中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年05月20日
Silk Road train / Travelwyse
■強制借り上げ
1996年当時、塩城市は穀物・綿の集積と加工で成長を有望視されていた都市だった。しかしネックは鉄道がないこと。物資の輸送は陸送か水運に頼るしかない。火力発電所用の石炭も山西省から河北省・山東省に陸送。その後、船で運ぶという手間をかけていた。これではエネルギーコスト的に他都市に対抗できない。かくして鉄道建設は市の悲願となった。
この問題を解決するために立案されたのが江蘇省徐州市新沂と浙江省湖州市長興県を結ぶ新長鉄道。全長561キロのうち、塩城市区間が157キロを占めている。
だが問題は建設費の捻出だった。塩城市は公務員、政府関連機関の給料から強制借り上げという強引すぎる手法で調達することにした。役職ごとに供出額は違うが一般職員で100~400元、幹部からは1000元以上を借りている。鉄道建設期間中は無利子での貸し付け、運営が始まってからは銀行と同レベルの利子をつけ、運営3年後に返済するという取り決めだった。
新長鉄道は2005年に運営が始まった。本来ならば2008年に借金の返済が始まるはずだったが、2012年になった今もまだ返済されていない。すでに市民から複数回の問い合わせがあったというが、「返済プランは提出済み。認可されればすぐに返済する」と判を押したような同じ返答が繰り返されるばかりだという。
実はこうした強制借り上げは鉄道建設だけではなかったという。塩城市タバコ関連部局のある職員は、発電所、高速道路、そして鉄道と3回の強制借り上げを経験したと明かし、発電所の借金は返済されたものの、残る2回の金はまだ返ってきていないと話している。
■ついつい忘れてしまいがちな貧乏中国
高成長が続く現在の中国を見ているとずいぶんと景気がいいように思えるが、ほんの10年前までは公務員や学校教師への給与未払いなどはざらだった。さすがに今ではそうした話は聞かなくなったが、当時の問題が未解決のまま残されていることも少なくない、ということのようだ。
1996年の100元と今の100元では価値が違うので、いまさら返されても民草が損をしたことに変わりはないのだが返してもらうにこしたことはない。とはいえ、すでにお取りつぶしにあった国有企業やら政府部局もあることを考えると、たとえ市政府が返済を実施したとしても泣き寝入りになる人も少なくなさそうだ。
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