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チャイナ・ナインの一角・周永康の失墜=中央政法委の解体もくろむ胡錦濤(水彩画)

2012年05月19日

■中央政法委の解体目論む胡錦濤さん■

*本記事はブログ「中国という隣人」の2012年5月15日付記事を許可を得て転載したものです。


Hangzhou cops
Hangzhou cops / coljac

中国共産党の最高指導部が政治局常務委員会。そのメンバーである9人の常務委員が中国を動かす決定権を握っている。遠藤誉さんの著書『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』はまさにその常務委員に光を当てた一冊だ。その遠藤さん呼ぶところのチャイナ・ナインの一角、周永康が危機に追い込まれているとの報道が最近相次いでいる。


■全面降伏モードの周永康

周永康といえば薄熙来の政治局委員解任に最後まで反対した、唯一の政治局常務委員。いえ、本来ならちゃんと流れをご説明しなければいけないのですが、また後日にさせて頂いて、ひとまず周永康先生終了のお知らせとなりそうな件を。

薄熙来を巡って対立が顕著となった常務委員会。周永康は薄熙来失脚後、全面降伏モードを見せています。「胡錦濤同志を総書記とする党中央と高度に一致」を常務委員で最初に掲げ、また胡錦濤が五四運動90周年を記念して行った五四重要講話を1人だけ「真剣に学習するよう」求めたり、胡錦濤への追従が目立ちます。

こちらの記事「中国政法大学教師学生代表座談会の講話」(人民日報、2012/5/15)でも、大先生の名前が8回も出てきますね。また、薄熙来失脚後、ただでさえ少ない海外からのお客さんとの楽しいひと時も、相手が明らかな格下だったり畑違いの相手だったりと、1人凋落が顕著な周永康さんであります。


■周永康の失墜と中央政法委の解体

その周永康が、長らく政法委で二番手を務めてきた孟建柱に実権を明け渡しているという報道です。

英国報道「周永康が既に権力委譲」(明報、2012/5/14) 

孟建柱に権力委譲となれば二期連続の二段階特進となります。これまで孟建柱の常務委員入りは9人定員の前例からありえないと考えていましたが、中央政法委を解体し権限を縮小化して政治局委員がトップを勤めるようにすれば、孟建柱を無理に常務委員にする必要も無くなり、胡錦濤が提唱する常務委員7人への縮小が進みます。

中央政法委はご存知のとおり権力がデカ杉で、そこに割かれる予算も強大なものです。陳光誠の独白によれば、

おまえばビデオメッセージで3000万元(約3億9000万円)以上を(陳の監禁に)使っていると言っていたな?知っているか、3000万元は2008年の数字だ。今じゃその倍でもきかない。それも北京の上層部に送る賄賂は別にして、だ。できるもんならこの情報をまた外に漏らしてみろ。」彼らはそう言っていました。

また雇われて見張りの仕事をしている人たちは、金はもらっているが現場のボスにピンハネされていると明かしていました。なるほど、彼らにとっては確かに儲けるチャンスでしょう。私の知る限り、郷鎮の供出した金は各班のリーダーの手に渡ります。1人1日100元(約1300円)の予算で人を集めることになっているのですが、班長は雇う時にはっきりこう言っていたそうです。「給料は1日100元。だが実際に渡すのは90元(約1170円)だ。10元(約130円)は俺がもらう」、と。

現地では一日働いても給料は50~60元(約650円~780円)が相場です。たいした仕事もなく、安全で、しかも三食付きとあれば、みんな当然やりたがります。90元でも、です。班長にしてみれば、各班に20人以上いるわけですから、1日200元(約2600円)以上になります。どれほど凄まじい腐敗でしょうか。

となっています。

国内治安の名の下に、相当な予算が費やされているのです。財政部の報告では、2011年に続いて国内治安維持に関する支出(7017億元、前年比+11.5%)が国防費(6479.2億元、前年比+11.1%)を上回っており、その予算を分捕れる中央政法委の権力の大きさを改めて思い知らされる次第であります。


■薄熙来と周永康

薄熙来の看板政策「打黒」(マフィア・汚職官僚撲滅)ですが、重慶市だけではなくて、中央政法委の力添えがあったからという話だったようです。

薄熙来「打黒は必要なものだ」(重慶日報2012/3/11)

「打黒」は決して公安だけで行ったものではない。公安、検察、法院(裁判所)、司法、国家安全部、そして紀律検査委員会、これらの共同の努力の結果であり、政法委がまとめたものだ。

これは3月9日、全人代の重慶代表団が開いた記者会見で、薄熙来は自身が重慶で進めていた打黒についてこう説明しています。削除されているものの、重慶日報にもこの発言が報じられています。この発言については、当時確かに読んだ記憶はあるのですが、全く関心を払ってきておらず、情けない限りであります。

打黒は本当の「黒」排除だけでなく、民間企業家を「黒」扱いして極刑に処し、その財産を略奪したり、「黒」容疑のあった集団の弁護士となった李庄を「虚偽の証言を教唆した」容疑で逮捕するなど、かなり評判が悪かったのですが、打黒は重慶市単独の事業ではなく、党中央の支持を受けた合同事業であったわけです。

中央政法委が主体となっているから、その傘下にある警察・検察・裁判所が薄熙来の意のままに動き、前出の企業家に死刑判決を下せていたのだ、と納得がいきます。胡錦濤はそんな状況を変えようとしているなどと殊勝な事を思っているわけではなく、中央政法委の本気を目の当たりにし、自らの権力を脅かすのは中央政法委とそのトップを務める周永康になると考えた事でしょう。

周永康は今年で引退になりますが、後継者を周永康に選ばせてはならないとの思いが働き、薄熙来を支持したことで周永康を追い込み、干していっているのではないでしょうか。規模を縮小した中央政法委の孟建柱なら問題なく操作できるとの算段もあるでしょう。


■政法委弱体化の動きは地方にも波及か

広東省政法委書記が常務委員兼任せず(多維2012/5/14)

広東省委の政法委書記が、通常兼任する省委常務委員を兼任しない事が報じられており、政法委の権力を弱める一環ではないかと指摘されています。もちろん広東省委政法委書記は60歳のため、通常の引退前に起きる正常な人事異動でもあるのですが、それは周永康も同じ。しばらく観察が必要ですね。

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*本記事はブログ「中国という隣人」の2012年5月15日付記事を許可を得て転載したものです。  

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