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2012年05月29日
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中国書記官スパイ活動か、身分偽り口座開設 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
中国書記官スパイ?松下政経塾にも…政官に人脈 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
スパイ中国書記官、玄葉外相「思い出せない」 : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
中国書記官に出頭要請 登録証不正入手の疑い :日本経済新聞
■経歴
問題の一等書記官は1989年6月に人民解放軍傘下の外国語学校を卒業後、軍総参謀部に所属。93年5月に洛陽市職員として、須賀川市日中友好協会国際交流員として来任。95年4月から97年3月、福島大学大学院に在籍。
その後帰国し、中国社会科学院で日本研究所副主任に就任。読売新聞は社会科学院を「総参謀部と関係が深いとされる中国の調査研究機関」と表記しているが、ちょっとミスリードな気も。中国トップの社会科学研究機関なので、政府と深いつながりがあるのは当たり前なのだが。
99年4月に再来日し、松下政経塾に海外インターンとして在籍。政財界に人脈を広げた。2003年~2007年は東京大学の東洋文化研究所、公共政策大学院に在籍していた。2007年7月に中国大使館一等書記官に就任。公安は着任直後から、この人物がスパイ活動を担当する総参謀部2部所属との情報を得て動向を追っていた。
■違法活動
2008年初頭、外交官の身分を隠し、東大研究員として銀行口座を取得。同年4月には東大研究員と身分を偽って外国人登録証を更新。
また中国に進出しようとしていた健康食品販売会社から顧問料として月10万円が口座に振り込まれていたほか、健康食品販売会社の香港関連会社役員に就任。2009年に報酬とみられる数十万円が振り込まれていた。外交官の個人利得を目的とした商業活動を禁じたウィーン条約42条に違反する可能性があるという。
という2点だけ。「政財界に人脈を広げた」とか書いているだけで、具体的な活動が一切報じられていないのだ。スパイである可能性は「総参謀部2部」所属という一点のみにかかっているという状況で、公安が今月、出頭要請したのも外国人登録証の不正更新容疑だった。「公安が中国人外交官に出頭要請」は確かにスクープではあるが、それ以外の内容がちょっとしょぼすぎるような……。
■せこすぎる中国のスパイ活動
口座の不正開設とウィーン条例違反の会社顧問就任だけだと、「スパイじゃなくて、たんに私腹を肥やしている悪い外交官」に見えなくもないが、その点について読売新聞はスルドイ指摘を見せている。
中国の諜報活動は「目的を悟らせずに人間関係を築いた上で、不正に情報を入手したり、自国の宣伝などに利用したりするのが特徴」だが、外国で活動する中国人スパイに支給される資金は相手1人につき「1万円未満」なのだという。
というわけで、健康食品会社の顧問就任もスパイ活動費の現地調達という涙ぐましい努力の可能性があるのだとか。中国のスパイ活動、せこい!中国人スパイの皆様には経費アップを求めるデモ、ストライキを起こすことをおすすめしたい。
■今後
本記事執筆時点で、中国語メディアはこの件を扱っていないが、具体的なスパイ活動の話が出ていない上に、たいしたネタがない以上、「日本がまた中国を妖魔化(悪魔のような存在に描く)した」と激しく反発する流れになるのではないか。
公安がもっと具体的なネタをつかんでいるかどうか、それが表にでてくるかどうかがポイントとなると思うのだが、日本メディアの謎報道が炸裂して、「スパイ外交官と会っていた政治家リスト」(一等書記官だけに結構な数と会っているでしょうが)とか、斜め上の方向に話が飛んでいかないことを祈るばかりだ。
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