まされて腎臓を抜かれた、夜道で襲われて腎臓を盗られたという都市伝説は腐るほどあるが、実際に事件として確認されたものはないはずだ。
昨年も「iPadを買うために腎臓を売った少年」が話題となったが、ネットや口コミで「腎臓は2つあるんだから、1つとっても大丈夫。ちょっと手術して数万元もらえるんだから、おいしい話でしょ」とお誘いするパターンがよく報じられている。
本当にお金に困っている人だけではなく、iPadが欲しい、ネットゲームで存分に遊びたいなどの考えなしの若人をひっかけて腎臓を買っているわけだ。ちなみに移植手術が終わるとその後のケアがないため、感染症などの後遺症で苦しむことも多い。今回報じられたダメ弟は元気に(?)ネットゲームに興じていたようだが……。