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2012年05月29日
■無敵金満チーム・広州恒大
2010年2月、広州サッカークラブは八百長問題の責任を問われ、2部に降格した。翌3月、中国不動産大手・恒大不動産がスポンサーとなり、広州恒大と改名。2部リーグ優勝を果たし、1年で中国スーパーリーグに復帰する。2011年シーンには、昇格したばかりにもかかわらず圧倒的な実力で中国スーパーリーグを制した。
その原動力となったのが強力すぎる外国人選手だ。特に2011年7月に加盟したアルゼンチン人MFダリオ・コンカは南米最優秀選手を獲得した名選手。年俸1000万ドルという世界トップ級の年俸で引き抜かれた。2012年には元イタリア代表監督リッピを獲得。年俸1000万ユーロ、レアルマドリーのモーリーニョ監督に次ぐ世界2位の好待遇となった。同じくイタリアの名将にして、現日本代表監督のザッケローニ氏の年俸はリッピの10分の1しかない。
広州の成功がきっかけとなって、今や他クラブも強豪選手の獲得に躍起となっている。上海申花は元フランス代表FWアネルカを獲得し、中国人サッカーファン、そして世界のサッカー関係者を驚かせた。同クラブはまもなく英名門チェルシーからFWドログバを獲得すると報じられている。
■人気は爆発、でもチケット代安すぎ
広州恒大の積極投資は回収できるのだろうか?この点について網易体育の特集コーナー・零度角は記事「サッカー人気に火を着けた恒大、チケット収入はマイナス」が詳しく伝えている。
2011年、広州恒大の人気は爆発。平均観客動員数は4万5660人を記録した。サッカーの本場、英国のプレミアリーグと比較しても、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、ニューカッスル、マンチェスターシティに次ぐリーグ5位というレベルだ。
だが、この観客動員は収入には結びついていない。マンチェスター・ユナイテッドの入場料収入は1億2000万ユーロ、総収入の32.8%を占めている。ところが広州恒大の入場料収入はわずか1400万元(約1億8000万円)。総収入の2%しかないという。これではリッピ監督1人を3カ月ほど雇っただけでパンクしてしまう。
問題はチケット代の安さだ。シーズンチケットが358元(約4680円)。1試合あたり300円ちょっとで見られる計算となる。今年は350~800元とシーズンチケットを大きく値上げしたが、平均観客動員数は3万1300人にまで減少している。
入場料で稼げていないのは他のクラブも同じ。1000万元越えは広州恒大、北京国安だけ。最も少ない山東魯能にいたっては、平均動員1万2000人で、収入はたったの10万元(約130万円)。チケットの90%以上は無料招待券だという。
■サッカーと不動産と地方政府
つまりサッカークラブの収入のほとんどはスポンサー、とりわけチーム名をつけている冠スポンサーに依存している。親会社はなぜそこまで金を出せるのか、について解説しているのが南都網の記事「サッカー投資は中国本土ビジネスマンが政治指導者に近づく近道」だ。
現在、中国スーパーリーグに所属する16クラブ中13クラブで、親会社は不動産事業にたずさわっている。あるサッカーマネージャーは「中国において、都市の名刺や地方官僚の政績としてサッカー以上のものがありますか?不動産業界以上に政府とのパイプが必要な業種がありますか?」と話している。
中国政府の不動産価格抑制政策で少し風向きが変わったとはいえ、13億人の人口を抱える中国では不動産の実需はまだまだ豊富。政府の認可を得て土地払い下げにありつけるかどうかが不動産ビジネスの成否を握っている。地方官僚の歓心を買うための投資と考えるならば、アネルカもリッピも安い買い物ということのようだ。
もっともそうした投資家たちは長期的な計画もなく、サッカーについての知識もないまま、湯水のように金を注ぎ込むという。莫大な金を注ぎ込み、一時の華やかさは演出できたとしても、最終的には何も残らないのではないか。そうした不安も広がっている。
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